第弐拾話-で、味は?-
同時刻、ギヤの店にて
ラウ:「……………」
ノワール:「……………」
ラウ:「……………………」
ノワール:「…………?」
き、きまじぃ…この子ずっと俺の事警戒してるのか?一言も喋っちゃくれねぇ…
ラウ:「あ〜…どうだ和葉とは?優しくしてくれてるのか?アイツは」
ノワール:「…!」ぶんぶん
ラウ:「肯定か…?」
首を縦に降ってるから多分…?なんか他にあると思うんだけどな…うん。とかはい。とか
ラウ:「魔術協会に追われてるん…だよな?」
ノワール:「……?」
伝わってないか…?
ラウ:「あー…そうだな…赤い服を着てて目がイッちゃってるヤバい奴らのことだ」
ノワール:「…………?」コク…リ
ん、まぁ大体は伝わったか
ラウ:「………なぁ…俺ってそんなに怖いか?」
ノワール:「…!」ふるふる
否定してくれるのは嬉しいが…依然として喋っちゃくれないか…
ノワール:「……!!…?…!?……?!!」ぶんぶん
腕を振ったり、跳ねたり…うーん…
ラウ:「もしかしてだが…喋れない?」
ノワール:「!!」コクコク
ラウ:「うお!マジか当たってんのか」
通りで怖がってもいねぇのに喋らねぇ訳だわ
ラウ:「ふむ…そうだな…店主!紙とペンありません?」
ギヤ:「ペンだぁ?多分あるぞ、多分、倉庫とか、多分」
ラウ:「クソ曖昧だな。心配になってきた」
ーーーーーーー
ラウ:「あった!!」
ギヤ:「本当か!」
苦節一時間…遂に…!紙とペンその両方を手に入れることが出来た。…埃まみれになっちまったけど。まったく…何年掃除してないんだ?
ギヤ:「おう。じゃあそいつは持って行ってもらって構わんが…そもそもの話だ、何故紙とペンを?」
ラウ:「ほら、そこにノワールって白髪の女の子がいるでしょう?」
ノワール:「…?」
ラウ:「喋らないなら文面なら会話できねぇかなっと」
ギヤ:「なるほどな」
ラウ:「とりあえず…自分の名前書けっか?」
ノワール:「………」
のわーる
ラウ:「お!大丈夫みたいだな。じゃあさっきの質問だ。なんで魔術協会に追われてるのか分かってるか?」
ノワール:「………?」
わかんない でも こわくて にげたから
逃げた…か。大体予想通りっちゃあ予想通りだな
ラウ:「てゆーか和葉ともこんな感じにやってたんだろ?…ったく…お守りさせるなら一言くらいなぁ…」
ノワール:「……!」
ちがうよ かずは は うごいたら わかるから
ラウ:「動いたら…?ジェスチャーだけで会話を…?」
こんな簡単な手段を思い付かなかったのかアイツは…?いや、多分何かしらの事情でもあったんだろ…あったんだよな…?
ラウ:「つか、帰ってくんの遅くねぇか?」
アイツらが出たのが一時くれぇだから…大体2時間ってとこか?
ラウ:「心配だぜ…」
ノワール:「…?」
かずは と ろりすのこと?
ラウ:「うん」
だいじょうぶ ふたりとも つよい しんぱい いらない
ラウ:「そうか…俺としちゃあ心配なんだがな」
あの弱虫が…な。マジに無事だといいが、遺勿の件もあるしな…
ラウ:「…早く帰ってこいよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1時間程遡り…和葉&ロリスside
和葉:「うおおおおおおお!?」
ロリス:「ぎゃーー!!」
キュアアン!!!
迸る緑色の閃光により、辺りに生い茂っていた木々がなぎ倒されてゆく
和葉:「何だあのビーム!?遺勿か!?」
ロリス:「知らんわ!とりあえず避けるんじゃ!多分当たったら死ぬ!」
和葉:「だろうな!」
ビームの発生源は何処だ…?
ロリス:「主!左ィ!!」
視覚の外から来たビームを間一髪の所で躱す
和葉:「あっぶね…サンキュ、ロリス」
ロリス:「儂はあの光線がどこから来るのかを見ておく。主は発生源を探るのじゃ」
和葉:「了解!」
しかし…どっから撃たれてるんだ?
ロリス:「右!」
和葉:「ほいっ!」
毎回毎回全く違う方からビームが来てるみたいだけど…わからん
ロリス:「もっかい右じゃあ!」
和葉:「ほっ」
キュアアン!!
和葉:「痛づぁ!?」
不意にビームが放たれ、それが直撃する。本来ならばロリスがタイミングを教えてくれたのだろうが…それは下からの攻撃だった。肩車されているロリスが捉えるのも無理な話だろう
ロリス:「主!大丈夫か!?」
和葉:「安心しろ。へーきだぜ。ちょっと焦げちまっただけだ」
案外当たっても大丈夫だったな。死ぬほど痛かったけど。それにしても…下から?
ロリス:「ー!主ィ!正面!」
和葉:「ー!」
咄嗟に身体を仰け反らせ、目と鼻の先にあったビームを回避する
和葉:「つかあれ刀で弾けないのか?」
ロリス:「あ〜…捌き切れない事を懸念してのことじゃったが…主に直撃しても大丈夫ならいいかもしれんな」
和葉:「よーし!作戦変更!下からのヤツ以外は弾く!」
キュアアン!
ロリス:「左じゃ!」
和葉:「よいしょお!!」
カァン!
ロリス:「後ろ!」
キィン!
和葉:「…っぶね!」
右、左、下、右、下、左、背後、左…
和葉:「クソッ!いつになったら本体が現れるんだ!?」
厄介なのは下からの攻撃だ。地面を経由するからビームが刀に届くまでの時間が短い!どっから撃ってきてやがる!?
ロリス:「下からの攻撃が厄介じゃな…四方と上は教えられるが…」
上…上…?東西南北、挙句は下から、何処からでもビームを放ってくるけど…全部地面と平行に撃って来て、上からは撃たれてはいない。そして相手の姿は見えない…か。…もしかして?
和葉:「…試してみる価値はありそうだな」
ロリス:「何か思いついた様じゃな?」
和葉:「ああ!やってみよう!」
刀を思い切り地面に突き立てる。
和葉:「ロリス!対象は地面だ!思い切り魔力をぶちかませ!」
ロリス:「よく分からぬが了解した!うおりゃあ!」
地面が割れ裂け、亀裂から赤い光が漏れ出る。
??:「キュキュア!?」
不意に地面が盛り上がり、刀を突き立てた地面の下からモグラとよく似た姿の二対の触覚を備えた異形の生物が現れる。
ロリス:「魔力の放出…やれば出来るもんじゃのぅ」
和葉:「おぉ!ビンゴ!やっぱし地面の中から撃ってきてたか!」
ロリス:「ほぉ!でっかいモグラじゃな〜…こやつも魔物か?」
和葉:「多分な。クスノワ辺りには魔物じゃなくてもフツーに居そうだけど」
ビーム出すモグラ…うん。居なくは無いな。あそこら辺マジに修羅だから
モグラ?:「キュアア!ギュウア!!」
キュアアン!!
和葉:「うおっ!?」
カァン!
和葉:「いきなり攻撃して来やがったな…もしかして怒ってる?」
ロリス:「もしかしなくとも怒っとるじゃろ。いきなり脳天ぶち抜かれた訳じゃし」
和葉:「それもそうか。ま、とりあえず…大人しくしてもらうか」
ロリス:「うむ。3枚おろしにして…。3枚おろし…モグラって美味しいのかのぅ?」
和葉:「分かんないな…少なくとも食べたことは無いけど」
ロリス:「なら〆てギヤに持って行くかのぅ」
和葉:「…緊張感ないな。僕ら」
さっきまで生と死の狭間に居たはずなんだけどなぁ
ロリス:「正体が分かってしまってはこんなもんじゃろ。…ということでモグラ!お主を今から調理してやるからの!」
モグラ?:「キュ!?」
ロリスがモグラもどきの方へと一目散に走っていく。…まぁ結果は言わずもがな、かな。
モグラ:「キュア!キュウ!」
ロリス:「はぁい!よいしょ!」
カァン!ガァン!カアァン!
ロリスへと襲いかかるビームが全て弾かれる。
ロリス:「姿が分かればこんなものよ!喰らえぇい!」
ザシュウ!!
モグラ:「ギュウ!?キャ…」
モグラの喉元に深く刀が差し込まれる。モグラもどきはひとしきり暴れた後大人しくなってしまった
ロリス:「…ふぅむ。やはり主無しではそこまで出力が…」
和葉:「出力?」
ロリス:「なんか気持ち弱い気もするのよなぁ…刀が、と言うより刀を持っている方、顕現の出力が低下しているような…」
和葉:「あの神様を呼んだ影響かもな。…神様といえば…そうだ!そういやお前に伝言を頼まれてたんだった」
すっかり頭から抜けてた…
ロリス:「ほぅ?そやつはなんと言っておった?」
和葉:「えぇと…「もっと上手くやれ。」だっけか」
ロリス:「上手くやれ…のぅ…まぁ十中八九神力の事じゃろうが…」
和葉:「つかあれってなんなんだ?神様…らしいけど」
確かに雰囲気は神のそれって感じではあったけど…
ロリス:「わからぬ。儂に分かるのは主に取り憑いたあのパツキンが主の言う神様とやらと同一人物ではあるじゃろうという事だけじゃ」
和葉:「そっか…そういや聞いてくれよ!僕の寿命を10年も持って行ったとか言ったんだぞ!ヤバくないか?僕の寿命の10分の1だぜ!?」
ロリス:「なに100年計算しとるんじゃ。人間、そんなに生きる方が稀じゃろ」
ロリス:「いやしかし…10年か…。やはり呼ぶべきじゃあなかったようじゃなぁ…あの状況じゃ、仕方ないとはいえ」
和葉:「そうだな。原則、頼らない方針で!」
ロリス:「うむ。もしかすると機嫌を損ねたせいで出力が下がったのやもしれぬしな」
和葉:「じゃ、ギヤさんとこに戻ろうぜ。沢山動いたせいで腹減ってきたからさ」
ロリス:「うむ。そうしよう。儂もお腹がすいてきた頃じゃ」
和葉:「お前さっき食ったばっかだよな…?」
ロリス:「メニューをコンプリートするまで帰らんぞ!」
和葉:「お前には1度、僕の財布にも限界があるってことを教えとかなくちゃな…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
てな訳で今回はここまでデース!いやぁ…前回から1ヶ月も空いちゃいましたね…年末近い事や、用事が重なってまして…申し訳ない。決してディスク厳選に四苦八苦して、投稿を忘れてた訳ではないんです。…本当ですよ?ではでは、永遠の貴方へ。第弐拾話!…約半年で20話ってどうなんだろ…。




