犯した罪
俺は今日、罪を犯してしまった。
それは家から出た瞬間の出来事だったのだろう。学校へ行こうと身支度を整え、カバンをもって靴を履き、玄関の戸を開け、外へと出た。
その時は急いでいたため、何も気づかずに急いで駅まで走っていった。
そして学校が終わってから家に戻り、玄関の扉を開ける直前に彼を見つけ、事の重大さに気づいた。俺はなんてことをしてしまったのだろう。マットの上を眺めて一人で呆然と立ち尽くした。
どうしてこんなことに…。俺はなんて酷い奴なんだ。そうやって自分を責めた。しかし、どれだけ自分を責めても時は戻らない。
俺に今できることは何か。彼のために何ができるだろうか。
その時、ふと、自分の能力について思い出したのだ。
俺は、ある種の超能力を持っている。
強力な能力であるがゆえに、絶対に他人に知られてはいけないし、むやみに使うことも決して許されない。しかし、これは俺が招いた事故だ。彼を救うためにはどんな手段もいとわない。
「リバイブ!」
俺はそう叫んで、能力を使った。
まぶしい光とともに現れたのは、命の管理人、リーブ。
彼女は銀色の髪をポニーテールにまとめ、首にエメラルド色の首輪をつけている。服につけられた装飾品が、太陽に照らされキラキラと輝き、ロングスカートが彼女の長い脚によく似合っている。
「ご主人様、どうかなされましたか。」
「どうか、こいつを蘇らせてくれ!!」
俺は彼を指さして言った。
「彼をこんな状態にしてしまったのは、間違いなく俺だ…。だから、俺が犠牲になるから、頼むから!!お願いだ!!」
リーブは彼をじっと見つめ、こう言った。
「蘇らせるのは簡単ですが、それには代償が伴います。それでも、彼を蘇らせたいのですか。」
「ああ、俺の寿命が何年縮まろうが構わない。」
リーブは彼から目を離し、今度は俺の方をまっすぐに見つめた。
「…本当に、いいのですか?代償は、何を蘇らせるかにかかわらず、あなたの残りの寿命の半分ですよ。」
俺の残りの寿命の半分か…。俺は今17だから、80歳ごろまで生きるとしたら、30年ぐらいは寿命が縮むことになるだろう。その程度、俺は構わない。彼を救えるのなら。
「ああ、俺の寿命は50年でも100年でもくれてやる。だから、彼を蘇らせてくれ。」
リーブはしばらく考え込んでから、横になってピクリとも動かない彼をもう一度じっと見つめ、戸惑いながらもこう言った。
「あの、こういう能力は大切な人にこそ使ったほうが良いと思うのですが…。」
確かに、リーブの言うことは一理ある。実は、彼と出会ったのは今日の朝が初めてなのだ。今日の朝は確かに元気そうにしていた。
「いや、命は比べるものではない。そして、これは俺の犯した罪だ。俺がどうにかしなくてはならない問題なんだ。」
「で、でも…、本当に、いいのですか。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
リーブは、一呼吸おいてから、こう告げた。
「だって…、彼って、蟻ですよね。」
「ああ、そうだ。」
リーブは、俺の揺るがない意思を理解すると、戸惑いながらも、ゆっくりと彼に向って手をかざし、呪文を唱えた。
「バック・トゥー・ライブ!!」
その瞬間、あっという間にあたり一面が強い光に包まれた。
そして彼は無事に蘇り、元気に歩き出したのだった。
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