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第五話 幸せな未来



それからのレオは凄かった。

常にメルティーの側を離れず、目が合えば甘く笑い、話しかければ必ず好きだの愛してるだの可愛いだのと一言つけて返答した。


メルティーは父になぜ許可を出したのか聞きに行った。すると、


「君が幸せになるなら構わない。幸い君は次女であるし、家を継ぐ必要もないからね」


とにこやかに返された。


レオのあまりにもハッキリした態度に、レオがメルティーを好きだということは屋敷中に知れ渡っていた。

皆から生暖かい視線を向けられる度、メルティーは羞恥心に苛まれるのだった。


一度レオを意識してしまえば、堕ちるのは簡単だった。

なにせレオはメルティーの理想の男性を体現した人なのだ。それに輪をかけて甘い甘い態度をとられれば、堕ちない方が無理という話だ。だが、いつ返事をしよう……とメルティーは悩んでいた。


(今度図書館に行った帰りに、お茶でもしようかしら。そこで……)


メルティーは決意する。告白の返事をしようと。


後日、メルティーは計画通り王立図書館に居た。レオは高い位置にある本を取ってくれたり、自然にエスコートしてくれる。

そんな時、突然メルティーは肩を掴まれた。


「おいっ、メルティー!」


「きゃっ! え、ブラッド?」


そこに居たのはかつての婚約者、ブラッドであった。ブラッドはメルティーを今にも殺しそうなほど鋭い目で睨みつける。


「お前、よくも俺との婚約を破棄してくれたな! おかげで俺は家から勘当されるし、散々だったんだぞ!」


メルティーは今更数年前の話を持ち出すブラッドに、ポカンとした顔を向けた。


(え、何言ってるのかしら、この人。大体婚約破棄なんてそちらのせいで起こったことじゃない。なにを今更)


そのポカンとした顔に、ブラッドはますます肩を掴む力を入れる。


「い、いたっ」


メルティーがそう言った瞬間、視界からブラッドが消えた。……正しくはレオがブラッドを蹴り飛ばした。


「うぐっ!?」


「汚い手でお嬢様に触れないで頂けますか」


レオはとてつもなく冷徹な目でブラッドを睨む。背中からは怒気が溢れ出ていた。


「な、なんだお前! ただの侍従のくせに、俺に手をあげる(正しくは足だが)なんて!」


ただの侍従、という言葉にレオは少し悔しそうな顔をしたが、すぐにキッとブラッドを睨み返す。


その時、メルティーはとっさにレオに抱きつき、こう言い放った。


「レオは侍従なんかじゃないわ。わたくしの婚約者よ!」


その言葉を聞いたブラッドと、レオすらも驚愕の表情をする。メルティーはとっさに言い放った言葉を思い返し、慌ててレオの顔を見る。


「お嬢様……今、私のことを──」


「そ、そうよ。貴方はわたくしの婚約者。そうでしょう?」


顔を真っ赤にしながら言ったメルティーを見て、レオは溢れんばかりの笑顔になる。

そんな二人を見たブラッドは、呆然としていたがすぐに悔しそうな顔をして舌打ちし、去っていった。


レオはブラッドが掴んでいた肩をさすり、痛くないですか? とメルティーに聞く。

コクリと頷いたメルティーは、今更ながら告白まがいをしてしまったことが恥ずかしく、まともにレオの目を見れない。

だがレオはそんなこと気にも留めず、メルティーの耳元でこう囁いた。


「心より愛しております、メルティー様。これから宜しくお願い致しますね、我が愛しの君」


こうして、計画とは違ったが、めでたくメルティーとレオは恋仲となったのだった。







一年後。

めでたくメルティーとレオは結婚する運びとなった。

孤児であったレオの後見人にはセバスがなった。

真っ白の、肩周りのレースが美しいウエディングドレスを着たメルティーは、フラントヘイムと腕を組み教会へ足を踏み入れる。


結婚式を挙げている教会は、かつてレオの育ての親であるマルクがいた教会だ。

マルク亡き後、新しい牧師が引き継いでいた。

ゆっくりと近づいてくる美しい花嫁を見ながら、レオは心の中でマルクに話しかける。


(父さん。俺、結婚したよ。いつか可愛い孫を見せるから、見守っててくれ)


レオは涙を堪え、メルティーの手をとった。


牧師は言う。


「此度結婚するこの二人に、神の祝福があらんことを──」












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