『稲妻』、ひらがなで書くと?
まず、タイトルに挙げた『稲妻』に仮名を振ってください。
①いなずま
②いなづま
さて、あなたはどっちを選びましたか?
私の知り合いに聞いたところ、圧倒的に②の方が多かったのですが、いかがでしたか?
ちなみに、これならどっちを選びますか?
①イナズマ
②イナヅマ
私の知り合いに聞いたところ、今度は逆に①の方が多くなりました。
皆さんは、これをどう感じましたか?
さて、この『いなずま』と『いなづま』。果たしてどっちが正しいのでしょうか。
その答えは……。
A.どっちも正しい。
すみません! 怒らないでください! 本当なんです!
実は、戦後の昭和21年に内閣告示として公布された『現代かなづかい』では、「『じ』と『ぢ』、『ず』と『づ』について、『ザ行』の方を本則とするが、発音を分けている地方では書き分けても良い」ということになっています。つまりは、①の『いなずま』が正しいということになりました。
ところが、これではいろいと問題があるということになりまして、昭和61年に内閣告示として『現代仮名遣い』が公布され、現在に至ります。この中で『いなづま』も許容されたわけです。まあ、『現代かなづかい』に問題があるというのはよくわかります。そもそも『かなづかい』からして『づ』を使っているわけですから。
なぜ、『かなづかい』は『づ』だったかというと、『かな+つかう』の複合語だからという理屈だったのですが、だったら稲妻だって『いね+つま』じゃないか! という論に反論できず、『どっちでも良い』というややこしい結果が生まれたようです。
「じゃあ、『地面』や『地震』だって『ぢめん』や『ぢしん』でもいいんじゃね?」
と思った方。鋭いところを突いていらっしゃいます。
でも、残念ながら、こちらは『じ』が正しいようです。
理由は、『ち』が濁音化して『ぢ』になったわけではなく、もともと『じ』だったからです。
漢字の音には呉音、漢音、唐音がありますが、『地』の音のうち『ち』は漢音で『じ』は呉音なんだそうです。これもややこしいですね。
ついでに『痔』。
これも『じ』が正しい仮名です。
『ぢ』だと思っていた人。結構いるんじゃないですか?
実は、漢字のほとんどは『形声文字』という読みを表す部分と意味を表す部分を組み合わせたものです。『痔』は『やまいだれ』の部分で『病気』という意味を表していますので『寺』の部分が読みを表すことになります。
考えてみてください。『寺』は『ぢ』と仮名を振りますか?
試しに……。東大寺、延暦寺。違和感が半端ないでしょうw
ちなみに『痔』を『ぢ』だと思い込ませたのは、『ヒサヤ大黒堂』という製薬メーカーの宣伝の賜です。最近はさほど見かけなくなりましたが、以前は新聞のテレビ欄の下の方に、必ずといっていいほど『ぢ』という広告が出ていました。出血のイメージと相まって、「『痔』と仮名を振るんだ!」という誤ったイメージを、全国に植え付けてしまったのです。ある意味すごい会社です。
言葉って変遷が激しいので、調べてみると「あれ?」って思うことが結構あります。
皆さんも気になったことがあったら調べてみてください。面白い発見があるかもしれませんよ。