俺と財布
二人「どうも~、よろしくお願いします!」
ボケ「今日も元気に漫才やらせてもらいます~、これ良かったら記念に持って帰ってくださいね~」
ツッコミ「え、なにこの小さい紙?なんか書いてない?」
ボケ「お前の家の住所」
ツッコミ「やめろや!さっきまでやってたバイトのティッシュ配りの感覚で、俺の個人情報をお客さんに渡すな!」
ボケ「ごめん~、許して~(可愛くぶりっ子)」
ツッコミ「きしょい声を出すな」
ボケ「なんでや!元カノのゆかちゃんがこれやっとったら、『お前には、ほんまにかなわんなぁ』ってめちゃくちゃデレデレしてたやんか!結局4股されてた上に振られてたけど!」
ツッコミ「元カノの名前を出すな!4股されてた上に振られた話もこんなとこですんな!!」
ボケ「ほんまやで!分かってんのか!?今俺らは、わざわざ来てくださったお客さんの前でこうして舞台の上で漫才をさせて頂いてんねんぞ!もうええわ、どうもありが…」
ツッコミ「待て待て待て、全部お前が勝手に言い出したんやろが!まだ始まってもないのに終わらすな!漫才やるぞ!」
ボケ「お前がそこまで言うなら……やったろうやないか」
ツッコミ「キメ顔腹立つ~!ちゃうやん、今日は俺になんか相談があるらしいやんか?」
ボケ「せやねん、そろそろ人間同士の漫才もお客さん見飽きたんとちゃうかなと思ってな、今日はこれになりきって漫才やろうと思うねん」
ツッコミ「また訳の分からん事言い出して…これって…財布?え、めっちゃ見たことあるねんけど…ってこれ俺の財布やないか!」
ボケ「お前の鞄の中に落ちてたから拾っといたで」
ツッコミ「ああ、そらありがとうな…じゃないねん!それ落ちてるんじゃなくて置いてんの!」
ボケ「まぁまぁ、落ち着けって。じゃあこれをお前に渡すから、俺と三年間一緒におる財布になったつもりで俺と漫才してくれ」
ツッコミ「ややこしいな!それやったら最初からお前の財布持って来いよ!」
ボケ「え~、それでは始まります『俺と財布』はいどうも~!俺です!」
ツッコミ「無視しやがった…はいどうも~!財布です」
二人「よろしくお願いします~」
ツッコミ「僕たちね、人間と財布っていうちょっと珍しい形で漫才させてもらってるんです」
ボケ「そうなんですよ、もう何年くらいの付き合いになるかな?」
ツッコミ「せやなぁ、三年くらいになるんちゃうかなぁ」
ボケ「もうそんなになるんか、早いもんやなぁ。これからも相方としてよろしゅう頼むで」
ツッコミ「いやぁ、そんなんこちらこそやで」
ボケ「でな、ちょっと話変わるねんけど聞いてもらっていい?」
ツッコミ「お、なんでも聞いたるやん、どうしたん?」
ボケ「財布をな、そろそろ買い替えようと思ってねんけど、どんなんが良いかな?」
ツッコミ「……え?」
ボケ「え?」
ツッコミ「え、ごめん。もう一回言うてもらってもええ?」
ボケ「せやから財布をそろそろ買い替えたいなぁって」
ツッコミ「お前正気か!?今誰と漫才してんねん!?」
ボケ「財布」
ツッコミ「んで何を買い替えたいって!?」
ボケ「財布」
ツッコミ「ええわけあるか!つい数秒前のよろしゅう頼むでをどんな気持ちで言うてたん!?」
ボケ「これからなんて、もうないのになぁって」
ツッコミ「いや怖いわ!オブラート一枚も包んでない本音を本人がおる前で言うな!」
ボケ「だって自分に問題があるんやで?」
ツッコミ「え、何よぉ。言うてみてや」
ボケ「まずお札入れるとこあるやんか、そぉっと入れんとお札の先がくしゃってなるのが嫌やねん」
ツッコミ「お前、お札なんて滅多に入らんやろが!百円以下の小銭でパンパンやないか!」
ボケ「あとな」
ツッコミ「まだあんのか」
ボケ「閉めるところがチャックのタイプやんか、たまにレシートを噛んで巻き込んでいくのが嫌やねん」
ツッコミ「あれはお前がちゃんとレシート折って入れてないからやろ!長めのレシートも三つ折りにしたら収まるのに、ぐしゃっと入れてただけやったら、ぴょこ~って飛び出すわ!その時は巻き込んでしまうよ!?というかそれはレシートが顔出してるのに、そのまま閉めるお前が悪いんと違う!?」
ボケ「それとな」
ツッコミ「まだあんのか」
ボケ「この新しい財布どう思う?」
ツッコミ「いや、もう買ってるんかい!!!もう財布やめさせてもらうわ」
二人「どうもありがとうございました~」
おわり