74 エピローグ
それからの話。
俺が去ったあとの騎士学校では宣言通り、大きな変革があったらしい。
まず教師陣の総入れ替え。
俺のことをどうこうというわけではないが少なくともきっかけとなって、これまで常態的となっていた学校運営の放漫さを見直し一から建て直そうということになった。
それを口実に現職の教師たちはすべて職を追われたという。
あの時オレにウザいぐらいすり寄ってきた校長先生も。
彼らは職を解かれたあと、一介の騎士として騎士団に復帰したが教職で怠け切った体に現場の作業はきついらしく四苦八苦しているとのこと。
また生徒の方にも変化はあった。
かつて『黄金の一三九期生』と呼ばれた俺の同級生たちだが、その中心となったマシュハーダ元王子が怪我を理由に退学し、その関係で急速に勢いを失った。
前述の改革で授業内容が実戦的なものに変わり、それでもってついていけなくなる者が続出したんだとか。
お陰で今年卒業の見込みが持てる者がほとんどなく『黄金の一三九期生』から『幻の一三九期生』になるのではないかと密かに囁かれている。
そしてマシュハーダ元王子は、あの日言い渡された沙汰の通り王籍を返上し、一臣下として子爵位に下った。
両腕を失い、もはや騎士として満足に働くこともできない彼は、以後死ぬまで人の世話になりながら暮らしていくことになるのだろう。
何しろ両腕を失ったのだ。飯を食わせてもらうにも他人の助けがなければできない。
王家からの最後の情けで、世話役を雇える程度の財は支給されるそうだが、それまで最高位にいて皆から尊敬される天才にはあまりに屈辱的な境遇かもしれない。
それでも、ヒトに頼って生きていくしかない境遇に置かれて、それまでは見えなかった何かを見出してくれればいいのだが。
彼の人生まだまだ長く続いていくわけだしな。
一方、沈む者もいれば浮かぶ人もいて、エクサーガ兄さんは無事王女様と結婚式を挙げた。
俺も参列したがとても盛大な式で、兄さんも花嫁も共に輝かしかった。
王女を娶った兄さんだが、王族に入ることはなく新たなる家を興し、夫婦で盛り立てていくらしい。
国王様としても病弱だった娘さんを思いやり、静かな暮らしを送ってもらいたかったそうだ。
エクサーガ兄さんは伯爵位を頂き、正式に騎士団に所属して夫婦ともにひたむきに歩んでいくことのこと。
秀才と謳われた兄さんなのだからすぐに手柄を上げて出世していくことだろう。
我がもう一人の兄……ゼクトウォリス兄さんについては、よくわからぬ。
たった一度の里帰りでも結局会うこともなかったし。
しかしマシュハーダ以上に完璧で、何であろうと一人で乗り越えることのできる人だ。
関わらなくてもきっと彼一人で生き続けることであろう。
故郷にいる人々のその後はこんなもので、そして肝心の俺が暮らしている大樹海だが……。
◆
「ぎゃあああああああッ!?」
「今度はドラゴンが来た!? ぐぇえええええええッッ!?」
相変わらず災難だらけなのだった。
突如飛来した巨大なる最強生物に対し、俺たち全員で迎え撃つ。
「コレーヌ! ゴーレム強化外装を! 撃ちまくって牽制してくれ!!」
『了解ですマスター』
「スラッピィも水で防御と牽制をよろしく!」
『キュピピピピッ!』
「ゴブリーナは俺と機を窺って、チャンスが見えたら斬りかかるぞ!」
「オッケー!!」
俺たちの住む拠点に退屈な時間など一つもない。
常に何かしら騒動が起こり、起こらないなら自分たちで引き起こすのだ。
「ピクシーは小麦粉を振りまく用意! 隙あらば粉塵爆発に巻き込んでやる!」
『おー! 任せといてー!』
「ウルシーヴァとニャンフーは……! 吠えてて!」
「ワンワンワン!」「んにゃーッ!!」
これからも大変なことが数え切れないほど起こるのだろう。
俺たちはそれを楽しみながらも全力で乗り越えていく。
彼らと結んだ絆がある限り。
ここは俺たちの永遠のユートピアなのだから。
『ここに来れば古代文明の力を分けてもらえるんだろ? オレにも寄こせぇええええええッ!!』
「ギャーッ! ドラゴンが喋ったーッ!!」
また一つ新たな絆が増えそうだった。




