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54 ご招待

 恩人兼ギルド職員のオッサンを連れてついにやってきたぜ!


 俺たちが根城としている大樹海の奥深くへ!


 もちろんこれまでの根城とはわけが違うぞ!

 一般の冒険者たちが休憩場所として使えるように整え直した、新生本拠地だ。


 その出来栄えを、どうぞご覧あれ!


「うおおおおおおおおおッッ!?」


 思った通りのリアクションを頂きました。

 オッサンは、目の前に広がる文明的風景に圧倒されているご様子。


「これはッ……、ここは本当に樹海の中なのかッ!?」

「オオカミに乗って駆け抜けてきたでしょう森の中を? ここに来るまで?」

「オレはな……、精々ログハウスが一軒建ってるぐらいの簡易拠点を想像してたんだよ? それでも険しい大樹海の奥深く、充分すぎる成果じゃないか。それぐらいなら何とか及第点として中央に訴えようと思ってたんだ……!」


 オッサンの立場を駆使して?

 そうして何としてでも俺の味方になってくれるところ本当に有り難い。


「でもな……!? 今オレの目の前にあるのはログハウス一軒どころか……!?」

「うぬ?」

「十軒以上はあるじゃねーかッ!?」


 そうですけども?


 いやあ、資材調達担当のゴブリーナが興じて木を伐りすぎちゃって。

 拠点の敷地自体や、道路を作る場所も木を薙ぎ倒して整地する必要があったんで自然と材木が増えたんだけど。


 それを有効活用しようと思ったら、これだけのログハウスが建ってしまった……!


 実はそれでも材木を使いきれずに、余った分は保管してありますよ。


「これならかなりの数の冒険者を収容できるし、スペースたっぷりで心底リラックスできることだろう」


 ちなみに建築位置は、俺たちが根城にしている丘の麓だ。

 丘の上だとそこまで広大な敷地面積が取れないので、こちらに移動となった。

 俺たちはいまだに丘の上に住む予定。


 さらに、それだけじゃないぞ。


 それらの家々を囲む壁をご覧くださいませ!


 スラッピィに召喚してもらったコンクリートを固めて作った、城壁だ!


 強度、高さ、耐火性、どれをとっても王都の城壁にも劣らないクオリティでモンスターなどの侵入を防ぐ!

 それでいて閉鎖的にならぬよう、前後を大きく開いた構造だ。


 これによって、築き上げた拠点の防衛力は増大!

 よっぽど無茶なモンスターでなければ壁を越えて侵入できまい! 中の冒険者たちも、より安心して休憩できるってスンポーだ!


「どうかなオッサン!? 俺たち頑張ってこれ作ったんだぜ!?」

「頑張ってどうにかなるクオリティじゃないよ、これ!?」


 そこまで衝撃を受けてくれるなんて製作者冥利に尽きる!


 城壁内の土地は真っ平らに均されて、内部に散見する家屋はちらほら出まだ余裕がある。


 ……あ、あの家は冒険者の寝泊まり用じゃなくて食物やらを補完する蔵です。

 ネズミとかが侵入しないように高床式なんですよ。ちゃんとネズミ返しも付けたよ! 凄いでしょう!


「……イディールよ、これはもはや拠点じゃねえよ」

「え?」

「村だよ。ベースキャンプでも休憩所でも、基地ですらねえ、それらすべての規模を超えた、集落といっても過言ではねえ大きさだよ」


 ……そ、それは誉め言葉と受け取ってもよろしいのでしょうか?


 やったぜ!

 想像以上の評価をいただいた!

 村だってさ、これ!


「しかしだからこそこの冒険拠点には問題がある。これを解決しないかぎりここは、冒険者の休憩場所としての機能を果たせない」

「な、なんだってー!?」


 俺たちの作った冒険拠点に欠陥があるというのか!?

 それは何ぞや!?


「それは……水場だ!」


 オッサン言う。


「この集落には、水を確保する手段がない! 近くに川も流れていないし、井戸を掘っている形跡もないじゃないか! 冒険者が未踏領域を彷徨う際、飲料の確保こそ最優先でかかるべき問題! それおざなりにしておいて拠点の確保はありえない!」


 ああ、はい……。


「ベースキャンプ程度ならいいが、これほど大きな規模となると冒険者持ち込みの水だけじゃどうにも回らないぜ!? 面積や収容人数に見合うだけの飲料確保のアテがなければ、ここをまっとうな中継ポイントと認めることはできない! 残念ながら、ここの届け出はオレの段階で差し止めに……!?」

「あるよ。水ならじゃんじゃん出てくるよ」

「ええッ!?」

「スラッピィおいで」


 俺が呼ぶとスライムのスラッピィ元気に飛び跳ねやってきた。


『キュピピピピピピピッ!!』

「今度はスライム!? さっきのヘルウルフといい、お前は大樹海のモンスターを味方につけているのか!?」


 左様です。


「それがお前の研究してたヤツか……!? しかしスライムなんか出してどうするの? そんなの腹の足しにもならんだろう?」


 スラッピィを食べるだなんてとんでもない。

 彼(?)にはもっと大きな役割があるものですよ! それを見て驚くがいい!


【絆召喚術Lv67>絆:スラッピィ(スライム)>召喚可能物:水】


『キュピィイイイイイイイッッ!!』

「うわああああああああッッ!? ずぶ濡れるうううううううッッ!?」


 スラッピィが召喚する大噴出に、押し流されそうになるオッサン。


 事程左様に、スラッピィさえいてくれれば絆召喚術でいくらでも綺麗な水を呼び出すことができるんだ。


 これにて我らが冒険拠点の水問題は解決だぜ!


「オッサン、ついでにもう一つの心配も解消しようか?」

「うむむ!?」


 ずぶ濡れで水が滴っているオッサンに、さらなる追い打ち。


「人は水のみで生きるにあらず! 固形物も食べて栄養を補給しないとな!」


 そこで呼び出すコレーヌとゴブリーナ。

 丘から降りてきた彼女たちが抱えるのは、ホカホカのパン!


「たった今、窯から出したばかりの焼きたてです。アナタに食べさせるようにマスターから指示を受けたものですので、残さず有り難く食すように」

「パンだけじゃ味気ねえから、今回は自家製干し肉を添えてみたぜ。ダンナから作り方を習ったんだ、パンに切れ目を入れて挟んで召し上がりな」


 ゴブリーナは、パンの美味しい食べ方を様々に研究していた!


 焼き立てカリッカリのパンに、塩気たっぷりの干し肉を一緒に食べて……。


「美味あああああああああああッ!!」


 本当に美味しい!

 こないだのパン単独での試食もよかったが、そこに一手間加えることでさらなる進化を見たぜ!?


「どうどうオッサン!? 水だけじゃなく、いっぱしの食べ物まで提供できる。冒険拠点として中々じゃない!?」


 このパンの原料だって、ピクシーとの絆召喚で呼び出したものなんでほぼ無尽蔵。

 都市級の物資力をもって支えるのことよ。


「さらにこの干し肉は……、って。ゴブリーナ、これ何の肉?」


 恐らくは樹海うろついて遭遇したモンスターをテキトーに刻んで漬けて干したんだと思うんだけど……。


「大ムカデの肉だな」


 オッサンと一緒に試食していた俺なので、思わず噴いた。

 なんでよりにもよってそんな肉!?


「だってダンナが後々絆契約を結ぶかもしれないモンスターじゃ罪悪感が出るかもだろ? 何でも虫とか植物系のモンスターなら契約不可能っていうから、ジビエにするならソイツらを対象にしているぜ?」


 ……た、たしかにある程度の生物の段階が違ってくると絆を結ぶだけの知能も有さず契約不可能となるようで……。


 だったら虫系モンスターなら気兼ねなく食えるってことに……。

 でも絵面が……!? 脳裏に浮かぶイメージが……!?


「殻を剥いで中の肉を加工したんだけど案外美味しいよなー」


 たしかにそうなんで余計に困惑する!?

 大ムカデの干し肉美味しいなあ、お代わり!!


「……で、どうでしょうオッサン? 俺たちの作った冒険拠点の出来栄えは……!?」


 すっかりパンに夢中になって貪るオッサンに問いかける。


 規模、防衛体制、補給物資。

 すべてにおいて必要最低限は用意したつもりだが。


「最低限じゃねーよ、必要以上だよ!」


 なんか心を読まれたようで一瞬にして反論された。


「……たしかに、お前の作ったこの防衛拠点は充分すぎるほど整っている。『イデオニール大樹海』の未踏エリアを考えたら、この拠点の価値はどれほどのものになるか。S級相当の手柄だ……!?」


 オッサン、表情を引き締めて……。


「わかったぜ、大樹海に新たな冒険拠点ができたことを中央に報告しよう。その最大の功労者はイディール、お前さんだってことも含めてな」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしスラッピーや主人公が長期不在の時の水の確保は大丈夫なのだろうか?井戸なり用水路の類いでもないと危ないのでは?ローマ水道橋を建設中だったりしてね。
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