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28 ゴブリン進化

 前回までのあらすじ。

 とりあえずサイズの合わない家具は次元貯蔵庫に放り込み、次に使う機会を待つことにした。

 次の機会っていつ来るんだろう?



 そして翌日、あるヤツの大活躍に頼ることとなった。


「ここのダイニングに合うテーブルを作ってほしいんだけど」

「ハイ出来た」

「もう!?」


 ゴブリンのゴブリーナだ。


 木を伐り倒すのが随分楽しそうだったので『日曜大工もできるかな?』と試しにやらせてみたら、とんでもない仕上がりがきた。


 ニスまで塗って!?

 まるで街で売ってるものと変わらないじゃないか!?


「いや、ニスまで持ってきたのはダンナじゃねえか。あるなら使わせてもらうけど、わけわかんねえよ」

「何が?」

「ゴブリンに大工仕事やらせることがだよ! ゴブリンは! 破壊と殺戮の申し子! 邪悪なる亜人モンスター! 作って育てることとはもっとも遠いところにいるの!」

「でもいい出来栄えじゃん」

「ありがとう!」


 先日街に出た時、何かの役に立つかもと思って大工道具一式を買い込んでおいてよかった。

 ゴブリーナに持たせたら存分に使いこなしてきおった。


 ノコギリとかカナヅチとか、いずれ絆召喚で出るようになったらいいなと思ったが今のところは出てきてないし。

 あと釘のような消耗品は、やっぱり自前で用意した方がいいかなと思った。



「はーい部屋に入れるよー。向こう持ってー」

「ダンナこういうのは息合わせるのが大事なんだから! うおおおおおッ!? 歩幅合わせて! アンタの方がデカいんだし!」

「ドアにつかえて入らねー?」

「立てればいいんだよ!」


 という感じでガヤガヤしながらダイニングにテーブルを置くと……。


「「ちょうどピッタリ!?」」


 凄いよゴブリーナ!

 余白的にもダイニングとテーブルが黄金比率だよ! これがマリアージュ!


「よかったー、じゃあ椅子も入れていこうぜ」

「椅子まで作ってたの!? いつの間に!?」


 ゴブリーナの有能さが留まるところを知らなかった。

 まさか森で出会ったゴブリンがこんなにも頼りがいがあるとは。


「違う…………!」

「ん?」

「違ぁあーーーーーーうぅッ!!」


 うおおッ? なんだ?

 せっかく椅子テーブルのダイニングセット一式揃ったというのにゴブリーナがキレだした!?

 なんで発作!?


 そこへコレーヌがやってきて……。


「テーブルが完成したのですね? では早速テーブルクロスを被せねばッ!」

「マイペースだねッ!?」


 しかし今は他のメンツが介入してもややこしいことになりそう。

 コレーヌがテーブルクロスに気を取られているうちに、こっちの問題を解決せねば!


「どうしたんだゴブリーナ!? せっかく株が上がったのに、情緒不安定じゃまた評価を下げるぞ?」

「いいんだよ! オレの望む評価はこういう評価じゃねえ!」


 と言いますと?


「オレはゴブリンだぜ! 残虐非道! 邪智暴虐! それがゴブリンだろう! なのに平和にDIYして評価貰って……! これがゴブリンのすることかーッ!?」


 なるほど、そういう理屈でイラついていたというわけか。


「いいじゃない、大工仕事の得意なゴブリンがいたって」

「嫌だッ! このお陰で、オレがどんな扱いになってるかわからねーのかッ!?」


 どんな扱いと申しますと?


「影が薄くなってるんだよッ!? 新顔どもに押されてオレの存在が希薄になっている! 耐えられない存在の薄さッ!!」

「えッ? そんなことないよ?」

「いーや薄いね! その証拠にダンナ、ここ最近オレが何してたか記憶にある」

「ハハハ、そんなのあるに決まって……、ん?」


 アレ?

 なんだろう? 思い出そうとしても思い出せない?


 コレーヌとか、ウルシーヴァとかニャンフーとはやかましくボケツッコミの応酬をしていたはずなのに。

 ゴブリーナとはなんか喋った?


 視界に入ってきた記憶もなんか曖昧な……?


「ゴメン、ゴブリーナ最近何してた?」

「ほーらコレだよ! オレには何の興味もなく他の連中とお戯れかよ! やってらんねーよなー!?」

「そ、そう言わず教えてプリーズ」

「ケッ、集めてきた素材の下処理をしてたよ一人で黙々とよ!」


 そうだった。

 ギルドに持ち込み換金してもらうための素材。そのままだとアシが早まり換金額が落ちてしまうため、できることならちゃんと下処理をしておいた方がいい。


 動物系なら血抜きしたり、植物系なら干して水分を飛ばしたり。

 そうした処理は最初自分でやってたが、量が増えてくると面倒になって誰かに手伝ってもらいたくなった。

 そこで抜擢されたのがゴブリーナだった。


 スラッピィはそもそも手足がないし、元獣のウルシーヴァやニャンフーは器用な作業などできるはずもない。

 コレーヌは小手先のことよりすべてを灰燼に帰す方が得意そうなイメージ。


 というわけでゴブリーナしかいないと思えた。


 結果、予想的中。

 元から黙々と作業するのが性に合っているらしいゴブリーナは、期待に応えて多くの素材の下処理を完成させたのだった。


「しかもクオリティも完璧で、ギルドの人たち褒めてたよ。いい出来だって。おかげで換金額も割り増ししてもらえた」

「……へッ、オレがやったからには当たり前だろ。妥協なんてしねーんだよオレは」


 褒められて喜んでおる。

 そういうところだぞゴブリーナ。


「だったら俺の記憶に残ってないのはしょうがないじゃないか。黙々と作業してたら、そりゃ目も耳も反応しないよ」

「だからそれが嫌だって言ってんの! 悪目立ちしてこそのゴブリンだろう!」


 そんなことはないと思うけど?

 自分を見失うなゴブリーナ、種族の縛りに囚われることなんかない。


「いいや! このまま黙々と作業するポジションに居ついたらどんどん影が薄まって存在を忘れられてしまう! ただでさえ新顔が増えて押されつつあるというのに!」


 いやまあ、そんなことなかろう?

 たとえば一番古株のスラッピィだって……。


『キュピピピピピッ!!』

「なるほど、テーブルの中央に花を飾るのがいいと。さすが隊長ですね」


 いつの間にか皆から隊長呼ばわりされるようになって自分の立ち位置を確立しているぞ?

 ゴブリーナだってそうだろう。

 縁の下の力持ちポジションいいじゃないか。


「いーやよくない! オレはゴブリンらしい悪辣なポジションを得る! そのためならば手段を選ばん!」

「な、何をしようと言うのだ……!?」

「あのイヌやネコどもができたことを、オレにもできないはずがない! 見てろよコラああああッ!!」


 ゴブリーナの掛け声と共に、光が放たれる。

 ヤツの身体が光に包まれ、あまりの眩さに目が眩む。そのため姿を見失い、光が収まってから改めて目にしたヤツの姿は……?


 ……まったく変わっていた。


 ゴブリンらしからぬ長身に、張りのある肉体。

 膨らみ、くびれ、それでいて艶やかな曲線が丸みを帯びる腰つきは……。


「女ぁああああああッッ!?」


 ゴブリーナが女性化しておる!?

 いや、正確には女性らしい体つきに!?


 ボムンとふくらむ乳房、キュッと引き締まった腰、そしてムニッと丸みを帯びた尻。


 街中を歩いてもなかなかお目にかかれないお色気お姉さんに!?


「お前ッ、ゴブリーナなのか!?」

「あたぼーよ。ダンナの術で契約相手の姿を変えるんじゃないかって、イヌネコの時から察しがついていたからな。オレにもできるはずだと試行錯誤してたのが、ついに実ったぜ!」


 そんな試行錯誤があったのか!?

 そしてこれも絆召喚術の効果だというの!? 本当に今なお謎の多い秘術だな!?


「オレが思うに、強い絆を結べるように契約した相手を変容させることができるんじゃねえの? ただの友だちよりはつがいの方が繋がりは強いだろうからな」


 そう言って挑発的なポーズをとるゴブリーナ。


「もっとも性別まで変えることはできねえだろうけどよ。知ってたか? 実はオレって元々メスだったんだぜ? だからこそこんなニンゲンのメスっぽい姿になれたんだろうが……」

「知ってたよ」

「え?」


 ゴブリーナが女の子だってことは。

 でなきゃ『~リーナ』なんて女の子っぽい名前つけないし。


「そうか……知ってたんだ……!」


 とポツリとつぶやくゴブリーナ。


「ってことは、オレとつがいになるかもって思ってたの?」

「いやいやいやいや……!?」


 そんなこと思うわけないじゃないですか。

 だって種族が違うんだし。


 しかし絆召喚術の作用によって、人間の女性と変わらぬ姿を持ったゴブリーナ。

 それでいてゴブリンらしい野生さも備えて、押し迫ってくるような色気があった。


 俺はその魅力に抗うことができるのか?

 無理だった。

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