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11 絆召喚術の進化

【絆召喚術のランクがアップしました】


「うおッ!? ビックリした!?」


 突如、絆召喚術のアラートがなってなんか告げてくる。


 ランクがアップした?

 レベルではなく?


「推測しますに、わたくしたちに名前を付けた影響が出たのかと」


 コレーヌがしずしずと言う。

 さすがに何千年も前から存在していただけあって物知りなようだ。


「マスターの扱う術式は、契約相手との絆の強さを利用する非常に珍しいものです。絆が強まれば強まるほど、現界に及ぼす影響が強くなるようですので……」

「名前を付けたことで絆が強まったか」


 考えてみれば当然だな。

 ちゃんと名前で呼び合う方が仲が深まるに決まっている。


 そうして強くなった絆で、絆召喚術の性能がアップしたというなら納得ではあった。


「ランクアップとレベルアップはどう違うんだろうか……?」

「恐らくレベルを含めた諸条件が一定以上に達することでランクアップするのかと」


 なるほど?

 で、ランクアップした絆召喚術はどんなことができるとおっしゃるのか?


【複合絆召喚ができるようになりました】


 なんぞそれ?

 よくよく調べてみたら、どうやら二つ以上の絆を利用して何かしら召喚する方法のようだ。


 早速試したくなってきたぜ。

 できるかな? できらぁ!


【複合絆召喚術Lv17>絆1:コレーヌ(オートマタ)>絆2:ゴブリーナ(ゴブリン)>召喚可能物:チェーンソー】


「よし召喚!」


 字面だけで何が何やらわからないで困惑するのはもうやめる!


 そして出てきた!

 なんぞこれ!?

 実物見てもわけわかんねえ!?


「これはチェーンソーです」


 だから紹介されてもわからんのですがコレーヌさん!?


「樹木を伐採するための道具です。スイッチを入れると、この刃のついたチェーンが回転し……」


 うおッ!?

 けたたましい音を立てて動き出した。


「迂闊に触れないでくださいね危険なので」


 チェーンソーとやらを持ったコレーヌ、その辺の手近な木に向けて、高速回転する刃を当てる。

 樹海だから木なんていたるところに生えておりますわ。


 すると刃は、細かい木っ端を撒き散らしながら見る見る木の幹に食い込んでいき、最後には向こう側へと突き抜けてしまった。

 当然切断された木は、支えを失い倒れる。


「たーおーれーるーぞぉーーッ!!」


 条件反射でつい叫んでしまった。

 いや倒木に人が当たったらヤバいので。


「斧や鉈で伐るより何倍も速い……!?」

「刃の強度と、回転速度が違いますからね。動力は……、どうやらマスターの魔力から供給されるようです。絆召喚術とは実に興味深い術式ですね」


 コレーヌがガンガン分析を進めてくれて助かる。


 これが複合絆召喚。


 恐らくは、武器を召喚するゴブリーナの特性と、ゴーレムを召喚するコレーヌの特性が合わさってあんなのを呼び出したんだろう。


 召喚できるものの幅が広がって、よかったかな。



 チェーンソーを何より気に入ったのは、召喚の元となった片割れのゴブリーナだった。


 元から刃物好きらしいアイツは、コンバットナイフの時より目を輝かせてチェーンソーを振り回す。


「カッコいー! 気持ちいいー!」


 ハイテンションの赴くままに、片っ端から木々を薙ぎ倒しまくり。


「いたずらに切り倒すなや。木だって生きているんだぞ」


 と注意するも聞く耳持たず。

 次々と幹の太い樹木が支えを失って倒れていく。


「あー、どうするんだよあんなに……?」


 未開地の環境を不用意に変えるとギルドから怒られるんだぞ?

 ああ、もう倒れた木が数え切れないほどに……。


「マスター、提案があります」


 コレーヌが言う。


「伐採された木を有効活用してはいかがでしょう? 古来より樹木は優れた素材です。これだけの材木を使用すればきっと立派なものが出来上がると思われます」

「出来上がるって、何が?」

「家です」


 家!?

 ゴブリーナが無秩序に伐採した木を使って家を建てると。


「ご覧下さいマスター、ここは丘です」

「はい」


 かつてコレーヌが守り、ナワバリとしていた小高い丘から俺たちは動いていなかった。


「ここはかつて古代文明の施設が置かれていた場所ですが、それだけに立地条件は優れています。他より高い位置にあって見晴らしがよく、侵入者をいち早く察知できます。それに近場に水源があり、水の確保にも苦労しません」


 水についてはスラッピィがいるから心配してないけどな。


「ここに家を建てて腰を据えろと?」

「はい、マスターの樹海制覇の足掛かりとなることでしょう」


 誰が制覇するって言った!?

 俺はそんな領土的野心をもって『イデオニール大樹海』へやってきたんじゃないんだが!?


 ……んまぁ、そうだなぁ。

 元々は絆召喚術の検証と研究のためで二、三日もしたら人里に戻って体勢を立て直すつもりでいた。


 しかしスラッピィのおかげで水の心配がなくなると、帰る理由がなくなっていつまででもこもり続けられるんだよな。


 今となってはスラッピィ、ゴブリーナ、コレーヌと様々な絆召喚獣を迎え、コイツらゾロゾロ引き連れて街中歩くのも差し障りありそうだし、かといってコイツら樹海に残して一人街に帰るという選択肢はない。


「……絆召喚術のより深い研鑽のために、樹海に腰を据えてもいいのかもなあ」

「それではマスター……?」


 うむ。


「ゴブリーナが片っ端から伐り倒した材木を集めろ! それを元に家を建てる!」

『キュピピピピッ!!』


 スラッピィもやる気を出して、家づくりが早速スタートした。



「出来た……!」


 俺たちの目の前には、立派なログハウスが聳え立っていた。


 丸太をそのまま積み上げた一番簡単な作りだが、だからこそ手早く完成した。

 ゴブリーナやコレーヌたちの協力もあってこそだったが。


「チェーンソー振り回せて楽しかったぜ!」


 ゴブリーナにとってはひたすら娯楽だったようだ。

 そろそろチェーンソーを没収しなければ。


「素晴らしいです……! これが我がマスターの君臨する城となるのですね……!」

「城は大袈裟だよ。ただのログハウスだよ」

「ですが、何も資料を引用なく、即座に家を建ててしまったのはさすがです。力や材料だけではありません。キッチリとした工法などにも明るくありませんと。マスターは知識も豊富なのですね」

「ログハウスは前にも作ったことがあるからね」


 ギルドからの依頼にはそういうのもあるんだ。

『未開領域の探索のために拠点を築け』みたいな。

 そういうクエストを受注すると、冒険者の皆でここみたいな森に分け入り、現地の材料だけで夜露をしのげる家屋を建てたりする。


 そういうことをやってるうちにログハウスの建て方は自然に覚えた。


 とはいえ今回、ギルドの依頼で建てた時よりずっと早く完成したが。

 出来もよい。


「見事です。マスターは戦闘・魔法・知識すべてにおいて完璧な方なのですね。尊敬いたします」


 コレーヌの持ち上げ方が生半可ではない。


 さて、そんな感じでログハウスを建て『イデオニール大樹海』における活動拠点を得た。


 で、満を持して屋内に入ってみたところ……。


 何もなかった。


 そりゃそうだよね建てたばかりなんだから空っぽなのも当たり前。

 そうすると室内を満たす家具が欲しくなってくる!

 ベッドとかテーブルとかタンスとか!


 人の欲には際限がないのか!?

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