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獅子を追う獅子

『ワールド』

一花達が通う私立飛翔学園にはそう呼ばれる女生徒がいる。


宵闇よいやみ 漣華れんか 15歳。


容姿だけの話をすれば、芸能人も多く通うこの学園の中で、二葉は早くもスクール(学校一の美少女)と呼ばれる程に評価が高いが、ワールドと呼ばれる彼女は既に別格。


世界一の美少女と言っても誰も疑わないような、桁外れの美貌の持ち主。


ベラルーシと日本のハーフの彼女は、プラチナブロンドの美しいロングヘアーに透けるような白い肌、薄いパープルとグリーンのオッドアイは宝石をはめ込んだように美しく、少しぷっくりとした桜色の唇は艶やかさと上品さを兼ね備えている。


さらに、170cmの長身にスラリと伸びた手足、美しい大きな胸と形の整ったプリプリヒップ等、齢15にして完璧な造形を成している。


そんな隔絶した容姿はどこか神々しく、なんとなく近寄り難さを感じるほど。


そして、彼女も13歳の時に『獅子』となった歌の天才で、同年代からしてみれば正に天上人と言った具合。


そのため、恋愛や嫉妬の対象にはならず、中学生以降は敵もいないが友達もいない生活を余儀なくされていた。


とはいえ、友達を切望する一花とは違い、人と極力関わりたくない彼女にとって誰も近づかない状況はむしろ好都合だった。


ちなみに、10代で獅子称号を得ているのは一花と漣華の2人だけで、同い年で、しかも同じ学校に通っているのは奇跡に近い。


実際には漣華が一花を追いかけてアメリカから引っ越して来ただけなのだが。


一花同様に学校に通う必要があまり無い彼女は、一花の側にいる為だけに通っている。


二人の入学は、プライベートな事なので世間は知らないが、新入生代表として一花と漣華が揃って壇上に上がった時は、大パニックで体育館が揺れるくらいには事件だった。


そんな漣華と一花は13歳の時にテレビ番組の収録先で出会った。


その時まで一花は漣華の事をよく知らなかったが、ニューヨークで行われていた一花の個展に両親と行った漣華は一花を知っていた。


絵にはさほど興味を持たない彼女も、間近で見た一花の絵には強い衝撃を受け、画集や製作風景を映したDVDを買っちゃうくらいにファンになった。


この事をきっかけに、一花が師匠と共に立ち上げた『ライオンブランド』というファッションブランドの熱狂的なファンにもなった。


なので、収録で一緒になれる事を知った際は柄になくはしゃいでいた。


収録当日、楽屋挨拶を口実に一花の楽屋に押し掛けた漣華は積極的に話しかけた。


が、忙し過ぎて眠たかった一花はそれを邪険に扱った。


憧れの人物を前に、人生で一番興奮状態だった漣華は空気を読まずに果敢に話しかけたが、「うるせぇ」「あっちいけ」「話しかけんな」「しつこい」「帰れ」と散々に言われふつーに泣いた。


流石にいたたまれなくなった一花は、持っていたアメを1つ渡し、「今日は眠いからアレだけど、今度遊ぼーな。」って頭をぽんぽんして眠った。


アメとムチだった。


漣華自身が普段は誰に対しても塩対応なくせして、実はM気質な彼女にとって一花の振る舞いは絶妙なバランスだった。


溺れた。


もう、メッロメロだった。


寝ている一花の写真を夢中で撮った。


リップクリームも盗んだ。


そして昨年、獅子の歌と絵画のコラボ祭りと称した、2日間寝食を共にし、テーマに合わせた楽曲と絵画を協力して作製する、という漣華にとってはヨダレだらだらもののテレビ企画が日本で撮影された。


このドキュメンタリー番組では終始デレていた漣華。


テレビ製作側の意図は完全に無視し、楽曲は1時間程でさっさと完成させ、その後は一花が動く度に犬のようについて回った漣華。


時々「邪魔だ」と叱られる漣華。


一花の眠るソファの前をうろちょろする漣華。


並んで描いていた絵を一花に褒められて大はしゃぎする漣華。


一花と談笑する女性スタッフを射殺すような眼差しで見つめる漣華。


そんな、誰も見た事のなかった漣華の様子に世間は騒いだ。


二人の様子は視聴者からすればもう恋愛ドキュメントで、日本中の女子がキャーキャー言いながら見ていた。


番組のラストでは、とうとう我慢が出来なくなった漣華が告白してしまうサプライズがあったが、二葉しか見ていない一花にあっさりフラれた。


全国放送でフラれた。


視聴率は38%もあったのに。


でも、前述の様子や、キャラに反して顔を真っ赤にしたり、モジモジしたり、一花の事をジッと見ていたり、フラれてがっつり凹んだりする可愛さに漣華人気は爆発的に伸び、アルバムはめちゃくちゃに売れた。


実は、抜群の歌唱力と神がかった容姿で海外ではとんでもない人気を誇っていた彼女ではあるが、日本では漣華のそっけない態度はあまり受け入れられず、これまで国内での人気はそこまで高くなかったのだ。


一方、血が出る程に歯を食いしばって番組を見ていた二葉は、フラれた瞬間に踊りだす程に喜んだ。


その踊りが面白くて動画に撮っていた母が『メシウマの舞』と題し密かにトクテック(30秒動画アプリ)に投稿。


バズる。


学校でしょっちゅう踊らされるハメになり、二葉にとっては忘れたい黒歴史となるが、残念美少女の二葉はわりと黒歴史量産機だったりする。


そして、フラれた漣華はなんとか連絡先の交換には成功。


あまり返信はもらえないが、高校進学の情報は聞き出す事ができ、決まりかけていたワールドツアーもレコーディングも全てキャンセルして単身日本へ。


このᎷ女、獅子だけあってさすがに肉食である。


高校入学後、すぐにでもアプローチを試みるつもりでいたが、二葉の存在を意識し過ぎて近寄れないまま一週間が過ぎた。


肉食ながら、恋愛初心者の漣華は狩りの出来ない若獅子のごとく。


それでも諦めきれず、虎視眈々と機会を伺っていた折、耳に飛び込んだ『一花破局』のビッグニュース。


この日、漣華は『メシウマの舞』を踊った。

外見イメージは『世界一の美少女』とかで検索すると出てくる北欧系の子達の誰か

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