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放たれた獅子②

二葉にとっての一花像。


二葉は、実は一花の大変だった時期の事をほとんど知らない。


3年前に自宅で死のうとしていた事も、二葉の発言によって生きる意味を見出した事も知らない。


先日のように、別れによって危うく命を絶ってしまうような脆さがある事も、二葉は知らないのだ。


勿論、一花の悲惨な過去は知っているし、葬式での異常な状態も見てはいるものの、二葉にはその後の詳細を知る由もなく、事故前の一花、テレビに映る一花、一緒に過ごしたこの3年間の明るい一花こそが、二葉にとっての一花だった。


二葉からしてみたら、家から一歩出た瞬間に一花はスーパースターであり、一般人の自分と同じような学生生活など望む必要のない選ばれた人間だと思っていた。


そんな特別な一花には、一般人の友達なんていたら、一花の都合も考えずに遊ぶ約束ばかりして製作活動に支障が出たり、悪気は無くてもSNSでプライベートを発信しちゃったり、それによって過去の事故を掘り返す輩が出てくる心配があったり、と、一花の邪魔になる要素ばかりが考えられてとても心配だった。


中学生の頃の一花は忙し過ぎてほとんど学校には来れなかったので、学校に来る日はなるべく側にいて誰も近づかないようにしていた。


特に、女子に大人気の一花は目を離すとすぐに女子に囲まれてしまうので、彼女である事を主張し、周りに見せ付けることで変な虫がつかないようにもしていた。


それが原因で多少いじめにもあったが、一花のためと思えばなんともなかった。


ただ、もし一花が高校に通うのならば、このやり方では限界があるのでどうしようかと考えていた。


そんな時、「ここ最近は仕事が落ち着いたから高校へは普通に通う」と一花は言っていた。


なので、一花の邪魔になるような存在を遠ざけるべく、なるべく彼に近寄らないようにクラスメイトに言い回る作戦を考え、実行した。


二葉は、二葉なりに一花を守ろうとしていたのだ。


既に社会に出ている一花がわざわざ高校に入学している時点で、何かしらの理由がある…と、少し考えれば分かるようなものなのだが、二葉は「私と少しでも一緒にいたいのねウフフ♡」くらいにしか思っていなかった。


一花は普段、二葉を甘やかすばかりで、一切悩みや弱音も吐かなかったし、事故や、その後の辛い過去の話をする事もなかった。


恋人関係とはいえ、若い二人は表面的なコミュニケーションで満足していたし、そこに疑問を持つ事はなかったのだ。


そのせいもあって、二葉の中で完全無欠の一花像が出来上がってしまったのは仕方のない事ではあった。


そんな折、海岸で初めて一花の心の内を聞いた時、一花の弱さを垣間見たと同時に二葉は間違える。


邪魔なのは、私だったのだと。


彼への想いが強すぎるばかりに、極端過ぎる勝手な選択をし、傷つく必要のない傷を負ってしまった彼女。


それでも、恋愛にはすれ違いや思い違いはつきものなので、二人で寄り添えばいずれ絆は強くなっていくはず…なのだが、相手は皆の憧れ獅子の少年。


勢いで作ってしまった『破局』というこの隙。


フリーになった獅子様を、誰もが指をくわえて見ているだけとは限らない。


この日、二人の破局を噂で聞き、千載一遇のチャンスと見て動き出そうとしている人物がいる事を、彼女はまだ知らない…。

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