この世界
ケンジさんが出ていった部屋のなか、俺はこれから方針について考えた。
まずは央都に向かって進む。
その流れでできるだけこの世界のことについて調べる。央都に着いたら、聞き込みをしながら対策を練ることにしよう。
だかそれにはひとつ問題点があった。
・・・・金がない。
もちろん現実世界のおかねなんて持ってきてないし、あったとしても使える訳がない。
ここを出たあとは1文無しとして、寝床代、食事代を何とかして手にいれなければならない。
未だに、ここのこともわかっていないし、このことについての情報はできるだけ早くてにいれなければならない。
ダイニングに戻ると、ちょうどレオがサンドイッチを食べ終わったところだった。
「お兄さん、遊ぼー」
レオが遊ぼうと誘ってくる。
だが、できるだけ早く出発したい気持ちもあった。
ケンジさんと約束したこともあり、早く行動したかった。
しゃがんで目線を合わせてから
「ごめんな、ちょっといかないといけなくなって、また遊んでやるから」
とつげた。
横目ですぐに出ますと、ケンジさんに伝える。
だか、ケンジさんは落ち着いて言った。
「まあ、そう急がなくてもいいんじゃないか、数時間前まで寝込んでたんだし」
「でも、できるだけ早い方が」
「あの事については気にしないでくれ、君にそんなに気を使わせたくもない」
そういわれてしまえば急ぐ理由もない。
もう午後であるから、すぐに日は暮れるだろう。
寝床が確保できていないまま、出発するのも得策ではないので、そうさせてもらう。
「よーし、じゃあなにして遊ぼうか」
「やったぁ、外でボール遊びしよう」
レオは元気に走っていった。
「すいません、今日一日泊めていただけますか」
「ああ、もちろんだ」
俺はレオと外で遊び、その後夕食、お風呂をいただいた。
眠気は来なかったが、時間帯が遅くなったので、一応ベッドには入っておく。
その時にあの女性のことを思い出した。この半日過ごしてみるだけで多くの情報を手にいれた。
レオとの、ボール遊びの時には変わったボールが出てきたし、お風呂場でも、変わった蛇口からキラキラ光るお湯が出てきたりと何度も驚かされた。
この事から、俺は1つの仮説をたてた。
この事を報告しようと思ったのだが。
連絡をこちらからとる方法を知らないことに気がついた。
手始めに念じて見るが、なにも起こらない。
手を電話の形にして「もしもし」といってみるが、かかるはずもない。
ベッドの上に立ち上がって天井に向かって手を振ってみるが、それでも返事はなかった。
「くっ、頼んでおいて連絡方法を用意しないってどういうことだよ」
その後も跳び跳ねたり、転がったりとだんだんと変な行動になっているが試してみた。
「おーい、聞こえてる?見えてるんだろ、電話かけてこいよー」
その時に不運にも扉が開けられた。
「蒼くん、明日のことなんだが・・・」
「・・・」
「・・・」
お互いに状況を理解するのに時間がかかり、理解できたとき、俺は無言で布団に潜り、訪問者はゆっくりと扉を閉めた。
布団の中で、顔が赤くなるのを感じ、それと同時に変な勘違いを、生んだかも知れないと思った。
このままではいけないと、急いで廊下に出ようと動きだし、ドアノブに手をかけたとき、
ガンッッ
タイミングが悪く扉が開けられた。
「おっと、ごめん。タイミングが悪かった」
「ケンジさん!あれは違うんです、ちょっと事情が、決して変な宗教とかじゃ」
痛さも忘れ、必死に弁解した
「ああ、大丈夫だ。人それぞれだからな」
大丈夫じゃない、絶対に変に思われてしまった。
「それで明日のことなんだが、畑とレオがいるから送ってはやれないんだ。その代わりといってはなんだが」
そういって、ポケットから小さな小袋を取り出し机においた。
「少しだが、足しにしてくれ。」
音から中にはこの世界の硬貨が入ってるのだと思った。
「そんな、いただけません」
「もらってくれ、娘のためでもあるんだから」
看病や食事、風呂までいただいて、その上もらうなんでできないが、娘を思う気持ちもあるならば無下にはできない。
「ありがとうございます。必ず有意義なものに当てさせていただきます。」
その後、央都までの道を教えてもらった。少し長い一本道を歩き、1つ町通ってそのつぎが央都だそうだ。その他その町での宿屋等も教えてもらった。
その後、雑談をしたが、眠たくなったのでお開きとなった。何日も寝ておいてよく寝れるなと自分でも思いながら、ベットに入った。一息ついて明日への英気を養おうと、瞼を閉じた。
ピコン
眠いなか、その電子音はとても不快に感じた。
ピコン ピコン ピコン
何度も等間隔で鳴るその音は目覚まし時計を思い出させ・・・
「うるさぁぁぁい」
つい夜中に大きな声を出してしまった。
「ごめんなさい。伝えておきたいことがありまして。
「どうしたんですかこんな夜中に」
「連絡の方法なのですが、伝えるのを忘れてまして」
「あー、そうなんですよ。こちらも報告しようと思ったんですけど方法がわからなくて。どうしたら繋がるんですか?」
「あれっ、試されました?」
その声は少し震えていた。
「はい、色々と」
「方法は・・強く念じていただくだけで繋がります。」
・・・あれれ、おかしいなぁ、念じるだけならあんなに恥ずかしいことしなくても繋がったはずなんだがなあ
「何か隠してますよね。」
「えっえな、な、なにも隠してなんかい、いませんよ」
分かりやすい、眠いなか急に起こされたので少し機嫌が悪い。少し意地悪してみようと思う。
「僕は先ほど、通話したいと強く願いました。でも、繋がりませんでした。その結果、色々試していくうちに、それを同居人に見られて大恥をかきました。とても恥ずかしかったです。さぞかし深い理由があったんですよね。聞かせてもらえますか?」
「・・・」
沈黙が流れた。
だんだんとこちらが耐えれなくなったので、声色を戻した。
「すいません、からかいすぎました。責めるつもりはありません。ただ理由を聞きたかったんです。」
「・・・忘れてました。」
「??」
「そちらからの通話の受信を受け付け拒否にしたまま戻すのを忘れてました。」
はぁぁ、この人は案外おっちょこちょいなのかもしれない。
「まぁいいです、それで報告なんですけど・・・」
俺はそのあと魔法らしきものが日常生活で多く使われていることを伝えた。
そこからその女性が考えたこと、それは
「この世界は世界線が混ざった勢いで、文化も混ざってしまったのかもしれません。」
なるほど、地球の文明と異世界の魔法が混ざり、この世界ではこんな風になっているのかもしれない。
「報告ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。」
通話のあと俺の意識は眠りのなかに落ちていった