俺の役目
第二話をお読みいただきありがとうございます。
第一話の方の内容が更新されている場合があります。そちらの方をお確かめいただくことをおすすめいたします。
まずは、この家の主に会いたい。
たしか出口は、
そう思い辺りを見渡した。
扉は左側にあった。
木製の扉で少し開いており、そこから除く2つの目。こちらが見ていることに気がつくとそれはスッと引っ込んだ。
身長から、幼さが感じられたので、この家の子供かなと思ったと同時に驚かせてしまったかなとも思った。
あの子がどうなったのか気にもなったので、そろそろ布団から出ることにする。
床に両足をつけて、力をいれて立とうとする。
膝を伸ばしたとき、少し力の入りにくさを感じた。
少しよろめく。
なんとか立てて、ゆっくりと伸びをする。固くなった体が伸びるのが気持ちいい。
5秒ほどじっくり伸びてから再び扉を見ると、さっきのかわいらしい目がこちらを見ていた。
「おはよう、さっきは驚かせちゃったかな、ごめんね」
また怖がらせないように、声をかけたが、また隠れてしまった。
だが今回はすぐに、ちょこんと男の子が顔を除かせた。
「お兄さん、お化けが見えるの?」
お、お化け?お化けが出るの?
まさかのワードが出てきたものだから驚いてしまった。
「お化け?」
「うん、お兄さん誰かと話してたから。」
そういわれて気がついたが、さっきの案内係の人との会話、周りの人には独り言を呟き続けるヤバい人に見られるだろう。
ものすごく恥ずかしい。
まだ純粋な子供だったからましだったが、いい大人に見られていたとしたら、2日は閉じ籠っていたかもしれない。
「さっきはね、妖精さんと話してたんだよ。」
「お兄さんには妖精さんがみえるんだ。」
そんな言葉で誤魔化せるかはわからなかったが、純粋な子でよかった。
そんなことをしていると、男の子の後ろから1人の男性が現れた。
「やあ、起きたかい?」
その男性は謎の銃を腰に帯び、馬車のようなものに引かれていた台車にのっていた人だった。
「あなたはあのときの」
「体調が悪そうだったから連れてきたんだが、大きなお世話だったかな?」
「いえ、ありがとうございます。だいぶ悪かったので、とても助かりました。」
「今の体調はどうかな?」
「今は体調は楽です。看病していただいたんですね。ありがとうございます。」
「お礼は娘にいってくれ、といいたいと頃なんだがな、2日前に央都にでかけててな」
2日前?じゃあかなりの間寝ていたのか
「5日間寝てたぞ」
5日間!通りで体に力が入りにくいわけだ。
これはもう、何度お礼しても足りないだろうな
「ところで娘さんはいつ帰ってくるんですか。」
男性の顔色が一気に変わった。
「いつ帰えるかはわからない。帰って来ないかもしれない。」
聞いてはいけないことだったのかもしれない。
「すいません。悪いこと聞いちゃいました。」「いやいいんだ。どうだ飯でも食べていかないか?ちょうど昼飯ができた頃だし、腹も減ってるだろう。」
言われて見れば、半端ないほどにお腹が減っていることに気がついた。我慢できなかったので甘えることにした。
食卓に入ると美味しそうな匂いがしてきた。
皿に乗せられたのは、サンドイッチのようなもの。
いい感じの焦げ目のパンに、葉物の野菜、チキンによくにたお肉が、挟まれていた。
かじる度にあふれでる肉汁が、空腹のお腹を満たしていった。
その間俺たちは雑談を楽しんでいた。
「ケンジさん(男の人)は、農家さんなんですね。大変なイメージなんですけど。どうなんですか?」
「大変ではあるが、レオ(男の子)が手伝ってくれるし、楽しさもあるから嫌ではないさ。」
「この前リンジン抜いたんだよー」
レオがたのしそうに話している。
隣人を抜いたら困るんだが、こちらの世界の人参なんだろう。
「お手伝いして偉いな」
レオはニコッと微笑む。
会話を弾ませながら、俺はサンドイッチを再びかじるが、気づいたら食べ終わっていた。パンを惜しそうに見ているとそれに気づいたケンジさんがもうひとつつくりはじめてくれた。
「ほんと何から何までありがとうございます。」
「いいってことよ」
調理中俺は道具の方に注目していた。
火の代わりに、赤い非実体のもやのようなものが使われていたり、野菜の処理には不思議な機械が使われていたりとやはりこの世界には見たことのないものが多い。
倒れる前に見た、農業用機械、変な馬車、銃、部屋にあったライトなど、この世界は現実世界と異世界でのが合わさった世界だと言っていた。
そのときに現実世界の文明と異世界の魔法の技術が混ざったのだろう。
この世界の人の名前だって、聞き覚えのある名前に異世界らしいカタカナ表記である。決して漢字がないわけではない。
レオが抜いたリンジンも、異世界でのニンジンの名前と混じった結果だろう。
「どうぞ」
おかわりをもらい。もう一度かぶりつく。いくらでも食べられそうだ。
「ごちそうさまでした。」
「これからソウはどうするんだ。」
「まずは央都にいってみようと思います。娘さんに会えるかもしれませんし。」
とにかく情報を集めたいから。央都は打ってつけだろう。
「会えたらいいな。央都はそこまで遠くない。これからしなくちゃいけないことがあるから送ってやれないが、歩いてもそう時間はかからないさ。」
それはよかった。野宿でもしようかと思っていたから。
「・・・娘さんのこと話してもらえませんか?」
俺は央都にいくといったときのケンジさんの顔が曇ったのを見逃さなかった。
他人のことに顔を突っ込むのはよくないとは思うが、困っている人を助ける、これは俺の第二の人生の目標でもある。
「こっちに来てくれ、レオはちょっと待っててな」
断られたらこれ以上聞かないつもりだったが、話してもらえるようだ。
もうひとつの部屋に連れ込まれ。ケンジさんは話し始めた。
「娘は魔獣の討伐に行ったんだ。娘は魔法の才能があった。国でも有数の実力者でな、15歳のときに央都に戦力として、来るように言われた。定期的に帰ってはくるが、毎回きつい戦いで、いつ帰ってこなくなるかわからない。」
そうだったのか、まだ、若いときに死と向い合わせの戦いに連れ出され。いつ死ぬかわからない状況。
それを待つケンジさんも苦しいだろう。
母さんを突然なくした俺にはよくわかる。
「俺が連れ戻してきます」
考える前に口に出していた。
「君にできるわけがないだろ、国でも優秀なやつが集まって、やっと討伐できるかどうか。」
「でも、なにもしないのは嫌なんです。娘さんには助けてもらった。今までにないほどに苦しかったのを助けてもらった。僕に何ができるかはわからない、でも、それって動かないと始まらないです。」
「すまないな、たしかにそうだ。俺は自分にはなにもできないと思って。ただ願うことしかしなかった。動こうとした君の方が強い。」
「いいえ。ケンジさんには、帰ってくる娘さんを、待つという役割があります。それをきちんと果たしてる。だから、ケンジさんの代わりに僕がいってきます。」
「ありがとう。」
そういってケンジさんはダイニングに戻っていった。
ここまでお読みいただきありがとうごさいました。
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