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mission2 弟子、決闘する

 俺は素早く騒ぎの中心地から離れた。

 散策がてら、静かに読書ができる場所を探す。


 歩きながら、俺はある疑問点について考えていた。


 何故師匠たちが俺をミズヴァルド学院に入学させたかである。


 入学に際し、何か説明があると思っていたが、ついぞ口が開かれることはなかった。自分から聞けばいいかと思われるかもしれないが、それは依頼人に何故ターゲットを殺すのか問うようなものであり、弟子である俺から聞くことは(はばか)れた。


 だが、推測することを禁じられたわけではない。

 むしろその答えこそ、俺をミズヴァルド学院に入学させた理由であるように思えてならなかった。


 考えるな、感じろ――とは、師匠の口癖である。


「平民風情が、あたしたち貴族みたいに歩いてんじゃないわよ!!」


 叫び声が校舎前の広場に響き渡る。

 当然、周囲の視線が集中した。

 俺もその1人だ。


 またトラブルか。

 入学早々、血気盛んなことだ。


 数人の貴族たちが、1人の男を囲んでいた。

 前者のうち、1人小柄な少女で伯爵位、周りは男爵だろう。

 対して後者には徽章はなく、平民から準男爵となった学生と推察できる。


 否が応にも目を引くのは、伯爵の徽章を付けた少女であった。


 白い肌に、綺麗に筋が通った鼻梁。

 如何にも令嬢然とした雰囲気を醸し、生まれた時から人を見下すために生まれてきたような青の瞳は、傲慢な光を讃えている。

 圧巻なのは黄金色に輝く髪であろう。

 小さな顔の両側で綺麗にロールし、少女に作り物のような愛らしさを与えていた。


 その少女が、準男爵の男の前に出て威嚇する。


「待ってくれ! 当たったのは謝るよ。け、けど、ぼくだってもう貴族なんだ。あんたたちと一緒なのに、なんで隅っこを歩かなきゃいけないんだ――――ガハッ!!」


 準男爵の学生が言い終わらぬうちに、前蹴りが飛んできた。

 見事、鳩尾を狙撃し、準男爵の男を這い蹲らせることに成功する。

 洗練された蹴りとは言い難い。

 しかし、呼吸を麻痺させるには十分な威力を示していた。


 だが、前蹴りを放った伯爵の令嬢(ちょうほんにん)は悪びれることがない。

 男に詰め寄ると、その髪を掴んで引き揚げる。

 嗜虐的に顔を歪め、準男爵の男を睨んだ。


 伯爵の方はイリス・ザム・フォーヴァイト。

 準男爵の方はポロフ・アノゥ・レンペという名前だったはずだ。


「平民上がりが何を粋がってるのかしら? 平民(ぶた)平民(ぶた)……。爵位をもらおうと、羽が生えようと、あなたたちは家畜以下の存在なのよ」


「そ、そんな……」


 ポロフは目で周りに助けを求める。

 だが、彼に手を差し伸べる慈悲深い者はいない。

 あるのは嘲笑と薄汚い罵倒だけだ。


「とっとと学校から失せなさい。目障りよ、平民」


「い、いやだ! あんなに一生懸命勉強して、やっとミズヴァルド学院に入学できたのに……」


「うるさい……」


「普段、滅多に褒めない親父が、合格したって言ったら、涙を流しながら喜んでくれたんだ。だから――――」


「うっざ! 何? あたしにどういう反応を求めているわけ? 『そう。豚の分際で一生懸命頑張ったのね』『パパが喜んでくれて良かったわね』ってハンカチ片手に、お涙頂戴の演じればいいのかしら」



 そういうの……。ちょームカつくんですけど……。



 イリスの顔が曇る。

 それまで纏うことがなかった殺意が浮き出て、目の前の男どころか場の空気すら支配していく。


 直後、イリスの手の平に炎が浮かんだ。

 魔法だ。恐らくDランク――第一種戦闘魔法だろう。

 魔法にはランクがあり、A~Fまでの6段階に分かれている。

 その中でDランクは、人間を殺傷できるほどの威力を持つ魔法のことを差す。


 つまり、今彼女の手には、剣や槍と同じ、人を殺めるための凶器が握られていた。


 さすがにやりすぎだ。

 事実、周りの空気が硬直していた。

 さっきまでイリスと同じくはやし立てていた者たちも、紅蓮の炎を見て、顔を青ざめさせている。

 皆が死を予見し、感じていた。


「待て!」


 皆がイリスの殺意に囚われる中、その声は清々しいぐらい気持ちよく響き渡る。

 1人の少女がイリスの方に近づいてきた。


 雪のような白い肌に、この場の空気ですら打ち消しそうな芯の通った青い瞳。

 イリスと比べて背が高く、華奢ではあるが、女性らしいふくらみは制服の上からでもはっきりと見て取れるほど、美しいプロポーションを誇っている。

 長く腰まで伸びた金髪は、清楚でいて、漆を塗ったように艶があった。


 令嬢というよりは、どこか優等生という言葉が似合う彼女の胸には、一切の徽章がない。

 それは準男爵を示すわけだが、何故か俺が読み込んだプロフィールの中に、彼女に該当する情報はなかった。


「(把握漏れ……。いや、そんなまさか……)」


「彼女の名前はラフィーナ・アノゥ・アデレシア」


 唐突に俺の思考に割り込んできたのは、大きな眼鏡をかけたメイドだった。

 年の頃は20代前半のエルフ族。

 周りの学生と比べても、女性の魅力に溢れ、薄く笑った顔は蠱惑的であった。


「お前は……」


 俺は眉間に皺を寄せるが、メイドはそのままラフィーナなる少女の話を続ける。


「見ての通り、準男爵です。しかし、彼女は試験を受けていません。少なくとも、試験会場にはいませんでした」


「ああ。わかっている」


 仮に俺が受けた試験会場にいれば、あの美貌だ――彼女が黙っていても、周りが黙っていなかっただろう。


「ところで、ブレイド準男爵様(ヽヽヽヽヽヽヽヽ)……。このメイドに何か仕事をお与えになることはありませんか?」


「ふん……。ならば、水でも頼もうか。激しい炎のおかげで少し喉が渇いてきたところだ。少し汗も掻いたしな」


「かしこまりました」


 メイドは下がると、俺の視界から消えていく。

 一方、イリスとラフィーナの舌戦はすでに始まっていた。


「何、あんた? 準男爵のクセして、伯爵であるあたしに意見しようと言うの?」


 イリスは殺意の方向を、ポロフから目の前のラフィーナに変更していた。

 大きな紅蓮の炎は仕舞われることなく、依然として燃えさかっている。

 対するラフィーナという少女は1歩も退かない。

 公正さを湛えた瞳は、今まさに殺人が行われようとしている現場からそらされることはなく、目でイリスを糾弾していた。


「意見ではない。忠告だ。たとえ、貴族であろうと、身分が高かろうと、殺人は許されるものではない」


「は? 何それ? 正義の味方気取り? あんた、何様よ?」


「私の名前はラフィーナ・アノゥ・アデレシア。正義の味方などと大それた存在ではない。私が語っているのは単なる常識だ」


「誰が名乗れといったのよ。……常識? バカじゃないの? それって平民の常識でしょ。ここはミズヴァルド学院――貴族の学校よ。ここでは貴族こそが常識であり、絶対なのよ」


 イリスは手に持った炎で宙を薙ぐ。

 それは明らかにラフィーナに対する威嚇であった。

 だが、それでもラフィーナの表情は変わらない。

 じっとイリスを睨んでいる。


 一触即発――いつ手に持った炎の銃把が弾かれてもおかしくなかった。


 仕方あるまい。

 介入は望むところではないが、助けに入るか。

 あのラフィーナという女の正体も気になるしな。


 とはいえ、先ほどのように手刀で1発というわけにはいかない。

 周りの目が多すぎるからだ。

 故に俺は真っ向勝負を仕掛けるしかなかった。


「あの…………」


 刹那、イリスは反応した。

 俺の胸に視線を送った後、さらに顔をしかめる。


「なに? また準男爵? 全く……今日は平民しかいないのかしら?」


 苛立たしげに声を発した。

 ますます憤怒の形相を深めるイリスに対して、俺は無害を装いつつ、彼女に口撃を加え始める。


「あの……その人の言うとおりだと思います」


「は? あんたも平民の常識を謳うわけ」


「いえ。確かにこの学校はあなた方貴族のものです。我々は所詮部外者。そこに席を置いていただけるだけでも、有り難いと思っています」


「へぇ……。あんた、他の平民(ぶた)どもと違って、口の利き方はわかってるようね」


 幾分イリスの機嫌がよくなる。

 一瞬見せた笑顔は決して作り物ではない。

 だが、次の俺の言葉は光が差したイリスの顔を、たちまち暗転させた。


「では貴族であるならば、このミズヴァルド学院の校則はご存じですよね?」


「あ゛……?」


「授業外での魔法の使用は禁止です。まさか貴族である(ヽヽヽヽヽ)あなたが、知らなかったなんて……。いや、きっと忘れていたに違いない。そうですよね?」


「あんた、喧嘩売ってんの? それとも買いに来たのかしら?」


「喧嘩なんてそんな――――。ただ、この学院が貴族の常識で成り立っているならば、その校則もまた貴族の常識であると思っただけです」


 俺が言った瞬間、何かが俺の胸に飛び込んできた。

 ナイフでもなければ、イリスの頭というわけでもない。

 手袋だ。白く、ツルツルとした生地の手袋が、俺の胸に当たった後、足元に落ちた。


 首謀者は大きく振り抜いた姿勢から、ゆっくりと仁王立ちになる。

 顎を上げて、あくまで相手を見下し、暗い声で言った。


「拾いなさい。貴族の常識を教えてあげるわ」


 瞬間、「決闘だ」という声とともに、歓声が上がった。


 決闘はいわば貴族間だけに許された紛争解決策の1つである。

 上下を問わず、申し込むことが可能であり、普通はある取引においてバッティングした時に、代理者を立てて戦わせるのがセオリーだ。

 それはあくまでセオリーであり、学院内で宣言することは何もおかしいことではなく、イリスが言う常識とやらには即した行動であった。


 何より決闘ということであれば、授業外でも魔法を使うことが許されている。


「仮に俺がこの手袋を拾った場合、どうなるのですか?」


「そうね。3人まとめて、学院から出ていってもらおうかしら」


「それはあなたが勝った時のことを言っているんですよね」



 俺は自分が勝った時のことを尋ねているのですが……。



 イリスの金髪ロールが激しく盛り上がる。

 それは過度の魔力流出における現象であるのだが、『怒髪天を衝く』という言葉通りの姿を現していた。


「あたしが負けるとでも……」


「きちんと条件を確認しておきたいだけですよ」


「いいわ。万が一、億が一あたしが負けたとすれば、なんでも言うことを聞いてあげる」


「なんでも……と言いましたね」


 俺は目を細める。


 すると、イリスの顔が急激に赤くなった。

 何かから身を遠ざけるように、自分の胸の辺りを隠す。


「ちょ! 何を考えているのよ!!」


 いや、それは俺が聞きたいのだが……。

 一体何を想像したんだ、この娘は。


「仔細承知した。では――」


 俺は投げつけられた手袋を拾い上げる。

 再び歓声が上がった。

 俺が手袋を拾うことによって、決闘が受諾されたことになるからだ。


 すぐに決闘の見届け人と審判を立てる。

 入学式前の余興とばかりに、本年の新入生を中心に人が集まり、その人垣によって即席の円形闘技場が生まれた。

 もうこれでここから逃げることは許されない。


「君、大丈夫か?」


 決闘前に軽く身体をほぐしていた俺の所に、ラフィーナとポロフがやってくる。

 2人とも心配そうに俺を見つめていた。


「問題ない」


「ぼ、ぼくが言うのもなんだけど……。彼女、強そうだよ」


「だろうな。フォーヴァイト家は元々優秀な魔法士を排出する家系だ。彼女自身も、その血を色濃く受け継いでいるのだろう。彼女がなんと言われているか、知っているか?」


「いや……」


「【フォーヴァイトの狂犬】と呼ぶそうだ。会って見てわかった。実に、ピッタリな名前だ」


 少しジョーク混じりに言ってみたが、あまり受けはよろしくなかったらしい。

 ラフィーナは一層顔を険しくし、ポロフは今にも泣き出しそうだった。


「やはり決闘は中止にしよう。君が大怪我することになれば」


「そ、そうだよ。せ、誠心誠意謝れば、許してくれるかもしれない。靴でもなんでも舐めてさ」


「その言葉は、俺が手袋を拾う前に言ってほしかったな」


「いや、まだ遅くはない。必要であれば、私が――」


「私が――なんだ?」


 すると、ラフィーナは顔を背ける。

 何かを言いかけた事は間違いない。

 が、それ以降彼女が口を開くことはなかった。


「ちょっとまだなの?」


 イリスは用意万端だ。

 どこからか差し入れられた水で喉を潤している。

 そして、いよいよ闘技場の真ん中に進み出た。


「では、行って来ます」


 俺もまた前に進み出た。


 10歩ほどの距離を取る。

 相手は魔導士だ。

 近づくことで有利はとれるが、俺にとっては十分余裕のある距離だった。


 所詮は貴族の決闘(ままごと)だ。

 100歩離れていたとしても、俺なら無傷で勝利できる。

 だが、仮に準男爵の俺が勝利をしたとしても、周りは許さないだろう。

 どんな手段を使ってでも、準男爵(へいみん)である俺を追放しにかかるはずである。理不尽と思われるだろうが、貴族とはそういう生き物だ。

 勝っても負けても、俺に利益はない。


 ならば、引き分けならどうだろうか。

 いや、それも難しいだろう。

 ランダムに抽出されたとはいえ、見届け人のほとんどが爵位を持つ学生である。

 平民に有利な判定をするとは思えない。


 ミズヴァルド学院で準男爵はあくまで少数派(マイノリティ)だ。

 貴族が織りなす華やかな社交界に紛れた異物でしかない。


ラフィーナ(ヽヽヽヽヽ)、知ってるか? 平民がミズヴァルド学院に入学できるようになってから、何人が卒業か?」


「……知っている」


「答えは――」



「0人だ……」



 そう。

 準男爵――つまり平民がミズヴァルド学院を卒業したことは、いまだないのだ。

 その多くが途中で挫折し、あるいは追放され、学院を後にしている。

 理由は明白だろう。

 貴族たちに嫌がらせ受けたためだ。


 俺はハッと顔を上げる。


 なるほど――。そういうことか。


 師匠たちが何故、俺をこのミズヴァルド学院に入学させたか。

 それはおそらく俺にここで3年間勉学し、貴族として生き残ってみせよ――ということなのだろう。

 もちろん、暗殺者としての身分を隠してだ。


 それならば、コウ師範が暗殺にあまり役に立たない貴族の知識を俺に教えたのも合点がいく。


 ならが、今目の前にある事態こそ、試練の1つであると言える。


 さすがは師匠たちである。

 尊敬すべき最強の暗殺者たちだ。


「何を笑っているのよ。まさかもう勝った気でいるの」


「笑っていたのか、俺は?」


「ええ……。むかつくぐらい不細工だったけどね」


「些細なことだ。単純に負けられない理由が増えたに過ぎん」


「何を言ってんのか、さっぱりだわ。……そうだ。名前を聞いていなかったわね」


「名乗ったところで、あなたに何の益がある?」


「とことん腹立つ男ね。このイリス・ザム・フォーヴァイトがわざわざ訊いてやってんのよ」


「ブレイド」


「ブレイド、ね。じゃあ、ブレイド……。そろそろいいかしら?」


「いつでも――」


 俺は構えを取る。


 右手を前にして、指で「こいこい」と合図した。


 同時に「はじめ」という声がかかる。

 いよいよ決闘が始まった。


 イリスは初手魔法を掲げる。

 紅蓮の炎を握り込むと、竜の息吹のように放出する――。


 ――――はずだった。


 魔法を呪唱し、さて今から放とうという瞬間に、イリスは固まる。

 唐突に魔法を解除し、代わりに下腹部に両手を押し当てた。

 顔色はみるみる蒼白となり、額には脂汗が浮かぶ。

 具合が悪そうなのは、一目瞭然である。

 周囲も、イリスの一挙手一投足を見守った。


「どうした?」


 俺は構えを解く。

 彼女から決して視線を逸らさず、その行動を見守る。

 憐憫を含んだ口調は、多少なりともイリスの矜持をくすぐったらしい。

 鋭い槍のような眼光が俺を射抜いた。


「な、なんでもないわよ」


「なんでもないということはないでしょう」


「近づくな!!」


 俺はイリスに近寄ると、強い否定の言葉が返ってくる。

 しかし、その顔はみるみる青くなっていった。

 次第に瞳はとろんとして、何か熱に浮かされているように見える。

 喉を射抜くような鋭い眼光が、恍惚とし、肉汁のようにトロトロになっていった。


「だ、だめぇえぇ……。が、我慢できないよぉぅ」


「だめ? 我慢? やはり、何か体調が悪いようだな」


「だから、近づくなって――――はうぅぅぅうう」


 イリスは再び魔法を唱えた。

 刹那、力みが入ったからなのか。

 さらにイリスの苦悶は、ステップアップしていく。

 とうとう膝を突き、相変わらず手を下腹部に当てたままだった。

 もぞもぞとしきりにお尻を動かしている。

 顔は焼けた鉄よりも赤くなり、必死に何かに耐えていた。


 突然、謎の行動を起こし始めたイリスに、男たちは熱狂的な声を上げる。

 鼻の下を伸ばし、まるでストリップでも見るかのように熱心に視線を送っていた。


 その間もイリスは荒い息を吐き出している。


「はあ……。はあ……。はあ……。ね、ねぇ、ちょ、ちょっとタンマ(ヽヽヽ)……」


「たんま?」


「い、一時中断して……」


「中断?」


「中断してどうするのですか? まさかここから離脱するとでも? ……わかっていますか。如何に理由があろうとも、決闘から逃げれば、即相手側の勝利となるんですよ」


「わ、わかってるわよ! はあああああ……。も、漏れちゃうぅぅぅ」


「何が漏れるというのですか?」


「い、言えるわけ――ぐっぐぐぐ……。だめぇえぇえぇ……。はあ……。はあ……。もう――――限か――――」


 イリスは立ち上がる。

 俺に背を向け、突然駆けだした。

 人垣を強制的に振り払い、そのまま学舎の方へと入っていく。

 そして、ついぞ彼女が戻ってくることはなかった。


「これは――――。どういうことかな?」


 ポロフが呟く。

 ラフィーナも、そして他の貴族たちもただただ唖然とするより他なかった。


 1人俺だけが審判に向き直る。


「審判、勝ち名乗りを」


「い、いや、しかし――」


「相手は決闘から逃げていきました。学院が決めた決闘の本則には、逃亡すなわち敗北とあります。俺が言ってることに、何か間違いがありますか?」


「…………間違いは……な、ない。君の勝ちだ」


「では、どうぞ……」



 ぶ、ブレイドの勝利ぃぃぃぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃ!!



 半ばやけくそ気味に、審判は俺の腕を上げるのであった。


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