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第62話 戦え! ダメンズ勇者たち!

「ショボい初級ダンジョンよね……ここ」

 言いつつ、私はあたりを見回した。


 黒髪天然勇者、オーカーの上で踊ってるのは「ヌカヅケーノ」。

 ひたすら愉快に踊る緑色した細長いキュウリ型モンスターだ。

 こいつは踊りながら相手をぬか漬けにして……お肌を艶々にしてくれる、ちょっと嬉しいかもしれない天然酵母なモンスター。ただ、臭い。


 女たらし勇者、フェズの前には「オムツコッコ」。

 人前で恥じらいながら踏ん張った挙げ句、使用済みオムツを投げつけてくる、ある意味恐ろしい敵だ。そしてやっぱり、臭い。


 食いしん坊勇者、ウォルテールが齧りついているのは「ガーリックン」。

 一見、玉ねぎモンスターのように見えて、実はニンニクなのであった。元気回復、身体に良いがやはり、強烈に臭い。


 ダンジョンフロアいっぱいに広がる悪臭……人の数倍、鼻がきく獣人フォグルは白目で悶死。

 ハンカチで鼻を押さえたアイルは涙目で私の背中をかきむしる。

「ここ、ヤダァ。どうにかしてよ、ミナミぃ!」



「悪臭退散! 地爆陣(アースブラスト)!」

「「「ゴワぁぁっ!」」」

 私が唱えた呪文によって地面から土塊(つちくれ)が舞い上がり、勇者達ごと悪臭モンスターたちを地面に埋め立てた。



 ふぅ。

 とりあえず、においが消えたわね。

 ゴミを埋め立てて正解だったわ。


「ねぇ、ところで幻の温泉宿ってどんな宿屋なのさ?」

 きれい好きアイルは服についた埃を払いながら言った。

「そうねぇ、癒しを求める旅人のもとに突如現れる伝説の宿屋らしいけど……私も見たことないのよね~」

「そんなの本当に見つかるの?」

 話しつつ、あたりを見回すが今のところ何かが出現する気配はない。


「さぁ。でも、これだけあんた達を大量に連れてきてるんだから、出て来ても良さそうなもんだけど」

「それ、どういう意味?」

 アイルがジと目で言った。


「基本、弱い冒険者を助けるために出て来るらしいの。あんたたち以上に弱い冒険者なんて、この大陸中探してもいないでしょ?」

「なるほど」

 感心したようにフォグルが頷く。


 今回、このパーティダンジョンの定員は六人。

 レベルMAXの私では出現しない可能性が高いが、勇者たちは全員最弱レベル1だ。タダ飯を食わせてるんだから、宿をおびき寄せるぐらいの役に立って貰わないと困る。



 というわけで昨夜、毎度恒例くじ引きにてダンジョンに連れていく(おとり)勇者を選出。

 ハウスキーパー役のレドグレイと弱虫アッシュの兄弟はまた留守番役、くじにハズレた無口男ロンサールはペットの合成獣、ナミの世話係として残してきたのよね……。



「おら、ミナミ! てめぇ! 毎度毎度、吹っ飛ばしやがって……」

 何とか土から這い出し、突っかかってきたウォルを私はひょい、と避けた。

「おわっ!」

 不幸にもそこに突っ立っていたオーカーと鉢合わせしてひっくり返るウォル。


「あーあ。毎回懲りないなぁ、お前……」

 ようやく何とか自力で土の中から這い出してきたフェズが、前髪についた土をキザったらしく払い落としながら言った。

「ほんと学習能力、皆無だよね~」

 毒舌アイルも毎度のこと。



「あぁ、何か疲れたわ。ホント癒されたい──」

 いつもの光景を見て、何気に言った私の一言に。


「「はい、秘密のワード。いただきましたぁ~!」」

 謎の声がダンジョンフロア中に鳴り響いた。



「「おめでとうございまぁす」」

 カランカラン!

 金属の派手な鐘の音が鳴り響いたかと思うと。


 ご……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォッ!


 地響きを立ててダンジョン全体が揺れはじめる。



「ヤバいっ! 脱出(リレミト)……」

 私が慌てて呪文を唱えようとした途端、地響きと揺れが突如、ピタリと止まった。



「げ!」


 驚愕の声をあげ、立ち尽くす私と勇者ズ。


 ……私達の目の前に現れたモノ──それは()()()()光景だった。

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