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第59話 夜の公園は危険がいっぱい!?

……夜。

流れる雲が月光を覆い隠し、星々の影が地上に降ってくるような闇夜。


即席の見世物小屋が立てられた公園の木々が夜風にざわめき、不吉な風を運んでくる。


「グヘヘヘ……珍しい獣だぜ」

そんな闇夜に紛れ、黒づくめの怪しい男が合成獣ナミの檻に手をかけた。


「侵入者発見! 火炎壁(ファイヤーウォール)!」


ゴボゥッ!!


私の呪文で目の前の黒づくめの男があっという間に吹っ飛んだ。

「うぎゃぁあぁ~!!」

黒い服に炎が燃えうつり、派手に地面を転げ回る男。


あらぁ、上手に消火するわねぇ。


「何だ! お前は!?」

「何だってこの子の飼い主よ? 私のペットを盗もうなんていい度胸してるじゃない……」


「続けて地爆陣(アースブラスト)!」

「ゴワァッ!」

おや?

なんか炎が爆風にあおられて、メラメラと回りの公園の木々が盛大に燃えてるわね~、アハ!


ナミの檻に忍んできた盗人は爆風にあおられてどこかで頭を打ったらしく、黒焦げになって泡を吹いている。


……ついでにナミも黒焦げだわ。

ま、いっか。


「ねぇ、あんた。起きなさい?」

私は力を込めて爪先でその男の鳩尾をグリグリしてみたが、復活せず。

男はさらに呻いて、動かなくなってしまった。


……ボキボキって音がしたからかねぇ。

カルシウム不足かしらん。


「ちっ……もうちょっと役に立ってほしかったわ」

私は思案にくれた。

これじゃ計画通りにならないじゃないの……。


計画?

そう。実はこのコソ泥くん。


「あの見世物小屋は警備が緩いから盗み出すのは楽勝よ♪」という、私の流したガセを信じてやってきた間抜けな泥棒さんなの。


計画では、森中逃げ回ったコイツが火をかけたのを私が止めるシナリオだったんだけど。こんなに早くオネンネされたら予定が狂ってしまうわ!



ガサッ……。


そこへ焦げた草木を踏みしめて、こちらへ賑やかにやってくる複数の足音が聞こえてきた。


「ねぇ、ミナミぃ……」

「よっしゃ、ナイスタイミング! 火炎球(ファイヤーボール)!」

狙いすました私の一撃がやってきた奴らの足元に炸裂。市民の憩いの森をなぎ払う。


どぐぅごおーんっ!!


弾けとんだ炎の弾はあたりの木々に着弾し、炎と閃光を撒き散らしながら盛大に燃え上がる。


「……ちょっ、止めミナッ……」

「ストップ! 俺だオレッ!!」

「わぁあぁ~! あちっ! あちぃっ!!」

何か、詐欺グループみたいな台詞をはいて青い顔をしているイケメン集団にむかって私は指を突きつけた。


「盗人たちめ! 堪忍しなさい! とどめの氷柱壁(アイスクルウォール)!」


「はぁ? 何言ってる……!」

「ギャー、お助けぇ!!」

「だから俺たちだってば!」


ガキキーンッ!



……炎が踊り狂い、地獄絵図のようだった森が一瞬で静寂を取り戻した。




「ふぅ……いい仕事をしたわ」

我ながら綺麗に消火出来た、うん。……予定通り、ここらの森もまっ平らな広場になったし。

十分なスペースはこれで確保!


私、格安で大きな興業用のテントを建てられる場所が欲しかったのよね~。

ここのイベント広場はレンタル料金がやたらとお高くて、とても手が出なかったの。ウフフ……。



「さて。この氷どうしようかな~」

氷中花よろしく凍りついていたのは、私に言われるままこの公園に駆けつけてきた役立たず勇者トリオ。


ま、今回の勇者達の役割は盗人を役所に突き出す係だったんだけどねぇ……。


どいつもこいつも不細工な顔で凍りついているわ。ウォルは半目、フェズは顔が潰れてる。オーカーは黒焦げかぁ。


……このままにして展示しても、商品価値はない(カネにならない)わね。



しゃあない。邪魔になるから解凍しますか。


灼熱の輪舞(バースト・ロンド)!」

街灯もなく、暗闇に近い公園の雑木林の跡地でオレンジ色の光が弾けとんだ。


「どわぁあぁ~ッ!!」


シュウシュウと地面から水蒸気が立ちのぼる。

その地面には、黒装束の男と間抜け面した勇者三人が倒れ伏していた。


「うぅう……、一体……あんた何者なんだ?」

こそ泥が何とか意識を取り戻して呻き声をあげた。


「通りすがりの聖女よ」

私は親切に答えてあげる。


「聖女ぉ? 魔女の間違いだろ……?」

「「「俺達もそう思う……」」」

ダメンズ勇者が声を揃えて言った。

うるさいわねっ!


「「「フギャッ!」」」

「あら、長い足が当たっちゃったみたい。ごめんあそばせっ」

勇者ズは全員、向こう脛を抱えて踞った。


「お前が聖女様なんて詐欺だ! 聖女様っていうのはなぁ。こう、もっと清潔感があって……」

悶絶する勇者ズを見て、抵抗をあきらめた黒衣の盗人は泣きそうになりながら訴える。


悪かったわね。別に私は小汚くはないわよっ!

ちゃんと風呂にも入ってるし。


「……うんうん」

フェズが小声で相槌をうつ。


「そんな、むやみやたらに胸があって不潔な色気をプンプンさせてなくてなぁ!」

「ん?」

ウォルが怪訝な顔を作る。


「こう、胸はまっ平らで何も知らない無垢なちっこい女の子っていうのが一番、聖女としてグッとくるんだぞ!」

「へぇ?」

ニコニコと聞いているが明らかに、男の言葉を理解していないオーカー。


「そんな子の下着を盗むのが俺の最終目標! 究極の男のロマンなのだ~!」


「マロン……?」オーカー。

「ヤベエ……通報だな、通報」フェズ。

「それって、ロリ……」ウォル。


「よし、完全にクロ決定! コイツはそのうち犯罪者確定っ!」

私と勇者ズは、こそ泥、もといロリ泥に向かって冷たい視線を向けた。


「ということで音速の一閃(ソニックスパーク)!」


ちゅどーん!



かくして夜の公園に景気のよい音が響き渡り、ロリ泥と勇者達はまとめて夜空に打ち上がったのだった。

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