第57話 聖女のストレス解消法?
どっごぉおおんっ!
オレンジ色の光線の花が咲き、爆音があたりにこだました!
吹っ飛んだ建物の煉瓦の壁が一瞬で瓦礫と化して、ポッカリと穴をあける。
もうもうとあがる煙。
ペキン、と真ん中からへし折れる「便利屋ミナミ」の看板。
「……本当にあのクサい丘に行くヤツがいたとはな! 嗅覚がよほど鈍いのだろう……」
爆煙の中で呟かれる低い男の声。
「私を襲うなんて、イイ度胸してるわね?」
「何ぃっ!?」
煙とホコリの舞い上がる向こう、崩れた建物の外に身を屈めて潜んでいた男が驚愕の声をあげる。
そこに居たのは黒い全身タイツのような格好に、プロレスラーのような目だけくりぬかれた覆面をした手足の短い変質者!
硝煙のにおいがするところから、攻撃呪文ではなく、爆弾でも仕掛けたのだろう。
「どうして無事なんだ! あの爆弾は簡単に手足も吹き飛ぶ最新型の超小型爆弾だぞ!」
「あぁ? 無事じゃないわよ。人間様には適当にシールドが張れたけど、この建物を見なさいよ。ボロボロじゃないの。この落とし前、どうつけてくれる? 手足どころか、私があんたの内臓まで吹き飛ばしてあげようか?」
瓦礫に足をかけ、凍るような視線で居丈高に見下ろす私に黒ずくめの男が身を震わせる。
「ひぃぃぃっ! 女魔王……どうかお助けを……!」
「誰が魔王よ」
イヤイヤ私は男の覆面を剣先に引っかけて、ひっぺがしにかかった。
覆面の下から出てきたのは、予想通りギルドの受け付けに出てきていた中年男。
「やっぱりね……」
「何者なんだ、あんた?」
呆然と私を見る中年男。
「はぁ? 通りすがりの美女に決まってるじゃないのよ!」
「はぁ……」
勇者たちがいたら反論しそうだが、あいにくとまだ全員瓦礫の下で眠っているだろう。
息をしてるかどうかはしらないけど。
「プハッ! 何やってんだ、ミナミっ!」
瓦礫の山を押し退けて最初に出てきたのは、ウォルとロンサール。どうやら二人は壊された部屋で寝ていたようだ。
「あら、生きてたの。ウォル、ロンサール」
「……その台詞、どういうことだ? ミナミ……」
ウォルはひとしきり辺りをキョロキョロ見回す。ロンサールは私が踏み潰している男に気づいて、目を見張った。
ギルドで会った男だと気づいたんだろう。
「うわーっ、また派手にぶっ壊しやがって。それにそのおっちゃん誰だよ? ミナミ、おやじ狩りでもはじめたんか?」
「誰がおやじ狩りなんかするのよ……建物壊した犯人はコイツよ、こいつ。明日、衛兵に引き渡すから縛って適当に転がして逃げないように見張っておいて。ヨロシク~!」
私はアクビをすると、瓦礫を蹴り飛ばし、爆撃から無事だった部屋のベッドに倒れこんだ。
その間、瓦礫の下から這い出してきたオーカーとフェズもウォルとロンサールに合流したが、不器用な勇者たちは誰一人、上手く縄を結ぶことも出来ず。
不幸な中年男をグルグルの簀巻きに出来たのは明け方頃だったようだ。
……しかも、作業を終えると安心して全員が眠りこけ、その隙に、縄が緩くて肝心のおっちゃんに間抜けにも逃げられてしまっていた。
本当に役立たず勇者なんだからっ!
私は翌朝、寝不足の目を擦って「逃げられちゃいました報告」をする四人の勇者を腹いせに簀巻きにしてみたが、どうにもイライラはおさまらなかった。
簀巻きなんかじゃ、生ぬるかったわねっ!
全員、内臓くりぬいて売却したろかっ!
朝食からどす黒いオーラを撒き散らす私に、残りの能天気な勇者たちも今朝は誰一人、話しかけてはこなかったのだった……。




