第51話 ついに集合?
道端になんかうずくまってる黒い塊があった。
近寄ってみると人らしきモノのようだ。
私と呑気な勇者達プラス魔王とそのお供は、散々お世話になったモーベット屋敷を申し訳程度に修繕すると、獣人フォグルに教主ラスカスが封鎖していたシーモス山の迂回路を案内してもらってアッサリ山を抜けたのだった。
1日でヴェスタ王国に向かう街道沿いのそこそこ大きな町にたどり着いた一行は例によって、飯を寄こせの大合唱。
とりあえず、安い早い旨いの三拍子そろった飯屋つきの手頃な宿を探そうと、馬車を停車場にとめ、ブラブラと歩いていると道の端っこに倒れ伏す人物を見つけたのだった。
行き倒れか?
はたまた、酔っぱらいか??
何にしろ、これ以上の厄介事と馬車の人数が増えるのはゴメンだ。
私は冷たく、見ないふりをすることに決めた。
だが、ちょっと気になるのはその服装だ。
今時ないような赤い派手なマントに大振りの剣。典型的な勇者スタイルというヤツに見えないこともない。
もちろん、勇者でもなんでもなく、勇者風のマントを着たかった物好きなコスプレーヤーかもしれないが。
「……ぅうっ……」
行き倒れの男が呻き、身じろぎした瞬間、被っていたフードから顔がのぞいた。
「あーっ!!ロンサールじゃん!」
アイルのビックリしたような声が私の耳元で炸裂した。
イヤな予感的中。
「……アイル……か?」
あぁ、やっぱり。
最後の勇者、みーっけ。
冒険も困難もなく、アッサリ最後の勇者、方向音痴の無口なロンサールをやっと見つけたのだった。
「……うぅ……メシをくれ……」
「お前もか!!」
これじゃまた、食費が上がっちゃうじゃないのぉぉ……!!
「いや、アイル。きっと知らない人よ、他人の空似っていうでしょ?」
私はそういうと、スタスタ歩み去ろうとしたが、
「えっ、まさかの放置?」
「さすがミナミ!人デナシ!!」
「うわ、サイテー」
「まぁ、そんなものだろ。ミナミだし」
背後からポンコツ勇者達の罵声を浴びる。
うるさいのよ、あんた達!
「……とりあえず、回収?」
私は渋面で唸りながらロンサールを嫌々指さした。
「なんで、疑問符なのさ」
アイルが指摘してくるけど、嫌なもんは嫌なのよ~!
「ヨイショっと」
オーカーとウォルがデカいガタイのロンサールを馬車に運び込んだ。
「うぐっ!」
扱いが粗くて雑な二人だから、頭を盛大に床に打ちつけられるロンサール。
「全員揃うとかなり狭いなぁ……」
「ぐぅっ!」
ロンサールの足を踏んづけたフェズが文句を言った。
「狭いなら御者台行って兄さんと代わってきたらいいのに。あそこは広いよ~」
「おぇっ!」
アッシュがロンサールの背中を踏みながらニコニコ言った。
……あんたたち、ひょっとしてワザとやってない?
「狭い狭いっていうなら誰か馬車降りて!私は勇者全員揃って欲しくないの!」
「なんで?」
アイルが尋ねる。
「なんでも!!」
理由はあんた達に言ったってしょーがないからよ!
全員揃っちゃうとね……シナリオ通りだと訳のわからない恋愛イベントがやたらとはじまっちゃうんだよ~!!
しかも全員と私が。
全く、嫌なこった~!
しかも、いい感じになった人数に応じて近道とか私のチート能力とかが増えるはずなんだけど……こいつらといい感じになんかなるわけない。
しかも、一人とラブイベントを成功させないと城下町に入れないときた。
通行証を貰えるイベントが必須なの。
……カップルだったか、夫婦のふりをして申請するくだらないイベントなんだけどね。
本当にムダなイベントばっかり多いクソゲーだったわ。
致命的なのは、殆ど私が苛々してスキップボタンを連打したお陰で詳細を殆ど覚えてないってことなのよね。
「ぉへぶぅっ!!」
気がついたら、思いっきりロンサールの顔をギリギリと私も踏みつけていたようだわ……。




