第49話 ナミは人気者?
「「ナニコレ」」
モーベット屋敷にナミを連れて戻ったら、予想通り退屈していたダメンズ勇者に囲まれた。
「うわ、不味そう……」
ウォルがナミをつつき回す。
まだ、喰いそうな奴、ここにも居たわ……。
「食べちゃダメ」
私の後ろに怯えて、カタカタ震えるナミ。
「やめときなよ、ウォル。絶対腹壊すって」
冷たくやっと回復したアイルが突っ込む。
「使うなら鍋かなぁ。毛皮が邪魔だからさばくの大変そう……」
真剣な顔で悩むアッシュ。
「そうですねぇ。蒸し焼きとかの方が手間がかからないかもしれませんね」
ニコニコ兄が同調する。
あんたたち、本当に雑食。胃腸が丈夫でウラヤマシイッ!
「食べ物じゃないから、この子」
「え~っ、じゃ何か役に立つのか?」
お前が言うか?オーカー。
「ま、何か芸の一つぐらい出来るんじゃないの?そんだけゴテゴテくっついてるんだし」
フェズが口を挟んだ。
「よし、やれ。シロウ」
ウォルが囃し立てた。
何か、名前変わってるし。
「芸!?」
部屋の隅でフォグルが顔色を変えた。
そうよね。私もよ。ご飯前には見たくないわ。
ナミは喝采を浴びて得意気に、口を大きく開ける。
「おお~!良いぞ。なんかやれ~!」
「やめなさい!ナミ!!」
私はナミの頭を床に叩きつけた。
「キュキュ~ン……」
ナミは私にどつかれて切なく鳴く。
この、合成獣。意外に丈夫なのよね。
大体、そんな甘え声では私は誤魔化されません!
「何だよ、ミナミ。ケチ!つまんないの!」
アイルがブーブー言う。
「火でも吹けたらサーカスに売れるかもしれないじゃないか~」
ウォルも口を尖らす。
「ケチじゃないわよ。この子の技は家の中でやると危険なの」
私は、ため息をついて、わざとらしく言ってやった。
「え?なに?そんな凄い技もってるの?このチビ」
ほらほら、フェズも食いついてきた。単純勇者どもめ。
「そんなに見たかったら、皆で庭で見てきたら?」
私はナミを抱き上げて、ポンとアッシュに渡した。
「うわ~、毛はフワフワだけど肉は固そう」
「キキューっ!!」
まだ料理する気だったのか?アッシュ……。
「よし、庭に行こーぜ」
ウォルを先頭にゾロゾロと庭に出ていくダメンズ勇者達。
「あれ?ミナミは行かないの?」
アッシュが不思議そうに聞いた。
「私はいいや。洞窟で見たし」
ソファーに座って私はゆっくりとお茶を飲んだ。
「フォグルはどうします?」
「俺も遠慮……」
レドの誘いにフォグルも首をふった。
ソファーに腕を組んで座ったまま寝ているカーディナルには流石のレドも声をかけず。
「「いってらっしゃい」」
パタン、とドアが閉まった。
「静かねぇ」
私は冷めかけた紅茶のおかわりを注いだ。
「ミナミ、人が悪いな」
フォグルが呆れたように言った。
「ご飯前に室内であれをヤられるよりマシでしょ?」
「違いない」
フォグルはゲンナリした顔で窓の外を見た。
「「「おぇ~!ヤメロ~!!」」」
勇者ズの絶叫が響き渡る。
「始まったな……」
「こっちくるなぁぁぁ~!」ウォル。
「俺に吐きかけるんじゃないっ!」フェズ。
「やだやだぁ、気持ち悪ぅ!」アイル。
「ドンドン出てくるなぁ、気色悪い○ロ……」感心したように言うのはオーカー。
「うぇ、くっさぁ。臭いがうつるぅ」アッシュ。
「もう充分ですよ、ナミ。ありがとう……うーん」
レドが悩んでいるようだ。
「どうしたの?兄さん」
アッシュが涙声で聞いた。
「何かスイッチが入っちゃったみたいで全然聞いてくれませんねぇ」
のんびりとレドが答える。
「ええ~っ!!」
「やだ、やめさせてよぉぉぉ~。ミナミぃ!早く来てぇ!!」
アイルの絶叫が響く。
キャーキャー、ドタドタは終わらない。
「なんか、ナミ。張り切ってるみたいね」
「……ご挨拶みたいなもんだろ」
「多分、これであの子を食べる気なくすわね」
「そうだな……」
フォグルと私はゆっくりとお茶を啜ったのだった。




