第4話 発見!初モンスター?
「ねぇねぇ、ミナミ姫。いつになったらあの洞窟に行くの?」
「あぁん?」
無邪気なアイルの問いに最高潮に不機嫌な顔で私は振り向いた。
「げっ、その顔コワッ」
オーカーが思わず呟く。
「元々私はこういう顔よ。文句があるならついてくんな!」
「ほらぁ、だからミナミ姫に話しかけちゃダメっていったじゃんか」
アッシュが私に吹っ飛ばされないように警戒してオーカーを盾にしながら、アイルを諭す。
「だって、あの海の洞窟に魔王城の手がかりがあるって」
ぶーっとムくれてアイルが言った。
「あ~、あの湯あたりして倒れてた老人が言ってたやつか」
オーカーがポン、と手をたたく。
「老人クラブの秘湯巡りからはぐれて倒れてた、昨日のご老体だろ?あれこそ信憑性怪しくないか?あの洞窟、昔から魔物の巣だって言われてるところじゃないか」
「でも、海賊の隠された宝とかあるかもじゃん?宝石の一つも転がってないかなぁ。僕、そろそろ新しい服が買いたいんだよね~」
アイルが自分の冒険者の服を引っ張って言った。充分新しそうだ。この無駄遣い勇者め。
「え~?次は鎧的なものでも買うの?勇者っぽいじゃん!」
アッシュが羨ましそうに瞳をキラキラさせてアイルを見た。
「まさかぁ、そんなの重くなるだけだし、デザインもなんか時代遅れでダサいよ~。僕、暑いのもやだし~。どうせなら軽いのがいいなぁ。高いんだけど、貴族の服とかフワフワっぽくない?」
「アイル、そんなお金あるの?」
アッシュが目を見開いて尋ねた。
貴族の服は初期装備である旅人の服の十倍以上のお値段がついている高級品。はじまりの村であるティント村の雑貨屋や防具店では取り扱いがなく、そこそこ大きな町まで買いに出なくては手に入らない。
「ないよ」
アッサリ答えるアイル。
「じゃあ、どうやって買うのさ?」
「それは、ミナミ姫が魔王を倒した後に払うから、って言ってツケで買えば良くない?一応、僕たち勇者だし」
「へー勇者の買い物って、そんなものなんだぁ?便利だねぇ」
感心したようにアッシュが相槌をうつ。
コラぁ!
まてまてまて~っ!
本当にゲームと全く同じ展開だよ。
そういえば、ゲームの中でアイルにどれだけ道中、勝手に金を使われたことやら……。
「ちょっとちょっと!私もお金ないんだからね。ツケ払いなんかにしたら、アイル!あんたを売っ払うわよ。買うなら自分の内臓の一つや二つ、覚悟して買いなさい」
「ハイ……」
私に脅されてしゅん、とするアイル。
暫くはこれで大人しくするといいけど。
ったく、コイツら全員を終盤まで連れてくしかないのが頭痛い。居ないと必要なイベントが出現しないようになってるの。
全く!
私は幼稚園児の引率の先生じゃないのよっ。
「あれ?ひょっとしてこれ、海の方向に向かってない?」
アッシュがキョロキョロと見回す。
「ああ、でも洞窟方向の道に行くには曲がるポイントを通り過ぎたみたいだが」
道標を確認しながら呟くオーカー。
「え~、そっちの道いくのぉ?舗装されてないじゃん。泥でおニューのブーツが汚れちゃう~」
何故、汚れて困るものを履いてくるんだ?アイルよ。
人の気も知らず、お気楽三人の勇者たちは ワイワイ言いながら私についてきていた。
この初めの三人だけじゃなくて、またこれからこの先、もっと騒がしい勇者を拾いにいくのかと思うと、私の足取りが泥のように重くなる。
「あ、何かミナミ姫暗い…」
この三人の中で一番、人の顔色を伺うアッシュが突っ込んだ。
「まだ、半時も村を出てから経ってないのにね」
「長い道中楽しまねば、あっ、モンスターか?!」
村から出て、海に近く人里離れた場所を歩いていると洞窟の魔物の巣からはぐれたモンスターが現れることが稀にあった。
オーカーが何か見つけたようだ。
お気楽勇者たちに初めて緊張感らしきものが走った。




