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第46話 転職のススメ!

「ひょっとして、お前。フォグル……か?」

モーベットさんが嬉しそうにフォグルに駆け寄った。

「モーベットか!久しぶりだな」

フォグルが獣耳を伏せて、破顔した。


あら、まさかの知り合い?


「心配してたんだ。大きくなったなぁ」

「まぁ、昔はガキだったから……モーベットは老けたな」

「ハハハ。そりゃそうだ。何年たったと思ってる」


「フォグル、知り合い?」

「あぁ。ガキの頃に世話になった」

「ここの屋敷の前の持ち主がフォグルの母の父親。つまり、フォグルの祖父なんですよ」

「へぇ~」


「モーベットさんは、この山のフェンリスがフォグルだって知ってたんですか?」

家事をこなすうちに、モーベットさんとすっかり仲良くなったアッシュが質問する。


「いや、知りませんでしたが……もしかして、とは思ってました。昔、シエナ……フォグルの母親が山に迷いこんで魔物と恋に落ち、子を産み落とすと同時に産褥で亡くなりました。そして、その子どもには狼の耳と尻尾がついていたのです」

「あぁ、それが」

「フォグルです」

勇者ズは一斉にフォグルを見た。


「シエナの父親は村人から逃れるようにこの山の麓に屋敷を構え、フォグルを育てました。私は、彼の祖父の生前にこの屋敷でフォグルと会ったことがあるのですよ。その縁で彼の祖父が亡くなる前に、この屋敷の管理を任されたのです」

「なるほど……」

勇者一同が、フンフン頷いた。


そうでもなければ、こんな屋敷で住んでいるモーベットさん、怪しすぎる。



「それで、フェンリスが生け贄要求するのは怪しいって最初から言ってたんですね」

「はい」


「大体、我ら魔族は基本人間なんぞ喰わん。愚かな低級者が面白がって喰らうことは稀にあるかもしれんが、真相は殆ど人間同士の争いだ。魔族のせいにすると便利だからな」

カーディナルが面白くなさそうに口を挟む。


「は?我ら?」

ウォルテールが突っ込む。

「なんだ、人間」

赤い瞳でカーディナルがウォルを睨む。


「おにーさんも、人間じゃないの?」

フェズが尋ねる。


「だから、我は魔お……」

「ハイハイ!!ストップ!!」

私はカーディナルの口を塞いだ。


「なんだ、ミナミ?」

「ラスカスから助けてくれてありがとう!いいのよ、何も言わなくて!!貴方もフォグルも大変だったわね!」

「いや、別に何も大変ではなかったが……」


(魔王とか人間の前で言わないで!パニックになるでしょ。わかった?じゃないと連れていかないわよ!!)


カーディナルの耳元で私は捲し立てた。

「わかった。言わなかったら我を連れていくのだな?しかと聞いたぞ」

嬉しそうにカーディナルは、私を抱き寄せて頬擦りした。


「いちいち抱きつかないでよ……」

カーディナルを押しやるが、びくともしない。

今度は膝の上に乗せられてしまった。


なんか、勇者ズの視線が痛い……。

しょうがないでしょ、振り払えないんだから。


まぁ、ある意味魔王斬のチャンスかもだけど、よけられたら屋敷ごと潰れるしねぇ……。う~ん、悩み処だわ。



「え?このミナミにベタ惚れのおにーさん。フォグルの仲間なの?」

アッシュがフォグルとカーディナルを交互に見た。


まぁ、魔族だから何となく雰囲気は似通ってるところはあるわね。


「失敬な。我は番犬の仲間などではないぞ」

「……どういう関係?」

「まぁ、フォグルのご主人様、かな?ねぇフォグル」

フォグルは、私の言葉に無言でブンブンと縦に頭をふった。


「まぁ。そういうことだ」

私を抱き寄せて膝にのせたまま、椅子にふんぞり返って座るカーディナル。


「めっちゃ偉そうだな……こいつ」

フェズが呆れたように言った。

「フォグル。サーカスにでも捕まって、こいつに売られたんか?」

ウォルが呟く。


「そんなことより、明日、洞窟とダンジョンに魔石を探しに行こうと思うんだけど、行きたい人~?」

「……」

私の呼びかけに無言になる勇者たち。



だよね。アイルがボロボロで帰ってきてるの見てるから、余計立候補はないかな。


まぁ、居ないなら私一人でいいんだけどね。


まだ残ってるかもしれない人質さんの誘導とか、面倒な後片付け要員がいると便利かとも思ったんだけど。

奴らは連れてく方が手間かもだしなぁ……。



「僕、ご馳走作って待ってるね」アッシュ。

「まだ、庭の修繕が途中で」オーカー。

「なんか、腹が痛くなってきた」ウォル。

「二日酔いで、頭痛いんだよな」フェズ。

「……馬の調子が悪くて、手当てをしてあげたいのですが良いですか?」レドグレイ。


「ふん、こやつらの供などいらんだろ。ミナミ、我がついていってやるぞ」

「はぁ?あんたが着いてくるのはオカシイでしょ!」

魔王倒すためのアイテムを魔王連れて探しに行くのって……あり得ない。


「なら、フォグルも来い。我は二人っきりが良かったのだが……」

「そういう問題?」

フォグルに拒否権があるわけはない。無言で頷くフォグル。


「フォグル、お前はミナミに手を出すなよ?舐めるだけでもダメだからな」

「カーディナル様の後で交代も?」

「交代もダメだ」

「飽きたら代わって下さい」

「残念ながら暫く飽きることはないぞ」


はい?ゴニョゴニョ一体、主従で何の相談?


あなた方、いったい何処へ何をしに出掛けるおつもりかしら?



「え、あんた、ミナミと行ってくれるのか?」オーカー。

「ミナミと行くと大抵、盾にされるかモンスターの餌にされるかだから頑張れよ」ウォルテール。

「イヤイヤ、踏み台とか、わざと呪文をぶつけて飛ばされたりするかもしれないぞ」フェズ。

「あるあるですね」レドグレイ。

「ご馳走作って待ってますねぇ」アッシュ。


本当にヤル気ゼロ、役も立たない勇者達だこと……。


全員転職しろ!転職!!

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