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第45話 とりあえずの帰還!

「で……?」

「どうして、ロンサールじゃなくて、またイケメン二人増えてるの?」

「……私に聞かないでくれる?」

アッシュの無邪気な問いに、頭を抱えたまま答える私。


夕食の皿が足りない、とレドグレイが慌てて二人分の追加を用意するために走っていったようだ。


相変わらず、レドはマメ過ぎる。

コイツら魔族に飯なんか要らないのに。



とりあえず、神殿に居た女たちと強制労働中の男たちを解放して一旦、モーベットさんの屋敷に帰って来たアイルと私。

アイルは山歩きにすっかり疲れ果てて、フォグルに背負われて下山してベッドへ直行してしまった。


そのまま何故だか、私にベットリと絡みついてる魔王と、それに従うフォグルが食堂についてきていた。

フォグルは山を降りてから、獣耳が人目につくのを嫌って帽子を深々と被っている。


可愛いから出せばいいのに……。


「もう!くっつかないでよっ。暑苦しいっ!」

カーディナルは私に乱暴に振り払われてもニコニコして嬉しそうだ。殴られても懲りずに、うっとりと何度も私に抱きついてくる。


こいつはアホか?

仮にも魔王だろ?


「いやぁ、こんなに近くで毎日ミナミを眺められるなら、もっと早くこうしておけば良かった……」

「おい。滅茶苦茶、惚れられてるじゃね~か。大丈夫か?お前」

ウォルが呆れたようにカーディナルを眺める。


「心配無用だ。ミナミは誰にも渡さんぞ」

カーディナルの赤い瞳が妖しい光を帯びて、勇者たちを睨みつける。


……ちょっとぉ、こんなところで流血沙汰とかやめてよね。


「もお、うるさぁいっ!早く全員座って、さっさと食べなさ~いっ!!」

「はいぃっ!」

私の怒鳴り声に全員、さっと食堂の席につく。


「すげぇ、カーディナル様まで座ってる……」

フォグルが呟く。


「いただきまぁす!」

あっという間にアッシュ力作のディナーが男たちの胃袋に消えていった。



ニコニコしてそれを見ているモーベットさん。

「いやぁ、皆様お疲れ様でしたねぇ。沢山食べてくださいね」

いやいや、モーベットさん。ご存知の通りコイツら留守番してただけですよ?



「それで、ロンサールと魔石は見つからなかったのか?」

真面目なオーカーがデザートを待っている間に尋ねてきた。


そうなのよ、ロンサールはまだしも、魔石はフォグルが調べても見つからなかったの。


「うん。神殿になかったから、ダンジョンか洞窟の中だと思うのよね」

「あれ?生け贄って全員解放したんじゃないの?」

アッシュがスープをフーフー口に運びながら、聞いてきた。

アッシュ、珍しくおかわりしたのね。猫舌なんだから、冷製スープの方にしたら良かったのに……。



「神殿にいた人たちはね。洞窟に居る人たちはまだだわ」

「あれ?でも、ボスをやっつけたんだろ?」

フェズが首をひねった。

「ボスが生け贄を集めてた教主……?」

「みたいね。男も女も資金源に奴隷として売られていたみたいよ。男たちは神殿で働かされていたわ」

「何の資金なの?」

「さぁ。フェンリス神魔の会とかいうデカい組織が神殿を作っていたみたいなんだけど」

「何目的?」

「さぁ?教主はもういないからねぇ……」

「え?逃げたの?」



「あやつなら我が、異空間に棄ててやったわ」

得意そうに口を挟むカーディナル。


「カーディナル。あんたが話すとややこやしくなるわ!余分なことは、言わないで貰える?」


「は?」

「異空間?」

案の定、カーディナルの言葉にアッシュやフェズが固まる。


「いいの。気にしないで」

「はぁ。ところでコイツら何者なの?ミナミ」

とりあえずお腹一杯になったウォルテールが、今頃になってやっと、胡散臭そうにカーディナルとフォグルを露骨に眺めた。


随分とオソイデスネ。今更かい!?


「助けた生け贄さん達じゃないんですか?大変でしたねぇ」

レドグレイが人の良い笑顔を向ける。


「我は生け贄などではない」

憮然とするカーディナル。

「だから黙ってて」

私に睨まれて、カーディナルは不満そうな顔で口を閉じた。


「もう、帽子をとってもいいわよ。フォグル」

私に言われて、フォグルは深々と被っていた帽子をとった。


「その耳……!」

ピョコンと、フォグルのサラサラの銀髪の間から飛び出した狼耳に皆の視線が集まる。


「フェンリス・ウォルフ……?」

「本物なの?!」

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