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第41話 番違い?

(つがい)じゃない?」

「そうよ、私は別に何も感じないもの」

フォグルは、ペタンと地面に放心状態で座り込んでいた。


私に派手に吹っ飛ばされたアイルは気を失っている。

フォグルの下敷きになったので、余計に衝撃だったようだ。


「正気に戻った?」

「あぁ、さっきは頭が真っ白になった。抱きつかれてから、悪いがあまり覚えていない…」

フォグルは伸びているアイルを不思議そうに見た。


「私、あなたに首筋に牙をたてられそうになったわ。無意識に番認定しようとしたでしょ?」

うっすらと私の首もとに残る二本の犬歯の跡をフォグルに見せる。


ちょっと危なかった。

殺気はなかったけど、食いちぎられたら終わりだったわ。


おかげで思い出したんだけどね。フェンリスのイベント。

確か、主人公の魔力に酔ったのを番だと勘違いして……迫ってくるヤツだ。多分さっきの回復が酔わせちゃったんだと思う。


「すまない……てっきり番かと」

「あのね。推測だけど、さっきフォグルが反応したのは私の魔力に反応したんじゃないかと思うのよね……」

「魔力?」

「そう。フォグルが反応したのは、私が回復をかけた後。それまでは別に無反応だったでしょ?本当に私があなたの運命の番なら、会った瞬間から発情状態になるハズじゃない?違う?」

「確かに、言われてみれば。そう……だろうか?」

「今、試してみる?」


私はフォグルを手招きした。


フォグルは狼耳を伏せて恐る恐る、近寄ってくる。

「攻撃とかは無しだぞ」

妙に怯えてるわね。


あぁそっか。さっき私、この子に魔斬撃叩き込んだっけ。


「しないわよ。襲われたら自己防衛はさせてもらうけど。あなたも頸動脈ガブりはやめてね」

「それは……さっき記憶がなくなったから保証できないが番を俺が害することはない、と思う」

「だから私は番じゃないってば。はい」

私は両手を広げると、さっきと同じように、ゆっくりフォグルを抱きしめた。


スンスン……。

私の首筋の辺りに顔を埋めたフォグルがしきりに匂いを嗅いでいる。


くすぐったい。


「ひゃっ、何してるのよ?」

フォグルは私の首筋を丹念に舐め回していた。

「うん。これはこれで普通に雌に発情する感じで悪くないけど……さっきみたいな強烈な匂いじゃないな」

「わかったなら、舐めないで!」

「んん~、味かと思ったんだけど」

フォグルは私の首筋を唾液でベタベタにして離れた。


情けない顔をして、狼耳をしょげたように伏せているフォグルを見ていると昔、飼ってた犬に顔中舐め回されたことを思い出す。


「ほらね。違ったでしょ?」

「そうだな。悪かった。俺もあんな風になったのはさっきが初めてだから訳がわからないんだが。凄い痺れてクラクラして、意識がとんだ……」

感覚を思い出したのか、顔を赤くするフォグル。うん、照れるケモ耳可愛い……。


「それは、ヤバいわね……番の感覚って皆、そうなのかしら?」

「さぁな。俺は番に会ったことがないからわからん。大体、同族自体にも殆ど会ったことはないし」


「ん~…背中痛いよぉ、ミナミぃ」

アイルがムックリ起き上がった。


「あ、狂犬がまだいるじゃん!」

アイルは私の側に立っているフォグルに冷たい視線を送る。

「こいつ、発情して襲いかかってきたのに。大丈夫なの、ミナミ?」

「多分ね。フォグルはさっき、魔力に酔っただけだと思うから」


軽くアイルに説明した。

「ふ~ん、運命の番ねぇ。番じゃなくても、魔力がマタタビみたいになっちゃうのか。面倒だね」

「さっき、攻撃は大丈夫だったでしょ?距離があればいいのかも。さっきみたいに近くで直接回復とかしなければ大丈夫のハズ。アイル。それ、やめなさい」


しっし、と犬を追い払うようにフォグルに手を振るアイルをなだめて私は立ち上がった。


元々薄暗かったが、さらに陰ってきた。

そろそろ、日が暮れる。


「さて、さっさとラスカスとやらを片づけるわよ。フォグル、奴の居場所はどこ?」

「多分シーモス山の頂上の神殿に居るはずだ」

フォグルが自信なさげに答える。


「本当お約束というか……ラスボス的な奴って高いところが好きよね。登る方の身になってほしいわ。一応聞くけど、抜け道的な所か移動手段は?」

「ないな」

「うぇ~、これ登るのぉ?」

アイルは結構急な道が続いている様子の山道の上の方を見上げて、ブーブー文句を垂れた。

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