第40話 モフモフの誘惑!
「……ゴフッ……」
地面に叩きつけられるフォグル。
「ミナミって本当に冷酷魔王~。ワンちゃん可哀想」
アイルが何か言ってるけど無視。
「手加減したわよ?フォグル、魔石を私に寄越しなさい」
「残念だったな。俺を倒しても魔石は手に入らないぞ」
口元を拭いながら、フォグルが立ち上がった。
あら、意外にタフね。
手加減し過ぎたかしら……。
「じゃあ魔石はどこ?」
「ラスカスだ。魔石はあいつが持っている」
「なんとかの会、ってヤツの教主?」
「そうだ。魔石をダンジョンから手に入れて、俺を封じようとしてきた。幸いかどうかはわからんが、俺は半分人間だから完全には封じられなかったようだ」
「フォグル、あんたの一族ってカーディナルの眷族?」
「……そうだ。どうして、カーディナル様のことまで知っている?」
そっか、カーディナルは伝説の魔王って知られてるだけで、この世界で名前まで知ってる者は限られるんだっけ。
「あんまり関わりあいたくない、知り合い?」
「知り合い?ありえない話だ。あの方は魔界に長年封じられてるはず……全くお前らは良く分からんな。ただ、勇者というのは本当のようだ、ということはわかった」
フォグルはふらついて、地面に座りこんだ。
うん、やっぱり魔斬撃。しっかり効いてるわね。
「私は勇者じゃないわよ」
そこはキッパリ否定。だって役立たず勇者と一緒にされるのは嫌すぎる。
「だから、勇者は僕だってば!ミナミは魔王みたいなもんだよ」
「何?魔王だと……?」
フォグルが目を丸くして私を見つめた。
「そう。だからミナミには逆らわない方が君のため。そこら辺の魔物よりよっぽど怖いからね。心臓に毛は生えてるし、ケチだし、人使い荒いし」
「アイル~?暫くクリーン、封じてあげようか?」
「えっ、そんな~やめてよぅ。ミナミ姫っ。ええと、ミナミは美人で優しくて、えげつなく強くて、容赦のない男前な、魔王より人でなしの聖女姫だよっ」
余程、クリーン封じは困るのか、必死でヨイショしてくるアイル。
「あんた、後半全然褒めてないわよ……」
魔王より人でなしって、なんだ……?
「なんと…。伝説の聖女姫……?本当に実在してたのか。それで魔石集めを……?」
「そう。仕方なく集めてるの。じゃ、ラスカスとやらの所に案内してくれる?さっさと魔石回収するわよ」
「それは構わんが……あいにくと案内したくても、誰かさんのお蔭で足腰が立たない」
フォグルは地面に手足を投げ出して転がった。
「気合い」
「ムリだ」
「根性」
「ムリだと言っている」
「最後の命の力を振り絞れば、移動の魔力ぐらい絞り出せるでしょ?」
「お前、鬼だな……俺に死ねってことだよな?それ。本当に聖女姫なのか?」
フォグルが青い顔をして私を見た。
ちっ、根性ないな。命ぐらい削れ。
「じゃ、アイル。おんぶしてやって」
「え~、ワンちゃんの方がデカいから僕じゃ潰れちゃうよ。いつもみたいにミナミが縛って、引き摺りながら道案内させれば良いじゃん」
アイルめ。人聞きの悪いことを。
「この子、魔力強いから人間と違って長時間押さえつけるの、面倒くさいんだよね」
「そっか、ワンちゃんB級だっけ」
「仕方ない。自力で歩いてもらうか」
私は地面に転がってるフォグルにかがみこんだ。
「ちょっと分けてあげるから、ちゃんと案内するのよ?」
動物も魔物も躾が肝心。
じっと目をあわせて、言い聞かせた。
反射的に頷くフォグル。
本当にフォグルの真っ直ぐなアイスブルーの瞳が綺麗なこと。
顔立ちもモーベット屋敷に残してきた勇者たちと比べても、半分魔族なだけあってピカイチに整っている。
何よりもポイントは、ぴよこんと出ているケモミミ!
私は半身半魔の妖しい色気に当てられながら、モフモフした銀色の耳に触りたい誘惑に耐えた。
「回復の風」
フォグルにそっと抱きついて、全身に魔力を送ってやる。
ま、これで動けるようになるでしょ。
「あ、あぁ……」
回復したハズのフォグルが真っ赤になって、プルプル震えていた。
「ん?どうした?まだ歩けない?」
回復量足りなかったかしら。
「お前……堪らなく良い匂いがする……!」
突然、ガバッとフォグルに抱きつかれ、私は地面に押し倒された。
荒い息とともに、フォグルの鋭い牙が首元に当たる。
「ヤバっ、コイツ狂犬じゃん!ミナミっ」
「疾風弾!!」
慌ててフォグルを引き剥がそうとするアイルごと、後ろの木立に吹っ飛ばした。




