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第3話 ラスボス登場!早くない?

「イベント、起こらないわね」


村の外れの温泉に着いた私は周りを見渡した。


ここに踏み入れると、言い伝え的な魔王城の場所の手がかりを地元の老人から聞くイベントが発生するんじゃなかったっけ?


温泉だけでなく、ゲームのシナリオ通りに進むのかも知りたくてここにやって来たものの……。


誰も居ないじゃない。



私は爪先からお湯にそっと入った。



「つまらんな~。ここは全部脱いで、見られたところで恥じらうのが定番だろ?」

みょーに最近、聞き慣れた声がした。

「足湯の何が悪いのよっ」


そう。足湯。

浮腫んでる時には、本当にオススメよ。


他のヘタレ勇者がまた呼びに来てもイヤだから、とりあえず足だけ浸かることにしたの。



やっぱりここでイベント発生?


とても聞き慣れた声でのんびり話しかけてきたのは、長いシルバーブロンドに紅い瞳の……魔王!


「カーディナル……!」

「会えて嬉しいぞ、ミナミ!!」


私はガバッと魔王に抱き寄せられ、頬擦りされた。


「ちょっと待ったぁ!」

「なんだ?」

いつの間にか横抱きにされ、目の前に妖しい美貌のアップが迫ってきているのを両手で必死に押し退ける。


「何でここにいるのよ!」

「何でって……ミナミに会いに来たんだが?」

長い髪をかきあげる魔王。

ちょっとナルシスト入ってる?コイツも残念なイケメンに即分類!


「あのさ~、最初の村から勇者集めつつ、あちこち這いずり回った挙げ句、最果てのさいごの街から、またよく分からない洞窟や祠を通って、最終的に魔界の奥の魔王城の最上階でやっとあんたとはご対面!ってなるハズじゃなかったの?」

私は素朴な疑問を魔王にぶつける。


「だって、待っててもどうせ来ないだろ。お前」

まぁ、さっきまで確かに私は全く魔王城までなんかサラサラ行く気はなかったけどね。


でも、今気づいちゃったの。


ほら、目の前に魔王。いるじゃないの!


「……ねぇねぇ?ここで、あんたを倒したら魔王城まで行かなくてもエンディングで私、即帰れたりするのかしら?」

私はそっと最大魔法撃の構えに入った。


「やれやれ。最初ぐらいゆっくり口説きたかったのだが。私の思い人は気の短いことだ……」


「うるさい!魔王斬(デビルスレイプ)!!」

私は至近距離からカーディナルに斬擊を放つ。


「ちっ……」

捉えたと思ったのにギリギリでかわされてしまった。


また向こうの山の形が欠けてるような気もするが、まぁそんな些細なことは気にしないでおくことにする。うん。


それにしても、やっぱり魔王は素早さが高い。

これじゃあ、体力なくなるまで打たされて終わりだわ。こないだまで最終ボス戦で繰り返してたパターンのループに嵌まっちゃうじゃないの。


「なぁ、そんなにあのご褒美勇者に『よくガンバったね、ミナミ』って言って欲しいのか?」

呆れたように、ヤンキー座りで魔王が私に屈んで話しかけてきた。


「そうよ!そのために毎晩、あんたに付き合ってたんだからっ。ここでリアルの彼に耳元で囁いてもらってこんな世界とはおさらばしてやるわ!」

「あんなヤツのことは忘れて、私と共に城に来い。毎晩私がミナミにたっぷり付き合って、何も考えられなくなるまで褒美をやろう」

「お断りよ、エロ魔王!聖魔斬ホーリーエビルスレイプ


「本当に素直じゃないなぁ……」

また、身軽に渾身の魔法撃を簡単にかわされた。


うぅ~っ!どれだけ私の魔力が高くても、当たらないと意味がないっ!


「くっ……」

「そうそう、言いそびれたがここで仮に私を倒しても、お前が気の毒な老人を虐殺した咎で村から追われるだけだぞ?」

「は?」

「私の本体はまだ魔王城だ。今は地元老人の肉体を借りて、お前に話しかけてるだけ。お前以外には我は70代の老人に見えるはずだ」


やられた!

いつの間に幻惑にかかっちゃったのかしら?

……やっぱりイベント通り、魔王城の道筋を伝えにじいさんが来てたってことなんだ。基本的にはシナリオ通りにストーリーが進むってことなのかなぁ……。


「ちょっとぉ、カーディナル!私に地元老人抱きつかせないでよね」

「つい、感情移入してしまったわ、許せ。今度は実体でお前が満足するまで抱いてやろう」


「そーゆーのはいらないから。それより、どうやったらさっさと元の世界に帰れるか教えなさいよ」

「クックック……教えて欲しかったら我が城まで来ることだな」

「だ~か~らぁ~、それはヤダって言ってるでしょっ!」


「いくらイヤだと言われても、この世界に居る限り、お前とて運命からは逃れられぬよ。ここから抜け出したかったら、あの時と同じエンディングを迎えることだな」


「そんなぁ……」

絶望感のあまり、私はガックリと膝をついて脱力してしまった。

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