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第38話 獣人フォグル

「フォグル様!?」

凍りつくような低温の声を聞いた男達に怯えが走った。

私の上に乗っかってる男も固まって動かない。


木々の間の暗闇からゆっくりと出てきたのは、白銀の光を纏った長身の男。


アイスブルーの瞳が冷たく私達を襲っている男達を射るように見据えていた。


先の尖った耳が銀色の塊から突き出ている。


獣人……?


もしかして、こいつがフェンリス?



「何をしている、と聞いている」

「……は、はい。申し訳ございません、決してあなた様の獲物を横取りしたわけでは……」

「消えろ。目障りだ」

ビリビリと肌に響くような、絶対零度の声色が響き渡る。


「はっ……このことは何とぞラスカス様にはご内密に」

リーダー格の男が進み出て、カエルのように這いつくばって懇願する。


「消されたいか」

無表情な銀髪犬耳の男の冷気が増す。


「ひぃぃっ……!」

リーダー格の男は、私達を押さえつけていた男達もろとも後ろに後退り、転がるように洞窟の奥へあっという間に消えていく。



「ミナミ~っ」

アイルは片方の袖を千切れられ、メイド服は上半身を肩まで引き下げられて、スカートも破かれて捲りあげられた無惨な姿で半泣きになっていた。


「大丈夫?」

私は立ち上がると埃を払い、震えるアイルに自分の上着をかけた。

だって、明らかにレイプ事後みたいなビジュアル……。


ギリギリのところで、肝心なところは剥かれていないから更に、それが淫靡で普通に目のヤリ場に困る。もしあのまま男だってバレても勢いで犯られそうなぐらい扇情的だった。


くっ、男のクセに。なんでこんなに色っぽいのよ、アイル……。



「ケガはないか?」

「おかげさまで。助けてくれてありがとう」

私は綺麗な水色の瞳を真っ直ぐに見返した。


「いや、礼には及ばない。俺の庭で盛っていた獣人(ゴミ)が不愉快だったから追い払っただけだ」

「その獣人(ゴミ)なんだけど、知り合いなの?あなたのことを知っている、というか怯えていたみたいだけど?」


「ほぅ、お前。俺が怖くはないのか?」

「全然。怖くなんかないわよ。あなたはフェンリス・ヴォルフ?」

「いかにも。俺はフェンリスの一族のフォグル」


ニヤリと笑った口許から人より大きめの犬歯がニョキっと覗き、銀色の耳がピン!と立つ。

何よ、わざと牙なんか見せちゃって。威嚇してるつもり?


可愛いじゃないの。

細マッチョの体にケモミミって本当ギャップ萌えよね。

ウォルじゃないけど、捕まえたらマニアには高値がつくこと間違いなしだと思うわ……。


「わ~、ミナミまた悪いカオ……絶対怖いのはミナミの方だよね」

アイルは男達に犯られかけたショックから、少し立ち直ってきたみたい。


「うるさいわねぇ……」

「絶対捕まえて高値で売ろうとか、ロクでもないこと考えてたでしょ?」

「え?!何でわかった?」

「顔に出てるって。とりあえず、恩人なんだよ。恩人を売り払おうとか、それって人としてどうかと思うよ?」


「お前ら、本気で俺を捕まえて売る気なのか?」

私とアイルのやりとりを聞いて、呆れたように銀髪の獣人フォグルが口を挟んだ。


「そうだけど、あんた何か文句あるの?」

「え?文句?!」

私の定番の台詞に目を白黒させるフォグル。


「この山で村人や旅人を生け贄に喰ってるような魔物なら、切り刻まれようが、売られようが文句言う筋合いはないでしょ?」

「はぁ?」

「今まで捕まえた生け贄さんは何処にいるの?全員食べちゃったのかしら?」

私はストレートに核心をついた。

こういうことは、先にハッキリさせといた方がいいと思うのよ。

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