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第35話 伝説のフェンリスヴォルフ!

「生け贄を求める魔物ってどんなヤツなの?実際、人食いの魔物って殆ど居ないんじゃないかと思うけど……」

魔物が人を襲うのは、単純にテリトリーを犯されたゆえにのパターンが一番多い。


魔物だって生活をしているのだ。

レベルアップのために勝手に生活圏に入ってきて彼らの縄張りを荒らしまくる人間こそ、悪者だと私は思う。


「シーモス山に巣食ってるのは、フェンリスヴォルフ。災いの人狼と言われてるB級モンスターです」

モーベットさんの言葉に私たちは驚いた。

こんなところにフェンリスヴォルフが?


「フェンリス……伝説のレアモンスターじゃない」

「捕まえてサーカスに売ったら高値だな」

ウォルが無意識に算盤はじく。

「お前には捕まらないと思うぞ」

オーカーが真面目に忠告する。


「魔物がフェンリスだとしたら、生け贄なんてやっぱり変ね。人狼みたいな知能のある魔物が敢えて不味い人間食べたがるかしら?」

「そうなんです。実はシーモス山にフェンリスヴォルフは以前から住みついていました。彼は人間とのハーフだという説もあります。考えられるとしたら、村人への恨みでしょうか」

モーベットさんの語り口は暗い。


「恨み、ねぇ……」

「フェンリスとのハーフなんて、格好いいじゃん!ヴェスタ王国なら獣人が居るからさっさと山を越えたら良かったのにね」

アッシュの言うとおり、隣国に抜けたら容姿は目立たなかったんじゃないかとは思うが…。何かフェンリスが山を越えることのできない理由があったんだろうか。


「田舎で魔物とのハーフは目立つだろ。まぁ、虐められて育って、さぞかし人間に恨みを貯めてる系じゃないの?」

「それで、村人を生け贄に差し出させて食べてるのかぁ。趣味悪いなぁ」

怖がりアッシュとフェズが二人でプルプル震えてる。


「何か釈然としないですね。モーベットさんはフェンリスが人間に手を出しているのを見たことがありますか?」

「ありません。ディケムの自衛団が勝手に山に放り込むので、果たして本当にフェンリスが生け贄を求めているのか、おっしゃる通り何か怪しいと私は思ってます」


モーベットさんも疑ってるんだ!

何かまたたっぷり、裏がありそうな話よね。


「そうね。フェンリスみたいな知能がある魔物はグールのような低級なことはしない。生け贄とか考えつくのは大抵、愚かな人間よ」


「ということは怪しいのはそのディケム自警団ですか?」

レドの指摘に大きく頷くモーベットさん。

「ディケムにはそもそも以前は自衛団なんかなかったんですよ。平和な村でしたから。今の村長の代になって取り入った奴らがとんでもなく怪しい奴らで…。まぁ、よくある話といえばよくある話です」

「怪しい奴ら?」

「宗教団体です。奇跡を起こす教祖がユートピアを作り上げるとか言ってる立派な邪教です」

「はぁ」

「そして、奴らがその教団の象徴として崇めてるのがフェンリスヴォルフ」

「なるほど……」


「よく、村人たちが黙っていますね。だって生け贄に若者を連れていってしまうんでしょ?」

アッシュがモーベットさんに尋ねた。

「村人は共犯にされているんです。村の宿屋に泊まらなくて正解でしたね。あなたたちを売らないと自分達が捕まるから、村人は自衛団に旅人を売ります。それによって自分達が生け贄にされるのを回避してるんです」

「スゴいね、ミナミ。野生の勘、冴えてる~」

アイルが感心したように村の宿屋を回避した私を褒める。


「野生は余分」

アイルの頭をはたく私。


「さて、どうしますか?ミナミ」

やっぱり、纏めるのはレドグレイ。

「そうねぇ、とりあえず生け贄になるかな」


私の言葉にざわつく年少勇者ズ。

「誰が?」アッシュ。

「そりゃ、ミナミがだよね?」アイル。

「俺は食っても旨くないぞ」ウォル。

「生け贄ならミナミ姫が似合うな」オーカー。


「生け贄は男女っていってたでしょ。あんたたちも来るのよっ!」


「「「「え~っ!」」」」

私にビシッと指を突きつけられ、情けない顔をする勇者ズ。


あんたたち!ちっとは人のお役に立ちなさい。

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