第29話 一件落着?
「お疲れ様で~す」
カメリアの遺体とともに、私はドラブをコーラルリーフの警備隊にそのまま引き渡した。
後日、私に事情聴取にきた捜査官の話だと、娼館に売った後もドラブはカメリアに嘘八百を並べ立てて、性懲りもなく金の無心をしていたようだ。
証言も元同僚の娼婦からとれたとのこと。
「きっと迎えにくるからここで待っていて欲しい……」
と甘い言葉を囁いていたらしい。
おえ~。
何で騙されるかな。
カメリアは、結婚式でドラブの妻となったことで家の為に娼館に売られることを承知したらしいが、私にはその精神構造は全く理解出来ない。
娼婦として売られた後も、面会と称してドラブはカメリアに金の無心に度々訪れて来てたようだ。
哀れなカメリアは客から微々たる金を掠め取ってドラブに貢いでいたんだって。だけど娼館主に見つかり、折檻されて足抜けしようとドラブにすがったみたい。
でも娼館主に違約金を請求される恐怖にかられたドラブに始末されてしまい、雑木林に埋められてしまったらしい。
こんな奴、極刑で良いと私は思うわ。
女を何だと思ってるのよ。
因みに、今回殺人死体遺棄犯の逮捕に協力した報償金もコーラルリーフの検察からゲットしたわ。
結果的にはこちらの方がクエストより実入りが良かった。でも、後味的に今後もあんまり引き受けたい仕事じゃないわね。
カネに振り回され、人の心を失ったドラブ。あり得ないほど男に執着し、騙されて命まで落とし、アンテッドになって怨みを振りまいたカメリア。それに巻き込まれたローズ。
魔王なんかより、余程人の心の方が闇が深いんじゃないかと思ってしまう。
カメリアの遺体が見つかったことで金のティアラの呪いは完全に解けたから、ギルドから報酬の一部として返却されたけど……流石に私も要らなかったので、カメリアの供養に使って貰うことにした。
アンテッドに憑依されていたローズは幸いなことに記憶が曖昧なようで、とりあえず、新たに彼女にフェズが呪われるようなことはなさそうよ。
一方フェズはカメリアがドラブを引きずり込むのを見て、さらに女性アレルギーを悪化させてしまったみたい。
只でさえ役に立たないスキルで、イベント時にも使えないとなると……一人分余分に食費がかさむだけじゃない。
コーラルリーフでずっと待機してくれないかなぁ。
あとね、そうそう。
ドラブが捕まった後、黒服さんたちがフリント牧場を手に入れたみたいなんだけどね。
先だって、ちょっと大雨が降って地盤が緩んだらしく、大規模な土砂崩れが起きて牧場ごと埋まっちゃったみたい。
いや~、本当にロクな物件じゃないわね、あの牧場。
なんでも、東の森で火事が起きた時に原因は不明だけど、崖下の地盤が大きく抉られてたらしいわ……。
ハハハ……。
いやぁ、一件落着よねぇ……。




