第25話 呪いのティアラ?
「やったな、ミナミ…」
私に抱きついてくるフェズ。
「ちょっと、いつまでくっついてるの?もう芝居はおしまいよ」
グイグイと顔を寄せてくるフェズを私は押し返す。
「おしまいは困る……」
「はぁ?」
「さっきの続きがしたい」
「…ちょっとは懲りたかと思ったんだけど」
「懲りたよ?チビりそうになった」
「だよね、ガタガタ震えてたもん」
さっきまでのフェズの震え上がりぶりを思い出して、少し可哀想になった。が、なんでそこからキスになるんだ?
「あのさ、アンテッドが怖すぎて、もう僕。女相手に役に立たないかもしれない……」
「は?」
「ミナミ以外の女には立たなくなった、ってこと」
「はぁぁぁ?!」
どうしてそうなる?
困る。これからイベントでフェズが女の子引っかけてこないと進まないのがあるのよっ。
「治して。イヤ、絶対治るから。ほら、今からナンパしておいで」
「ムリ。治んない。女怖い。女はミナミだけでいい」
「あんた、そんなキャラじゃないでしょ。一時的なショック状態なだけだから、落ち着きな?」
「じゃあ。ミナミ抱かせてくれたら治るかも」
「絶対ムリ。お断りよ」
怖くて触りたくないと、ピーピー文句を言うフェズに近くのベンチに昏倒しているローズを何とか運ばせた。
元彼女?だろうに、フェズは薄情な奴だ。
フェズが怯えて雑に寝かせたので、目覚めた時にベンチから転がり落ちるかもしれないが、起きてからのことは知らない。道の真ん中で寝てて馬車に轢かれるよりはマシだろう。
さて、次はギルドへ報告しなきゃ。
私は現場でティアラに手を伸ばそうとするフェズの手を止めた。
「触らない方が良いわ。それ、呪いのアイテムよ」
「呪いのアイテム……?」
「フェズの魅了を跳ね返す力のある道具ってこと」
「こいつのせいか。僕の力が全然効かなかったのは」
納得がいったかのように、ティアラを見つめるフェズ。
「まぁ、それ以前に彼女たちの恨みパワーが、上回っただけかもしれないけどね……」
推測の域をでないけど、恐らくこのティアラ。婚礼の時に花嫁のヴェールを留めるものじゃないかしら?
あの、ローズに付きまとってたというゲスい牧場主、許嫁か自分を思ってた女に手を出したか…。とにかく深い女の怨みを買って何らかの理由でアンテッドになった女が居たのだろう。
そこに、フェズに振られたローズが共鳴して……というのが今回の顛末じゃなかろうか。
誰かがうっかり触って第二のローズが生まれても困るので、とりあえずティアラの回りに私はシールドを張った。
あとでギルドに連絡して、取りに来て貰おう。
あ~!!
今日はめっちゃ疲れた。
ほーんと、お金を稼ぐのって大変だわ。




