第23話 色男の失敗?
「こんばんは、ローズ?久しぶりだね」
青ざめた顔でフェズがローズの前にヨロヨロと飛び出した。
ヨロヨロしてるのは、私に後ろから突き飛ばされたからだ。
「ギ、ギ、ギ……」
アンテッドに、完全に乗っ取られた状態のローズの口から奇妙な音が漏れる。
「やっぱ、ムリ~!!」
木陰に隠れる私に泣き顔で振り返るフェズ。
もう、ギブかい?あきらめるの早過ぎだわ!
私の掌に浮かぶ魔法弾を見て、フェズは半泣きでローズに向かい合う。
「僕だよ、フェズ・シェイド。もう忘れちゃった?」
フェズはアンテッドに乗っ取られ、沈んでいるローズの意識を呼び起こそうとしたらしい。
でもこれが、失敗のもとだったんだな。
「フェ……ズ?」
ローズの口から言葉らしきものが発せられた。
「そう、フェズだ。どうしたの?ローズ」
「モウ、アワナイッテ、イッタ」
アンテッドが輪郭のようにフワリとローズとダブる。
よし、離れかけてる?頑張れ、フェズ!
「うん、だけどこんな様子の君をほっとけないだろ?」
「ウソ、ウソ、ウソ……!」
アンテッドとローズが首を振る。
「ワタシヲ、ステタノニ……」
ローズのセリフにアンテッドがシンクロして赤黒く光る。
「アイシテルッテ、ダイテクレタノニ……」
「それは……君が一回だけで良いからって、そういう約束だったろ?後腐れなく、すっぱりワンナイトラブをお互い楽しんだはずじゃ……」
バカ!フェズ。女の怨みを買うような地雷踏んでどうするのよ~!
一回だけでって本当に最低だな、お前!
「「オトコナンテ、ミンナオナジ!ウソツキヨ!」」
あちゃ~。余計にローズとアンテッド、くっついちゃったじゃない。
「「コンドコソ、ニガサナイワ」」
「フェズ」「ドラブ」
あれ?男の名前がローズとアンテッドで違うわね。
ドラブ?最近どっかで聞いたことがあるような……。
真っ赤な空洞のような瞳のローズINアンテッドに掴みかかられて、ガタガタ震えるフェズ。
自業自得だから、助けてあーげない。
ちっとは懲りなさい。
気がつくとアンテッドはフェズを押し倒してしまっていた。
おっ、無理やり襲うのかな?アンテッドの強姦現場なんて見たくないな~、と思っていたらアンテッドがフェズの喉元を喰い千切ろうと大きな口を開けているところだった。
「聖なる矢」
軽くローズINアンテッドを吹っ飛ばす。
「ありがとう、ミナミぃ~」
腰が抜けて、ほふく前進のような格好でフェズが私のところに転がり逃げてきた。
「あのね~、アンテッドと自分の元カノぐらい、ちゃっちゃとコマしなさいよ」
「だって、全然魅了が効かないんだ……跳ね返されるような感じがした。こんなこと初めてだ」
「ギ、ギ、ギ……」
吹っ飛ばされたローズINアンテッドが起き上がる。
「オンナ?アタラシイ、オンナ?」
私をターゲットとしてロックオンしたらしい。
「オンナガデキタカラ、ワタシヲ、ステタノ?」
「「ソウヨ、オンナガ、デキタカラダワ!」」
うっわ、面倒くさい。
多少綺麗だからって、こんな女に手を出すなよ、フェズ……。




