第21話 六人目!
「ワハハ、ついに年貢の納め時だな、フェズ・シェイド。そこの方からの天誅を心して受けるがいい」
私がカジノごと全員、吹っ飛ばそうと思案していると、中肉中背の一見なんの特徴もない青年が悪役笑いをして割り込んできた。
「お前、誰だ?」
フェズも知らないみたい。
ま、女の子の名前しか覚えないフェズが、空気も読まず割り込んでくるウザい男に興味を持つハズもないんだけど。
「俺はドラブ・フリントだ。忘れたのか?」
「知らない」
アッサリ答えるフェズ。
ちょっと待って。フリント……?
あっ、あのタデの実を集めてた牧場の主じゃん。
こいつかぁ……。
本当に特徴のない顔ね。能面みたい。
よし、犯人決定。
こいつが今回の馬の飼料にタデの実を混ぜた犯人ってことで。
「ちょっと、あんた。フェズに謝りなさいよ」
「あ、こいつ知ってるわ。こないだまでローズ様につきまとって手酷く追い払われた奴じゃないの」
フェズの取り巻き女逹がドラブを糾弾しはじめた。
「俺はつきまとってなどいない!あの方がそこの男に騙されてるだけだ。俺は目を覚まさせるために軍資金を集めてだなぁ……」
「何よ。ローズ様に追い払われて、毎日ここのカジノで大金スッてるだけじゃないのっ」
「目を冷まさないといけないのは、あんたの方よ!」
おおっ、モブお嬢逹強えぇ。
イケイケ!
「くっ……」
ドラブは取り巻きモブ嬢逹に囲まれて、だんだん入り口近くまで後退していった。
「覚えていろ!」
ドラブは超定番で平凡な捨て台詞を吐いて走り去っていく。
「だから、お前なんて知らないんだって」
フェズが呆れたように呟いた。
あ~。1500G。多分、このクエストの依頼主はあのドラブだろうから回収できないかなぁ。
とんだゴミクエストを引いちゃった。
とりあえず、東の魔獣退治分はギルドに受け取りに行っとこ。
ちゃんと貰えるといいけど……。
「どこへ行くんだ?ミナミ」
捻りあげたフェズの手を離し、出ていく私をフェズが呼び止めた。
「今日のところは帰るのよ」
「だから何処へ?」
「テラローザの里。今、レドグレイ逹と一緒に世話になってる」
「レド逹がいるのか?じゃあ僕もついてってもいい?」
「良くない」
「レド逹はいるんだろぉ~?何でそんなに僕だけに冷たいんだ……」
「色情狂のトラブルメーカーはお呼びじゃないの」
「今日会ったばかりなのに、酷い言い様だな……一体僕の何を知ってるの?」
「会ったばかりでも知ってるのよ。勇者フェズ・シェイドはここで永久にステイでお願いします」
「ま、僕は断られてもついてくけど。結構、嫌がられてる娘を落とすのって燃えるんだよねぇ。ゾクゾクしちゃう……」
やっぱり全然、人の話を聞いてませんね。フェズ君。
こうして6人目の勇者も私についてくることになりました。
はぁ。
一応、勇者さんはあと一人で全員揃っちゃうことになるわ……。




