第17話 そうだ。町にいこう!
「一応、魔物とかの気配もないわね」
「はい。水や飼料に何かが混入されていないかもチェックしましたが、そんな形跡もありませんでした」
レドと一通り厩舎を見回ったが、やっぱり収穫はなし。
「真実の光」
隠し部屋や罠とか光らせるモノだから、手がかり程度にしかならないけど、探索魔法を発動させた。
「はれ?」
ほんのり、飼い葉桶が光った。
「餌?」
「見たところ異常はありませんが…」
桶に手を入れて、さらさらと飼料をチェックするレド。
「念のため、成分チェックしてみて」
「わかりました」
レドは飼い葉桶を抱えて、厩舎の事務所へ走っていった。
§§§
「今朝はやめとけ、ウォルテール」
「もう治ったってば!」
オーカーが止めるのも聞かず、朝食でお代わりのスープをもらう、もらわないで揉めていた。
「ほっときなよ、オーカー。その食い意地のはったバカは、もう一回医者に山盛り注射されればいい」
アイルが飛んできたミルクを嫌そうにはらう。
「誰がバカだ、こら」
「ウォルに決まってるでしょ、今日ぐらい我慢しなよ」
「これでもアイルも心配してるんだよ、ウォル。急にたくさん食べたらまた、お腹痛くなっちゃうかもしれないでしょ?」
ニコニコ、アッシュがウォルを食卓に座らせる。
あ~、もうウォルも復活したかな?
昨晩はウンウン唸っているウォルに責任を感じたフロス少年の好意で、私たちはレドが滞在している厩舎の客間を提供してもらった。
お陰で久しぶりのフカフカベッドを堪能出来て、私も朝からご機嫌だ。
いや、いいね~。やっぱり人間、ちゃんとお布団で寝ないとね。
ここのところ、野宿が続いていたから涙が出そうなぐらい、ありがたい。
「おはようございます。ミナミ姫」
「おはよう、レドグレイ。そのカオ、何かわかったのね?」
「はい。昨夜の飼料の分析終わりました」
「何か入ってた?」
「中に入っていたものは成分表の通りでした。ただ……」
「ただ?」
「何故かタデの実の粉が普段の倍以上、混入されてました」
「タデの実……ひょっとして」
私はレドと顔を見合わせた。
「ウォルテールと同じ?」
「可能性はありますね……」
「野生のものは防御反応でアレルギーは起こりにくいけど、清潔な家畜はアレルギーになりやすいって聞いたことがある気がする…」
「毒を盛ったわけでもなく、証拠は残りにくい。犯人も考えましたね」
「何のためにこんなことを?」
「テラローザの馬は品評会でも一番の高値がつきます。ライバル厩舎の仕業か、もしくは高過ぎる値段を急落させたい者の思惑でしょうか」
「確かに高過ぎるわ。家と馬一頭が同じ値段なんてあり得ない」
「ミナミ姫。アレルギーを起こして馬が不調を起こしてた、って厩舎長には伝えても良いですか?」
「そうね。でも犯人が特定できないうちは、箝口令をひいた方がいいかも」
「わかりました」
レドは、コーヒーを一口啜るとまた、厩舎の方に戻っていった。
レドは四人組勇者より年上だからか、大人で頼もしく見える。それに引き換え、四人組は…。
「もー、ウォル食べ過ぎだって」アッシュ。
「あ、オーカー。要らないならそのデザートちょーだい」ウォル。
「まだ食べるの?信じられない~」アイル。
「食あたりで死ぬこともあるぞ」オーカー。
安定のガヤっぷりだ。
さて、彼らもタダ飯いつまでも食わせてるわけもいかないし。
そろそろ働いてもらいましょ。
「あ、フロス君」
「おはようございます。ミナミ様」
「昨日の話、どうだった?」
「あ、厩舎長は了解とのことでした」
「そう。じゃあ、後はよろしくね~。私、城下町に行ってくるから」
勇者四人を厩舎の下働きとして働かせて貰うかわりに、三食の保証と客間の使用を認めてもらうようにお願いしたの。
四人とも、食べた分はしっかり働くがよいわ~。




