表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/73

プロローグ

「やった~!クリア……!!」


私、白石 美波はコントローラーを放り出した。


目の前の画面では、魔王が苦悶の表情を浮かべて崩れ去っていく。



「光の勇者たちと闇の魔王~溺愛される姫はチートで戦う」

この乙ゲーなのか、剣と魔法のRPGなのか内容的にごちゃごちゃして良く分かんないゲーム。


なかなかのクソゲーだった。

ご褒美の勇者ボイスにお気に入りの声優さんが起用されていたので、それを目当てにはじめたんだけど。


簡単に勇者を集めて直ぐにハーレム状態にしたは良いけど、この勇者たちがまた弱くて弱くて。


揃いもそろって、全然育たね~!全く使えない。


すぐ魔物にやられちゃうの。

ピーピー泣くし。

性格クズだし。

特技はあるけど、全く使えないし。


チートヒロインが雑魚モンスターを潰してもレベルが上がるのはヒロインだけで、まわりの勇者は雑魚に序盤でやられちゃって、レベルアップしなくてずーっと弱いまま。


本当に邪魔だった。いわゆる、足手まといってやつよ。

マップを旅してても、トラブル運んでくるか、金を無駄に使わされるかのどっちかだし!


本当はパーティー外して全員酒場に置いていにたかったけど、またこれが面倒な恋愛イベントクリアしないとアイテムが手に入らなくて、勇者どもを連れていかないとストーリーが進まなくて。


仕方なく、最後の街まで泣く泣く引き連れていったのよね。


お目当ての声優は隠しキャラだから全然出てこないし、もう本当にストレスMaxだったわ。


結局、最終戦は役に立たないから、勇者たちは全員酒場に置きざり待機にして、単身で魔王城に挑んだのよ……。

何のための旅だったんだろう。ラストダンジョンの地点で、勇者たちのレベルが一桁ってあり得ない!


チートヒロインだから最初から能力MAXだし、こんなことならオープニング後に魔王に挑んでも変わらなかったわ……。うぅ、ムダな時間を使ってしまった。


でも、ここからが長かったの。全然アッサリ倒されてくれなかったのよ。ラスボスの魔王が。


毎晩、あと一歩のところで返り討ちにあい……倒せそうなものだからこっちも意地になっちゃって。そうね、かれこれもう一ヶ月ぐらいたったかしら。


本当に思えば長いお付き合いだったわ。


ようやく寝不足で出社する日々とやっとサヨウナラよ。


「まぁ無駄にイケメンよね、この魔王も」

エンディングのスチールを見て私は呟いた。


まぁ、ちょっと好みかもね。顔は。


美波は余韻にひたることなく、エンドロールを早送りしようとコントローラーの◯ボタンを連打した。


これでやっとクリア特典!

やっとお目当てのイケボ勇者から労いの言葉をかけてもらえるのよ!


この一瞬のために今まで睡眠時間を犠牲にしてきたといっても過言じゃないわ。録音しなきゃ。


その時。


画面の中で、長い銀髪に赤いルビーのような瞳をした美貌の魔王が散り散りになる一瞬、ニヤリと笑った。


「我が元へこい、美波」


は?幻聴?


私の世界が突然、深紅に染まる。

画面の向こうから真っ赤な瞳が私を呪縛し、クラリ、と眩暈がした。


ナニ、コレ……?


私はそこで意識を手放してしまった、らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ