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隻翼のドラグーン -あの竜空へもう一度-  作者: 葵大和
第三章 動乱の予兆
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21話 「竜の影たちに告ぐ」

 ラディカ・レイデュラントはドラセリア王国内を人知れず走り回っていた。


「……ちっ、どいつだ」


 先日、叙勲式典へ出席するために会場へと向かっていた途中、一人のドラセリア貴族の令嬢を見つけた。

 街娘に変装しているが見間違えることはない。


 ――ブラウズ伯爵家の跳ねっかえり令嬢。


 ドラセリア国内の有力貴族はおおむねフレデリクの公爵叙勲式へ出席している。

 当主のみならずその子息たちもだ。

 出席していていないのは意図的な者がほとんどだろう。


 ――レイデュラント公爵家をよく思ってねえ貴族たち。


 そのうちの一つがブラウズ伯爵。

 おそらく令嬢もブラウズ伯爵に指示されて叙勲式への出席を取りやめたのだろう。

 社交界好きとのうわさがあるから、本人としては出席したかったのだろうが、嫉妬深いブラウズ伯爵のことだ、厳命したに違いない。


 ――だが、令嬢は我慢できなかった。


 だから変装までして街に出ている。

 ラディカはそこに目をつけた。

 先日の、ミアハ襲撃事件の真相を解明するために。


「ブラウズ家じゃねえな」


 生来持つ女受けの良い美貌と、鍛え抜いたナンパ術で彼女に取り入り、これでもかと情報を抜いたが、結果的に彼らはシロだった。

 もともとさしてあてにはしていなかったが、やはりブラウズ家には、わざわざ大国家ヨルンガルドの名を借りてまでレイデュラント家を襲うような度胸はそもそもない。


「くそっ」


 主犯がわからないというのはもどかしい。

 その間、常に兄妹たちが危険にされされているからだ。

 ラディカにとってそれはなにものにも代えがたい苦痛である。


【竜の影たちに告ぐ】


 と、そのときだった。

 ラディカの手のひらに術式文字が浮かぶ。

 竜影機関の部隊長にのみ刻まれている伝達用の魔術刻印だ。


【国内に反乱分子の存在を確認した。至急ハーレル侯爵とその血族をすべて拘束せよ】


「こんなときに……!」


 滅多に使われることのない魔術伝達。

 それが使われるときはえてして事が大きい場合が多い。

 そして機関員として命をドラセリアに捧げているラディカは、それに背くことができない。

 それが、竜の影としての力を得るかわりに支払った代価である。


「さっさと片付けちまおう」


 あるいはこの事件もミアハ襲撃となにか関わりがあるかもしれない。

 いくばくかの期待を胸にラディカはハーレル侯爵家へと走り出した。


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『やあ、葵です。』
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