第14話「ウロボロスたちの話し合い」
今が深夜なのか昼間なのか、そんなことは関係ない。ウロボロスたちにとって大切なのは、今、ユウが寝ている時間だということ。よく徹夜して変な時間に寝るからリズムが掴みにくいユウだが、今日は何日か振りに昼間に寝静まったことを入念にチェックした。ウロボロスが、それはもう入念に。詳しい内容は言えないが、とにかくユウが目覚めることはないだろう。それを確認した上で真っ黒な会議室に集まり、秘密の話し合いを行おうというのである。
「皆、よく集まってくれましたね」
招集したオラクル・ナイツの面々をウロボロスはしっかりと見据えた。どれも真剣な顔つきだ。それもそのはず。あのウロボロスが、ユウと添い寝する権利を放棄してまで招集したのだ。それに加えて、これから話し合う議題は彼らにとって一生を左右すると言っても過言ではないほどに重要なのだ。
「ただ……なぜ、貴女様まで来られたのでしょう?」
部屋の片隅に視線が集まる。そこには、ちょこんと正座をして座るゼルエルがいた。どこともなく視線を向けながら呆けていて、まさか振られるとは思っていなかったようだ。ウロボロスに問われると意外そうに目を丸くして、小首を傾げる。
「なぜ不思議そうなのです? 私は呼んでいなかったはずですが?」
何度も確認するが、これはオラクル・ナイツにとって大切な話し合いだ。折角アザレアがバーを作ったのだが、そこを活用せず、わざわざこうして会議室を選んだ程に重要な話し合いだ。ゼルエルは関係がないはずであり、誰もが、その内容を聞いて欲しくないと思っている。だからこそ、この話し合いがあると口外すらしていなかった。
それがどうだ。どうやって嗅ぎ付けたのか知らないが、ゼルエルが居座ってしまっている。余程の事情が無い限り延期もやむなしの状況である。
「私は……うん、いないものと思っていい」
それは無理だろう。ゼルエルはユウオリジナルの第一配下。言わば最高ランクの地位にある。間違っても部屋の隅に置いておくなどできないし、何より、普段何をしているのか全くわからない。ユウへ告げ口する可能性も捨てきれない。それが、ウロボロスたちが最も懸念している点。何のためにユウに隠れて集まったのかわからなくなってしまう。
「それは困るのう、ゼルエル様。ワシらとて聞かれたくない話はある」
紅茶をすすりながらカルマが指摘する。優雅な風に見せてはいるが、その眉間にはうっすらとシワが寄っており、苛立ちを隠せていないのが丸わかりだった。カルマだけではない。フェンリスは困ったような顔で、アザレアははにかみ、ムラクモは腕を組んで黙したままだが、背中で拒絶のオーラを出していた。
そんな皆の態度など気にも留めていないゼルエルは、変わらず無表情のまま一言で答える。
「興味がある」
「ほう、それこそ興味深い話ですねぇ。魔王様が戦われる時ですら遅れてやって来た貴女が? この話のどこに、その重い腰を上げる理由があったと?」
アザレアが皮肉混じりに言うが、この場にいる誰もが同様に思った。それもそのはず。当り前だが、ユウの命令は基本的に絶対だ。余程の致命的な間違いや特殊な事情のない限り何においても優先される。以前、ユウはゼルエルに戦いへ出るようお願いしている。それに対し、あろうことか明確な理由すら示さずに拒否した。挙げ句、アデルと戦う時はひょっこり途中参戦。自由気まま過ぎる。
しかし、これもまた当然だがゼルエルとて馬鹿ではない。その行動の裏には何らかの意味があるのだろう。それも、何においても優先される目的があってのことに違いない。そのくらいはウロボロスたちもわかっている。だが、それを秘密にされたまま居座られたのでは溜まったものではない。
「ん……そうか」
そんな思いの篭った言葉を受けて、ゼルエルはこくりと頷いた。それからしばらく沈黙が流れる。どれくらいの時間が経っただろう。言うまでもないが、これは秘密の会議だ。タイムリミットはユウが目覚める約5時間後までである。しかもそれは最悪の場合だ。各々が寝る時間も考慮すれば、1分1秒すら無駄にできない。
それなのに、ゼルエルは頑として何も話さない。あろうことか、何も模様の無い真っ黒な壁をじーっと見つめて呆けてすらいる。
「えっと……あの、これは何の時間ですか?」
おずおずとフェンリスが挙手する。先ほど、皆がゼルエルに対して思うところがあったと言ったが、あれは嘘だ。フェンリスだけは例外。ゼルエルがいると都合が悪いのはわかるが、それ以上のことは理解できていない。いないが、話が進まなくなったことくらいはわかる。だから気になる。この沈黙に何の意味があるのか、と。
「知らんな。個人的には、ゼルエル様の補足説明が欲しいところだが」
溜め息混じりにムラクモが答えた。溜め息くらい出ても仕方のない状況だ。ゼルエルに対して思うことがあるのは勿論だが、それ以上に、これから先に起こるであろう波乱が容易に想像できたからだ。
「その通りです、ゼルエル様。一体どのようなお考えなのですか?」
低く、どこぞのヤクザのようなドスの利いた声で、ウロボロスは脅すように尋ねる。内心、彼女は焦ってもいた。この無意味に過ぎていく1分、1秒がこの上なく惜しいから。本来ならば、この時間はユウの隣で添い寝しているはず。早く終わって床に入りたい。そんな欲求が膨れ上がっているのである。
「興味がある」
そんな邪な願望はひとまず置いておくとしても、冗談抜きで、このままでは何の実りもないままに睡眠時間を無駄にして終わってしまいかねない。皆の健康も考えて、ウロボロスは怒鳴りそうになるのをグッと堪えて、せめてその意図を知れないかと聞いてみる。
「それはもう聞きました。一体、どの点に対してそのように思われたのでしょう?」
「お前にだ」
「私に……ですか?」
そんなことを言われても、余計に何が何だかわかるまい。ウロボロスは自分自身を指さしながら悩む。しかし、すぐにそのかいは無いと判断する。なにせ、相手は何もかもが秘密のベールに包まれているゼルエルだ。考えるだけ無駄とまでは言わないまでも、その答えに辿り着くのは困難極まりないだろう。それならばと質問を続けることにした。
「私のどこに?」
またしてもゼルエルは押し黙ってしまう。ただ先ほどと違い、人形のような無表情が、極々わずかに複雑そうになっている。毛でも一本生えた程度の差しかないが、ウロボロスは見逃さなかった。だから答えをじっと待った。
しかし他の皆は別だ。ゼルエルと長い付き合いのあるウロボロスならまだしも、カルマたちはそんな些細な変化に気付くことなどできない。皆を代表するような形で、カルマが溜め息交じりに尋ねる。
「また黙られては困るのう、ゼルエル様?」
「いえ、今回は言葉を選ばれているのだと思いますよ、カルマ」
しびれを切らしたカルマだったが、公私共に誰よりも一刻を争うはずのウロボロスに止められては、これ以上何かを言うことはできなかった。できないのだが、目、鼻、口は勿論、肩から指先に至るまで、あちこち細かく観察しても、ゼルエルが何かを考えているようには見えなかった。
その変化に気付けなかったのはカルマだけではない。ウロボロス以外の全員が同様であった。でも、とアザレアが補足する。
「まぁ、ウロボロスは僕たちよりもずっと付き合いが長いからね。些細な変化もわかるのだろう」
「へー、ウロボロスって凄いね!」
「うむ……我々にはわかりそうにないな」
そんな風に言われながらも、ゼルエルはこれでも思い切り悩んで言葉を探している。それから数分後、ほんの少しだけ難しそうな顔をしながら、ようやく見付けた丁度良さそうな言葉を絞り出した。
「……不思議?」
やっとポツリと呟いたそれは、もう何度か聞いたワードであった。それが何なのかと聞けば無限ループに陥るだろう。ウロボロスは突発的な頭痛に頭を押さえながら、どうしようかと思案する。
ゼルエルの性格からすれば、しっかりとした意志は持っており、簡単には追い返せないだろうと容易に推測できた。言葉で言いくるめるのは無理。ならばと、質問を変えてみる事にした。
「では、何を知れればお引き取り願えますか?」
「ん、この会議の内容だ」
「そうではなく、いえ、そうなのでしょうが……具体的には?」
「わからない。何が語られるか検討も付かない」
あれこれと試した結果、どう足掻いても八方塞がりという確認が取れただけである。この牙城を打ち崩すのは不可能だろうと悟り、ウロボロスは今日一日のエネルギーが尽き果てたかのように、ガックリと肩を落とした。それは皆も同様であり、完全に諦め切ってしまった。
「もう……いいです。ただ、これだけは約束をお願いします。これから話す内容は秘密にしてください」
「女の約束だ」
そんな言葉はない。なんて突っ込んだら、また面倒なことになりかねない。冗談抜きで、こんな茶番にこれ以上時間を費やすのは馬鹿らしい。暗黙の了解で、そういうものがあるという体で、ウロボロスたちは話を始めることにした。
「さて、やっと本題に入る訳ですが……まずは先日のことを振り返りましょう。我が君は紅竜同盟の奇襲に対し、ナディアへ全て託しました。攻め込んで来た不届き者は例外なく殲滅するのが私たちの務めと思っていましたが……」
そう、ウロボロスたちは良くも悪くも元々はドミニオンズの配下、つまりはNPCだった。プレイヤーに仇なす敵は即排除する。これは本能のようなものだ。腹が減ったからご飯を食べる。それと同等の話なのだ。それにも関わらずユウは排除しては駄目だと言う。これほどの一大事があろうか。まるで死ねと言われたような喪失感を彼女たちは感じていた。
「崇高な御考えを理解しようなど、本来ならば畏れ多いことではあります。しかしながら今後も御心に忠実に従うならば、この件は絶対に見過ごせません」
「ではどうすると? 少なくとも僕にはどうしていいものかわからないけれど……」
アザレアの疑問はもっともだろう。腹が減ってもご飯を食べるな。そんな理不尽極まりない要求をされて、どうやったら納得できるだろうか。はっきり言おう。絶対に無理である。ただ、それでは困ったことになる。ユウの思いに応えたい。でも、そうしたら敵を排除できない。この矛盾をどう処理して良いものかと、ウロボロスもまた頭を悩ませる。
「我が君はあの時、大変に悩まれ答えを導き出されました」
ウロボロスもまた解決策と言えるほどのものは無かったが、その手がかりになりそうな情報を口にする。あの時だ。ユウがナディアに全てを託した時のことをよくよく思い返せば、大切な何かが見つかるかもしれないと思ったのだ。
「何かを吹っ切ったような御顔でしたが……まだ、どこかに迷いが紛れていたのは間違いありません。今、恐らく我が君は重大な岐路に立たれているのでしょう」
「うむ、それはそうじゃろうな。敵をみすみす見逃すなど、余程の何かがあったに違いないからのう。して、だからどうしたのかという話じゃが……」
ユウが全く遠い存在になった訳ではなさそうだ、良かった。そう確認するに留まってしまう。問題はその先だというのに、誰も言葉を続けられない。この話だけではこれ以上の進展は無さそうである。
カルマはそんな皆を見て小さく溜め息を吐く。そして片手に持っていた紅茶のカップをテーブルに置き、椅子代わりにしているケルベロスから下り立ちながら口を開いた。
「何を差し置いても大切なことを再確認するのじゃ。ここで理解するべき内容はたったひとつ。それは魔王様の御心を知ろうなどという大それたことでは断じてない」
「えっと……それじゃあ、何を話すの?」
そもそもほとんど何も理解できていないフェンリスは余計に訳がわからなくなり、手を挙げて質問する。カルマはツカツカと歩み寄ると、優しそうな目をしてその頭をそっと撫でながら答えた。
「主ならば誰よりもわかっておろう? そう謙遜する必要はないのじゃ。何をどうしたいのか、思うままに口にしてみるが良い」
「え……で、でも、私は魔王様の思う通りに働きたいってだけしか……」
「うむ、まさにそれじゃ。そうじゃろう、ウロボロス?」
振られたウロボロスは力強く頷いた。そのような答えが出てくれると期待して、ずっと待っていたのだ。
ユウの思う通りに働く。それはつまり、少なくとも紅竜同盟を相手にした時は殺してはいけないということだ。そのくらいは誰もがわかっている。難しいのは、それを容易に受け入れられないということ。だって問題ではないか。ユウに向けられる害意を見過ごすなど。
そのようなこれまでの常識を非常識として、敵を殺さないという暴挙を正当化する。容易なことではない。だからこそウロボロスは待った。皆が自分自身の意思で至れると信じて。
「そうですね、私たちの取るべき道は、今も昔も我が君の御傍に付き従い、御心のままに働くこと。それ以上でも、それ以下でもありません。あってはならないのです。しかしそうやって、これまでの私たちは自らの欲望や存在理由に縛られてばかりで、真の意味で我が君の思いを考えたことがなかったのかもしれません」
独りよがりだったのだ、それは。勿論、直ちに危険が迫っているのなら話は別だろうが、害意を向けられただけならば、どう扱うか決めてから行動に出ても遅くはない。現に、ユウは悩みに悩んでナディアに託している。
「敵が来たから即排除……これでは生きているとは言えぬ、そういうことじゃな?」
「はい、今の私たちは生きています。もっと……そうですね、柔軟に、と言えば良いのでしょうか。とにかく、条件反射的に動いてしまうのは改善せねばならないでしょう。我が君の抱かれた大望はとても高度で複雑なものですから」
カルマを除く皆はすぐには認められないらしい。それくらいにユウの存在は彼らの中では絶対で、命に代えても守りたい人だったから。
しかし、真っ直ぐに見つめているウロボロスの表情に迷いはなかった。あの、ユウを誰よりも愛して止まずに度々暴走する彼女が、である。各々、その言葉を心の中で反芻し、やがて頷き、認識を改める。
「なるほどねぇ、今後の僕たちが取るべき選択肢……いや、その塩梅だろうか。とにかく、ドミニオンズ時代の常識に些か矯正をかけねばならないということだね?」
「えぇ、その通りです。竜神祭ではっきりしましたが、幾つかの不確定要素……リリス様なる人物、竜神、そして大災厄とやらですか。それらを除けば、基本的に私たちの優位性は揺るぎません。こと戦闘となれば特にそうです。故に自らを確実に律する必要があります」
皆がうんうんと頷き納得する中で、フェンリスだけがうーんと、小首を傾げている。やがて話が途切れてもなお、複雑そうな顔をして、一生懸命に理解しようと試みる。が、無理。納得できないのではなく、難し過ぎて理解が追い付いておらず、すぐに降参する。
「あの、全然話がわからないんだけど」
「では、我が噛み砕いて説明しようか。魔王様の御許可無くして、蹂躙してはいけないということだ」
ここまで簡単に言われては流石のフェンリスもはっきりと理解した。そしてここにきてようやく、ウロボロスたちと同種の疑問を抱く。同種、といったのはその内容ではなく程度に著しい差があるからだ。なぜなら彼女もまた、いや、むしろ彼女ほど、敵は即排除という本能が強い配下もいない。故に誰よりも受け入れられるはずがなかったのだ。
「ど、どうして? 魔王様はきっと、私たちが活躍するのを心待ちにしているはず!」
「その考えを改めようと言っている。この前、竜人の敵が攻めて来た時、魔王様はどうしたか覚えているか?」
ムラクモはその思考過程をはっきりと見抜いていた。その上でしっかりと補足説明していく。ユウもそう思っていたのだが、フェンリスは本能に忠実な配下だ。なぁなぁで済ませては肝心な時に暴発しかねない。
「えっと……待機を命じられたよ。確か、ナディアに任せるって」
「そう。魔王様の守った土地に土足で踏み込まれたんだ。我々としては殲滅してしまいたくならないか?」
「そう! だから私は、いつでも出られるようにしていたよ!」
あの時、アザレアはただユウに報告したのではない。走りながら各配下へ連絡を入れて、いつでも出られるように指示をしていたのだ。
それを受けたこともあって、さぁ、ユウに良いところを見せるぞと、フェンリスは張り切った。ワクワクしながら現地へと走り、攻撃命令を受けたらすぐにでも排除するつもりであったのだ。
「でも実際には違っただろう? 魔王様は、我々では殲滅しかねないと懸念されて止められた。なぜだと思う?」
敵なのに殲滅しては駄目な理由。そんな馬鹿な話があるものか。でも、それを言い出したのは他ならぬユウなのである。
なぜ、どうして。フェンリスは必死に考えて、悩んで、うなって。そしてようやくポツリと呟いた。
「う……ん、と、魔王様は敵をやっつけたくなかったの?」
「そうだ。詳しい理由まではわからなくても、殺したくないという気持ちは本物だったのはわかるだろう? だから、フェンリスも無闇に命を奪ってはいけない」
見るからにフェンリスは肩を落とした。話をある程度は理解した証拠だ。しかし本能を禁じられただけでなく、戦闘で華々しく活躍することこそ忠誠心を見せる唯一の手段と思っているため、そのダメージは大きい。
「そっか……。でも、それじゃあ、私たちは何をすればいいの?」
「魔王様の御言葉にきちんと耳を傾けるしかない。自分で判断するしかない時は、殺さず沈黙させるしかないな」
「うぅ……魔王様のためならがんばる」
明らかに気を落としながらも、フェンリスは両手を胸の前でグッと握る。健気にも目一杯に微笑んでも見せた。
本当に彼女の望むことは、ユウの笑顔。そのためならば何でもしたい。そんな気持ちを、彼女なりに心へ刻んだのだ。
こんなにも幼い彼女ですら、こうして決意を固めるのだ。他の面々は言うまでもない。戸惑いはあるだろうが、二度と不必要な殺戮は行われないだろう。
「思うところは様々でしょうが……」
さて、これで全員がきちんと理解できただろう。そう判断したウロボロスは手を叩いて注目を集めると、締めに入る。大変に重大な議題ではあるが、最初にいった通り、時間は限られている。明日に備えて休むこともまた大切だ。
「貴女たちのことは心から信頼しています。だからこそあえて宣言しましょう。我が君の御心に影を落とす者がもし万が一いた場合、容赦なく私が処断します。逆もまた然り。私が道を外れた時には遠慮なくこの胸を刺してください。私たちはそれだけの覚悟を持ってもなお足りない程の寵愛を受けているのだと、今一度言い聞かせ、自らを律しなければなりません。全ては、絶対主たる我らが君のために」
この物騒かつ狂信的と取られても仕方のない発言に対し、異を唱える者はおろか、内心で毒を吐くものすらいない。本当のことだから。ユウに拾われて、育てられて、そうして今があるのだから。ウロボロスの言葉は過剰表現でもなんでもなく、事実確認でしかなかった。
これには傍観していたゼルエルも、誰から見てもわかる程に破顔して喜んだ。そして、すっとウロボロスに歩み寄り、身長差から下から覗き込むようにしてその瞳を見つめる。
「皆の胸の内が知れて……良かった」
「それは何よりです。後は、約束を違えないようお願いします」
ゼルエルは知りたかった答えを得たらしい。それを良かったと評しもした。ならば、この話し合いは最高の形で終えられる。後はユウに黙っていてくれるかどうかなのだが、それはもうゼルエルを信じるしかなくて、ウロボロスは釘を刺したのだった。
「……わかった」
少しばかりの間が空く。小首を傾げながらも、ゼルエルはやっとこくりと頷いて見せたのだった。
これが素なのか狙ってやっているのかわからず、ウロボロスは少し冷や冷やしたのだが、とりあえずは大丈夫のようだ。ほっと一安心するとすぐに会議を終わらせ、そそくさとユウの元へと戻ったのだった。




