第3話「復興します」
どんよりとした空気が流れる。助けたはずの村人たちの雰囲気は一様に重い。だがかける言葉が見付からない。だってやっちゃったの、俺だもん。いくら死屍累々、瓦礫だらけの絶望的な村になったとしても、そこにあるだけで気持ちの整理を付けるなり、復興なり、みんなの心の支えになったかもしれない。それを跡形もなく消したのだ。どう言えばいいのかわからない。
「矮小な人間の分際で――!」
「――待て、ウロボロス!」
その発言を全力で止める。そんなことを言われたら関係が致命的に修復不可能になってしまい、せめてもの手助けすら拒絶されるようになってしまっただろう。
幸いにも止めるのはウロボロスだけで良かった。カルマは興味ないのか帰っちゃったし、アザレアは隣で俺に熱い視線を送るだけだし、フェンリスは可愛いし、ムラクモは黙して動かない。
ただ、何とか間に合ったとは口が裂けても言えない。ウロボロスはしっかりと侮蔑の言葉を発してしまっている。重苦しい空気が一層重くなったような気がした。
「あの……」
そんな居たたまれない場を壊してくれたのはあの子だった。俺たちが村へ行く直前に話していた子だ。泣き腫らした顔と真っ赤な目が痛々しくて、思わず目を背けそうになってしまう。
「私、この村の代表代理をしているアデルと言います。助けてくれてありがとうございました」
村長代理だと。思わず辺りにいる大人たちを見渡すが、誰も異を唱えない。村長は騎士たちに殺されてしまったのだろうか。それで娘か孫かが代理をしていると。それにしても未成年じゃないのか、この子。それなのに、あんな辛そうな顔をしながらも村人たちを代表して深々と頭を下げてくれた。
一方で俺は何だろう。頭に血を上らせて、取り返しの付かないことをしただけじゃないか。もっとやりようはあったはずなのに良い気になって。
「すまな――」
「――謝らないでください。先に言っておきますね」
釘を刺された。そうか、俺には謝る資格すら無いってことか。なんて絶望しそうになったが、そうではないらしい。まるで俺の考えを読んでいるかのように、アデルは首を横に振ってから言葉を続けてくれる。
「確かに村が無くなったのは……悲しいです。その……みんなの遺体とすら会えないのも正直に言うと辛いです。でも、あんな風にされてしまった村を見たら絶望して何もできなくなったかもしれません。いっそ無くなった方が良かったと思います。だから誤解しないでください。決して恨んでいる訳ではありません。私たちは心から感謝したいのです」
この子、俺なんかより遥かに大人びているじゃないか。どんな人生を歩めば、どうやって育てられれば、この状況でそんな感謝の言葉を言えるんだよ。未成年ながら村長代理が務まるだけの器を持っていると思えた。
「だから、これは村人全員の総意と思ってください。改めて心より感謝します。ありがとうございました」
村人たちも思うことがあるだろうに。アデルに言われたからか、一斉に頭を下げてくれた。しかも不気味なほど怒りや恨みのような感情を持っているようには見えない。ただただ悲壮感漂う表情を浮かべている。まぁ、そんな気力も残っていないのかもしれないが。
だが、それを俺が指摘しても良い展開には絶対にならない。それならば、こう答えるしかない。
「そうか……皆がそう言うのなら、俺も前向きに考えさせて貰う。せめて村の復興を手伝ってもいいかな?」
復興というか、何もかも残っていないのだから新しく作ることになる。でも気持ち的には復興なのだ。土地が変わって、建物も変わって、顔ぶれも減ってしまったかもしれない。だからといって全く別物になることもない。この子がいて、生き残った人たちがいる。それならば、ほら、どこに村を作ろうがきっと大切な何かは変わらないはずだ。そう俺は信じることにした。
「我が君。恐れながら、人間は汚く、醜く、仲間すら簡単に見限る軟弱者ばかり。我が君のような聖人は滅多にいません。そのような悪鬼共など、もう放っておいても良いではありませんか」
これに誰よりも早く待ったをかけてきたのはウロボロスだった。やはり、俺と出会う前に受けたトラウマは相当に根が深いらしい。当り前か。設定文の影響もあるのだろうが、よく俺には心を開いてくれていると思うよ。普通、あんな目に遭ったら人間全てを目の敵にして殺して回っても不思議じゃないんだから。
でもその言い分全てを認めてあげる訳にはいかない。今のウロボロスには直ちに命の危険なんてない。でもこの人たちはそうではない。あの頃のウロボロスよりは軽い状態かもしれないが、それでも放置すれば死んでしまうだろうから。
「ウロボロス、怒るぞ? その苦しさを知っているお前が、いの一番に力になってあげないでどうする? 悲しみを繰り返すつもりか?」
「……申し訳ありませんでした」
この世の終わりみたいな顔をして落胆するウロボロスを見て胸がチクリと痛んだ。少し言い過ぎただろうか。ウロボロスの抱えている事情は誰よりも一番理解してあげなくちゃいけないのにな。これでは突き放したように聞こえるかもしれない。
くそ、良い言葉が思い付かなかった自分が憎い。吐いてしまった言葉は戻せない以上、せめてフォローしておかなければ。
「例えばそうだなぁ……お前だって、万が一俺が死んだらあぁなるだろう?」
「死にます」
「……はい?」
間髪入れず、とはこのことだろうか。余りにも早い返答に、全く意味がわからず、思わず聞き返してしまった。
対して、ウロボロスは極めて真面目な顔付きで繰り返してくれる。
「死にます。我が君のいない世界はもはや偽り。死後の世界があると確信し、どこまでもお供致します」
軽い調子でもなければ、頬を赤らめもしない。どこまでも真剣。それが当たり前だと、覚悟などとうに終えていると、そうひしひしと伝わってきた。
自分たちに置き換えて話を進めようと思ったんだが、どうやら俺をネタにするとこうなってしまうらしい。それだけウロボロスの思いが強いということだろう。嬉しいことなんだが、困ったな。余りにも驚いて例えの続きを思い出せなくなってしまった。
「そもそも、我が君に死などあり得ませんから」
「あ……あぁ、悪い例えだったかもしれない。すまない。あー……その、なんだ。とにかく、お前の気持ちはわかっているつもりだ。でも、それと目の前の問題は別なんだよ。難しいとは思うけどな、一緒に乗り越えていこう」
「我が君……はい」
何とか言い繕ってまとめてしまったが、辛うじて頷いてはくれた。これではフォローにも根本的な解決にもならないけど、今はこれくらいで終えておこう。下手に墓穴を掘りたくないし、何よりウロボロスに元気を出して貰うことはできたんだ。
復興の話に戻ろう。このやり取りからアデルは余り良い顔をしていない。このままではこちらの助力を受け入れてくれないだろうな。
「あのさ、流石に野宿はマズいだろう? せめて雨風を凌げる所だけでも作らせてくれないか? それを見て、以降も復興を任せてくれるかどうか判断してくれればいい」
「……そうですね。もう昼過ぎです。今からでは近くの村へ移動することも叶いませんし、お願いできないでしょうか」
「任せてください」
良かった。これで何もさせて貰えず帰るしかない、なんて最悪の事態は免れた。後は立派な建物をこしらえるだけである。
そうは言っても簡単な話ではない。実際にイチから建て直すとなると問題はたくさんあるだろう。プロならば、あれ、これと必要な物を挙げていけるのだろうが、残念ながら俺は素人だ。物を作るゲームを多少遊んだことがあるだけの、にわかとも自称できないレベルである。つまり必要物品からして揃えられない状況である。
頼りはウロボロスたちを初めとする配下たちだけ。適当に思い付いたことを言いながら、祈る思いでチラリと目を向ける。
「資材はまぁ……そこら辺から調達するとして、労働力は……」
労働力。わざわざこう言ったのは、我ながら悪い考えがあってのことだ。
まず、猿でもわかるだろうがこの状況で村人たちの力は借りられない。では俺が全て作業するかとなると、いや、待てと言ってくれる人たちがいる。そう、皆が率先して手伝いを買って出てくれないかな、と期待してのことだった。
しかし、どういう訳か狙いは外れてしまった。皆、目をキラキラさせて俺の方を見ているだけで何も言ってこない。ウロボロスもまた、まるでおやつを前にした子犬のように、あるはずもない尻尾をブンブン振り回していそうな勢いで待機している。
「あー……その、アザレア、お前にお願いしたいことがある。できるか?」
それならばと、一番物作りに精通していそうなアザレアに頼ってみる。こいつは錬金術師だ。素材の調達、調合は勿論、それを使った合成までお手のものである。建築に関しても俺よりはずっとどうにかしてくれそうである。背後が妙にむず痒くなる頼もしさだろうけど。
「わ、我が君! 私、私が先ではないのですか!?」
そして案の定、ウロボロスが待ったをかけてきた。だが今回ばかりは名乗りを上げられても困る。ウロボロスは高いステータスが売りだ。それも飛び切りの、だ。建築には腕力が必要なのかもしれないが、そういうレベルでは済まず破壊されてしまいかねない。
「あー……うん、ほら、お前は取っておきだから」
「取っておき……我が君の……!」
また良からぬ妄想を始めてしまっただろうが深く考えないことにして、アザレアを促す。このままでは何もしないまま夜になったら大変だ。それにほら、余り遊んでいるとアデル達の視線も冷たくなっていくし。
「おぉ……この僕にできることならば……いいえ、例え不可能であっても現実のものとしてみせましょう! この愛に誓って!」
「清く正しい期待をさせて貰うよ。まずは労働力が欲しい」
「畏まりました!」
アザレアはオーケストラの指揮者のように両手を広げると、薬のようなカプセル状のアイテムをたくさん落とす。それらひとつひとつが地面に触れるや否や見る見る大きくなっていき、俺と同じくらいの大きさのゴーレムへと変身した。
ウッドゴーレムと言えばわかりやすいだろうか。木の断面のような独特の文様が入った表面である。こいつの凄いところは倒されると種子をばらまいて増殖する能力だ。ただまぁ、それ以上でもそれ以下でもなく、本当にそれしか能の無いとても安価な下級モンスターである。それでもあのヴェルたちと比べると、この世界の成人男性より遥かに上のステータスを持っている。労働力としてはうってつけという訳だ。
「今、世界は僕の色に染め上がる。土は肉で、水は血。さぁ、無機物たちよ、我が手足となりて従事せよ。ゴーレム召喚!」
更に、もの凄く痛々しい詠唱っぽい何かの後、地面から無数の腕が伸び、地中からソレは這い出した。土で作られた下級モンスター、サンドゴーレムだ。ウッドゴーレムと違い、それなりのフィジカルを持つ奴らである。増殖こそしないが、腕力という面では大変に活躍してくれるに違いない。資材調達をサンドゴーレムで行い、増やしたウッドゴーレムで建築を行えば、ひょっとするとあっという間に一軒建ってしまうかもしれない。
大変に良いチョイスだ。それはいい。それはいいのだが、どうしても聞かずにはいられない。
「そ……そんな詠唱が必要なのか?」
はっきり言おう。痛い。聞いていて胃の辺りがキュウってなる。何をしたのか把握するためにも魔法やスキルの名前は言わないと駄目だろうが、詠唱までは要らないだろう。百歩譲って唱えないと使えないのならわかるが、思い出して欲しい。エグゾダスを撃った時は何も口上なんて要らなかったじゃないか。ならば、この詠唱はアザレアがわざわざ考えて作ったということになる訳だ。そして、である。ここまでの思考を一気に無かったことにできるレベルの突っ込みもある。サンドゴーレムはアイテムだ。たぶんさっきバラまいたカプセルの中に紛れていたはずなのだ。だから魔法でもスキルでもない訳で、どう足掻いても詠唱なんて不要なはずである。
「いえ、これは僕オリジナルです。魔王様の気を引くため、先ほど考えた自信作で――」
「却下だ。0点だ。普通にやってくれ」
「流石は魔王様。この程度の完成度ではお気に召さないと、わかりました。次こそはご満足頂けるよう頑張る所存です!」
「できるだけ頑張らない方向で頼む」
普通に魔法の名前を言うくらいで留めて欲しい。いやさ、それも本当は恥ずかしいところなんだけどね。だって、道端で急に「サンダー!」とか叫ぶ奴がいたらみんな逃げるでしょ。それと同じ。同じだけど、ここは我慢か。何を使ったのか情報共有する手段が他に見つかるまでは、声高らかに「サンダー!」と叫んで貰わなければ困る。
さて、そんな辱めも乗り越えて労働力は確保できた。できたからもう次に移るはずなんだけど、なぜか妙に張り切っている奴がいる。
「フェンリス……何をしているんだ?」
「はい! 私もお手伝いしようと思いまして!」
どこから取り出したのか、フェンリスは意気揚々とノコギリをブンブン振り回していた。あれは武器ではない。工具だ、その殺傷能力は俺たちの持つ武器とは雲泥の差で、恐らく当たってもかすり傷ひとつ付かないかもしれない。でも、この光景は見過ごせない。考えてみて欲しい。女の子が笑顔でノコギリを振り回すシーンを。滅茶苦茶危ないと思うだろう。色々な意味で。
「村人さんが持っていた伐採用具をお借りしました! 頑張りますよ! 見てください……ほらっ!」
「待て! それはそうやって使うものじゃ――」
制止も間に合わず、フェンリスは大木に向かってノコギリを振るった。フルスイングだ。するとどうだろう。何も起こらない。ノコギリは折れてないし、大木はそのまま。でもフェンリスは確実に振り抜いている。
「まさか……ねぇ」
恐る恐る近付いて大木を押してみると、徐々に軽くなって、え、もしかして。もしかしなくても大木は後ろに倒れていった。大きな地響きを立てて、驚いた鳥たちが一斉に周囲の木々から飛び立って行くのが見えた。
「待て、待てって、頼むから待って! フェンリス、それを見せてくれ!」
「はい、どうぞ!」
これは確かにノコギリだ。念のためアイテムの能力を調べてみても、やっぱりノコギリ以外の何物でもない。それでもさ、まだ刀や斧のような一刀両断するための刃の工具ならまだいいよ。でも、この刃はギザギザの歯だ。間違っても一刀両断できるような構造ではない。それなのに、見てください奥さん、この切れ味。まるで機械で加工したかのようにツルツルの断面じゃないですか、あらやだ。
「す……凄いな、フェンリス」
「えへへー、ありがとうございます!」
「お待ちを、魔王様」
頭をなでようとしたところ、ムラクモに止められる。武人ならこの手の道具も武器と同じように大切に思うのかもしれない。フェンリスは全く違う使い方をした。それも、たぶんだけどこの手の工具じゃ最もやってはいけない扱いをしたのだろう。怒るのも無理はない。
「その大木、更に美しく加工してご覧にいれましょう」
「……はい?」
理解が追いつかないままにムラクモを目で追うと、カチリと抜刀した音が鳴ったのも束の間、大量の木くずが飛んできた。咄嗟に両腕で顔を覆ってガードして、嵐が止むと、恐る恐る目を開けてみる。
「終わりました」
大木があったはずの所には、ビックリするほど綺麗に整った建材が積まれていた。うむ、見事だ。あの木屑の飛び方は、きっとあの刀一本で加工したためだったんだろう。たぶんフェンリスが良いところを披露したから、ムラクモも技を見せたかったに違いない。
「ここからが僕の出番ですね! お任せあれ!」
そしてアザレアの指示でウッドゴーレムたちが一斉に群がり、わずか10秒後には一軒家が建っていた。オール木造建築で窓ガラスも無いが、代わりに開閉可能な部分がいくつかあって、住む分には問題さそうな出来栄えだ。
これにはびっくりだ。ここに至るまで1分強といった具合だ。どうやらアデルも同じようで、2人で目を丸くする。
「建築って……思ったより簡単だったのか。知らなかった」
「あの……何もかも普通じゃないと思います」
「良かった、俺はまともなんだな」
アデルに突っ込まれなかったら人として大切な感覚を失っていたかもしれない。感謝だ。そんな風に思いながら胸をなでおろしていると、アデルに苦笑いされる。なぜだ。何か悪いことをしてしまったかと焦ったが、どうやらそうではないらしい。
「えっと……魔王様もちょっとだけ不思議な方だと思いますけど」
「あー……まぁ、こいつらの主な訳だし、多少は見逃してくれ」
「そ、それもそうですけど……その、男性の方って、そんなに指輪を着けるものではないと思います」
両手の20の指輪を指さされてハッとなった。ゲーム内ならこれくらい普通で全く気にしていなかったけど、確かにこれも大概だな。ギラギラとし過ぎて下品だし、現実でやったらそもそも指が曲がらないよね、きっと。それに奇抜かつ過度な装飾だと忘れる辺り、俺は既に身も心も魔王ユウらしい。こっそりと数を半分以下に減らしておく。
「あと、もっと綺麗なお洋服を着た方がいいかもしれません」
「こ、これはそういうファッションだから」
まさか服まで突っ込まれるとは。なんだか胸の辺りが苦しくなってきた。だが、これまた言われてハッとなったが、これはれっきとしたコスプレだ。俗に言う痛い人である。
はぁ、コスプレして街を歩ける人って凄い。こんな精神ダメージを受けてもへっちゃらなんて。俺はヤバイ。この世界に来て、今、一番の大ダメージを貰っている。
「人間、それ以上は許しません。我が君は何もかも大変に素敵な御方です。無礼な発言は慎むように」
「そ、そうですね、失礼しました」
俺の表情から察してくれたのか、ウロボロスが割って入ってくれる。アデルもすぐに謝ってくれて一件落着、とはいかない。痛いのは痛い。現実は変わらない。いくらウロボロスが擁護してくれても、それはとてもありがたいけど、俺はもう限界が近かった。穴があれば潜ってしまいたい気分だ。とりあえず普通っぽい服に着替えて、復興作業を手伝って気を紛らわすしかない。
「と、とにかく口よりも手を動かすぞ! 野宿は極力避けたいからな!」
「畏まりました。皆、奮起するように!」
ウロボロスの号令の後、復興は劇的に進んでいった。早い。ぶっちゃけ早すぎて、テレビを二倍速か三倍速にして見ているような気分になる。なにせ、1軒1分のペースだ。しかも、あれだけ高速なのに1軒ごとに微妙に装飾が違って芸が細かいオマケ付きだ。夜を迎える前に復興が終わってしまうのではないか、とすら思える。
「我が君、報告します。村人たちの家が全て建て終わりました」
「い、いつの間に!?」
一軒目が建ってからまだ5分なんだけど。計算上は5軒だろう。実際、目の前には5軒しか無いじゃないか、と思ったら、後ろの方でゴーレムたちがせっせと作業してくれていたらしい。きちんと数えたら全部で50軒にもなっていた。
「す……凄い、な」
俺が呆気に取られてどうするんだと突っ込みたくなったが、これは仕方ないだろう。我ながらもの凄い配下たちを育てたものだ。でもそのお陰でアデルたちは野宿せずに済みそうである。良かった、良かったと思いながら村人たちに報告しようとした時だった。
「それで、私の出番はいつなのでしょうか?」
腕をひしと掴まれて、ウロボロスがそんなことを聞いてきた。先ほどと違い、少しばかり不安そうな顔付きだ。恐らくアザレアたちが余りにも活躍しているから、自分の役目はあるのかと心配になったのだろう。大丈夫だ、問題ない。もう何も残っていないだろうさ。なんて馬鹿正直に言ったらどんな悲惨なことが起こるか、全く想像も付かない。
俺は試されている。俺を取り巻く全てのものを守るために、なんて言ったら少しばかり大げさかもしれないが、実際、この家々を破壊でもされたらたまったものではない。だからここは山場である。
「ウロボロスは知っているか? 秘密兵器って言葉を」
「秘密兵器……ですか?」
「そうだ。秘密は秘密にしているからいいのであって、大っぴらにしたらカッコよさが半減するんだよ。実際、お前の奥義は滅多なことがなければ使わなかっただろう?」
「なるほど……私が浅はかでした。その時になるまで、この力、しっかりと溜め込んでおきます」
うん、俺を盲目的に愛してくれている設定のお陰もあってか、説得はスムーズにいった。これでよし。いやぁ、我ながら口が上手いなぁ。
後は家以外に必要なものを聞いて、それらを作っていく感じになるだろうな。なんて考えながら指示を出していくと、村の再建的な作業はメキメキと進んでいく。今日は何もかもが驚きの連続だったのだが、次の日の朝、そんなのは些細なことだったのだと知ることになる。




