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錆びた金貨と、蒼く輝く剣  作者: なおゆき
混沌と輝く碧き命
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新居と隣人

 アルフレイム王国は幻想の塔を中心に四方に区画が整理されている。


 幻想の塔の周辺、冒険管理局や商人通り(レブラストリート)など、冒険者に関連した施設が立ち並ぶ中央区、最大のランドマークであるアルフレイム城がそびえ立ち、その周りに貴族らが住む一等地が整備されている北区、ギルド街と呼ばれている南区、生活に必要な商品が売られている市場や平民が数多く暮らす、いわば居住区にあたる西区、今やアルフレイムで一番人気で、もっとも熱い場所と言われるコロシアムがありながら、またその陰では旧居住区が廃墟となり、家を追われたものが住みついたスラム街がある東区の五区画である。



 ブラーシュ家を半ば追い出されるようにして家を出たフレンは、冒険に必要な装備や道具がはいった鞄を手にしたモラと一緒に、新居と呼べる新しい住処にやってきていた。


 マール=ブラーシュが弟フレンにあてがった住居は、ブラーシュ家の屋敷がある北区ではなく、平民が多く暮らす居住区である西区にあった。それは二階建ての一軒家であったが、お世辞にも広いとは言えず、また左右にも住宅が隣接している住宅密集エリアだった。


 1階は玄関とキッチン付きのダイニング、トイレ、バス。玄関近くの階段から2階に上がると、細い廊下の左右に寝室が二つあるだけだった。

 ホコリまみれではあったが、クローゼットもソファもベッドもダイニングテーブルもすべて備え付けてあるから、今すぐにも生活が始められる。


「一時はどうなることかと思ったけど、案外広いし、ちょうど二部屋あってよかったよ」


 二階はそれぞれフレンとモラの自室としてあてがった。

 モラは自分に一人部屋なんて贅沢だからリビングで寝る、と言って聞かなかったが、なんとか説得して今に至る。


「とはいうものの……」


 一息つく暇もなく、家中で気になるのはその大量のホコリだ。歩くだけでも煙のように大量に舞うから、今モラが家中を掃除中である。自分の部屋くらいは、とフレンは自室の掃除を買って出たのだが、見れば見るほどうんざりするほどのホコリである。


「ゲホゲホッ、喉か肺がどうにかなっちゃいそうだ……!」


 なるべくホコリを吸わないように、二の腕を口にあてがいながら息を止めて、どうにか窓を全開にする。

 

「スーッハーッ! はぁ……」


 ようやくきれいに空気を吸うことができる。抜けるような青空もあいまって清々しい気分だ。


「ん?」


 フレンの部屋にある窓は家の間取りで言うと、玄関の反対側に位置している。つまり家の裏手の景色が窓から望めるというわけだ。


 そこから見えたのは教会らしきボロボロの建物だった。


 住宅が密集しているエリアの中では比較的広く、周囲の家々に囲まれているのにぽっかりとそこだけ空いている、といったところか。雑草が生え放題ではあるが大きめな庭もついている。


 その庭で何人かの子どもたちが一つのボールを奪い合うようにして遊んでいた。


「わーん! お姉ちゃーん! ケルドがいじめるよー!」

「へっ、お前トロいから一緒に遊んでやらねーんだ!」


 何やら子供同士でケンカが起きているようだ。ケンカといっても気が強い子が弱い子に意地悪をしている様相ではあるが。


「コラーッ! 仲良く遊びなさいっていつも言ってるでしょ!!」


 どうやら気の弱い子に呼ばれたお姉ちゃんの登場のようだ。雷のような怒号が響き、教会から女の人が飛び出してきた。


「どこのお家もお姉さんは強いなぁ……って、えええええ!?」

「え?」


 家の窓から子どもたちの遊びを静観していたフレンだったが、教会から飛び出してきたお姉ちゃんが顔見知りであること、そしてそれがものすごく意外な人物であったため、つい外に向かって驚きの声を上げてしまった。


 それに気づいた教会の子供たち、そしてお姉ちゃんはフレンの家の窓を見て、


「げぇ!? フレンくんっ!?」


 と、ついこの間までパーティを組んでいた間柄とは思えない、明らかな拒絶反応を見せたのであった。 

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