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その9 国境砦攻略

 大武会が行われ、しばらくして獣人救出作戦が開始された。ベーリンゲン帝国の村々、メグレンブルク伯爵領とゴドヴィング伯爵領、近場の二つが対象だ。

 とはいえ、そちらはシノブ様が直接指揮を執る獣人部隊だから、俺ジャン・ピエールには縁がなかった……俺は人族だからな。それに極秘作戦だから、そもそも終わってから知ったよ。

 でも、後で聞いたときには、獣人族だったら呼ばれたかも、とか少しだけ残念に思ったぜ。


 まあ、それは後で思ったことだ。

 大武会で予選決勝まで進んだのとガルック平原の戦いでの評価で、俺は小隊長を任された。だから、そのころは隊長らしくしなくちゃ、とか考えてばかりだったなぁ。俺のところに配属された部下たちに、教育と訓練をしないと……とかさ。

 それともう一つ、俺は騎乗の追加訓練だ。馬に乗れない騎士って格好つかないしね。せっかくプリムヴェールという軍馬を与えられたんだ。乗りこなせなきゃ、恥ずかしい。


 でも、所属が同じ北門なのは助かった。小隊長の一人が、俺と同じ大武会と戦の合わせ技で昇進したんだよ。これで本部だったりしたら一から仕事の覚えなおしだぜ。


 そんなわけで、俺は二月の前半を新人小隊長として励みつつ、プリムヴェールの御機嫌を取っていた。だから、シェロノワの門か外にいることが多かったな。本格的な乗馬って、領都の中じゃ厳しいだろ?


 2月14日にはシノブ様の誕生パーティーもあった。俺は例によって門と外だからパーティーの様子は知らないけど、日にちだけは良く覚えている。

 だって、バレンタインデーだもんな。あの人、誕生日はチョコレートで一杯だったんじゃ!?

 ……いや、今の姿と同じってことはないよな。だって今は、どう見ても日本人に見えないし……シノブ様、俺と同じで金髪碧眼だから。まあ、こっちじゃ多いから、それは不思議じゃないけどさ。

 でもなぁ……向こうのことは知らないけど、今はシャルロット様が奥様、更にミュリエル様が婚約者、しかも最近じゃ王女のセレスティーヌ様まで館にいるって……やっぱり、リア充爆発しろと言っていいよね!?



 ◆ ◆ ◆ ◆



 ジャンは知らなかったが、このころ既にシノブたちは炎竜たちの窮状を知り、救出作戦を練っていた。

 そして2月14日。急遽ベーリンゲン帝国の国境砦攻略、救出作戦と同時の陽動作戦が計画された。


 炎竜たちの居場所は判明し、そちらにはシノブたちが向かう。これは味方の竜を連れて行くと、彼らまで支配されかねないからだ。

 それに、入れ違いに帝国軍に支配された炎竜たちが攻め込んでくるかもしれない。そうなると対抗できるのは同じ竜、つまりガンドたちしかいない。

 そこで国境の防衛はガンドたち三頭の竜に協力してもらう。彼らも仲間を捕らえた帝国への怒りは凄まじく、むしろ積極的な関与を望んだ。


 だが、それだけでは詰まらない。守りを固めて待つだけではなく、敵の砦を奪取しよう。

 これにはガンドたちも賛成した。やはり彼らは、自身で帝国に報復したかったのだ。炎竜たちには、子供がいた。そして竜は幼子に手出しする者には容赦しないからだ。


「ガンド殿に制圧部隊を輸送していただくとして、どの程度の兵を?」


 ベルレアン伯爵コルネーユ、つまりジャンの旧主が義兄に問う。もちろん、その義兄とはアシャール公爵ベランジェだ。


「一箇所あたり最低でも百人は欲しいね……指揮を執る我々とは別に。多くの精鋭を連れていきたいが、領内の治安維持に必要な人員を考えるとねぇ。そうそう、こちらも大武会参加者を基準にしよう」


 ベランジェは、どことなく暢気な口調で答えた。

 攻略対象の砦は、北からノルデン砦、ゼントル砦、ジルデン砦だ。したがって三百人は動員することになる。これとは別に、シノブたちの炎竜救出部隊が百人ほど、つまり合計で四百名は必要であった。それも、精鋭中の精鋭が、である。


「本選出場者は十六人、更に獣人族の七人は救出作戦。予選上位ですね」


 コルネーユは、間を置かずに答えた。彼の頭にはフライユ伯爵領にいる主だった者達が全て入っているのだろう。

 もっとも、これは当然ではある。東方守護将軍、つまりシノブの配下にはベルレアン出身の者が多い。それに、他もガルック平原の戦いで見知った者達である。

 そのため彼は残る九人のうち三名が義勇兵のドワーフで、更に残りもミレーユなどシャルロットの側近か司令官などの要職にあるから除外、と判断したようだ。


「そうだねぇ。もちろん、各部隊からも選抜するけどね」


 ベランジェも、それは理解していたらしい。

 こうして砦制圧部隊は、大武会の予選上位者と各隊の中隊長から小隊長を中心に選抜されることとなる。何しろ竜に乗ってからの降下、ぶっつけ本番である。多少腕が立つ程度の者は、連れて行くわけにはいかないのだ。

 こうしてジャンの知らぬ間に、新たな作戦参加が決まっていくのであった。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 俺ジャン・ピエールが訓練を終えて一息ついていると、本部隊のガリエ中隊長に呼び出された。上官じゃないが、本部からの呼び出しだから急いで駆けつける。


「え? ゼントル砦の制圧部隊に招集? ……了解しました!」


 それも、今夜かよ! 正確には零時過ぎての作戦決行だから、明日だがな!

 しかしシノブ様、誕生日の夜になんともまあ……シノブ様は炎竜たちを救出するため、帝国の中央北部まで侵入して強攻だって!?

 すんません、リア充爆発なんて思って……爆発しないで帰ってきてください!


 で、僅か数時間後に夜襲だ。だが、結果的には楽なもんだった。

 ガンド殿が空襲、おまけにブレスで大暴れと……。しかもガンド殿、何やら巨大な魔法の杖を握っていた。後で聞いたら、ミュレ先輩たちが作った『解放の竜杖』だという。

 ミュレ先輩、凄いぜ……お陰で奴隷になった獣人たちを、あっという間に解放できたんだ!


 結局、俺たちはガンド殿からのロープ降下しただけだもんなぁ。前世で自衛隊にいたことがあるから、このくらい楽勝だよ。


 ともかく、ガンド殿の大活躍で敵の半数以上は壊滅した。で、残った敵兵も苦労なく捕縛できた。しかも後方から、更に兵士が輸送されてきた。

 こんなに兵力を移動して平気なのかな? と、思っていたら、既に国境部は王国全体で警備することになっていて、続々と兵力が送り込まれていたらしい……知らんかった。


 俺たちと並行して他二つの砦も攻略完了だ。今いるゼントル砦もガンド砦に改称されたそうな。ガンド殿、首を高く上げているけど、あれは胸を張っているポーズなのかな? 案外カワイイかも?


 しかしまぁ、竜という航空戦力による強襲と空挺降下を行えば、中世レベルの軍事力じゃいくら魔法があっても対処できないよなぁ。制空権を取れるのは大きいし。

 これも後で聞いた話だが、炎竜の子供を盾にした上で更に獣人を生贄に隷属を強いたらしい。そりゃ、文字通り逆鱗にも触れるわ。


 帝国は自業自得だし、それはいいんだ。しかし、どうやらこのままメグレンブルク伯爵領の東端まで前線を押し上げる計画らしい。

 で、なし崩し的に俺も参加することに……。落ち着いたら、休暇と金一封くらい欲しいなぁ。


 お読みいただき、ありがとうございます。


 今回は全て創世暦1000年2月前半です。フライユ伯爵領に移籍したジャン・ピエールさんは小隊長に昇進、しかし帝国との戦いが再度勃発、しかも今度はメリエンヌ王国側からの反撃です。

 奴隷とされた人達を助け出して、更に竜達も。ジャン・ピエールさんも、今後ますます大変そうです。


 以下に大まかな流れを示します。


創世暦1001年 1月29日 大武会(前回の範囲)。

創世暦1001年 2月 8日 シノブとアミィ、ガルック砦に移動、奴隷救出作戦を実施。

創世暦1001年 2月 9日 奴隷救出作戦の二日目。

創世暦1001年 2月11日 ガンドと岩竜の長老ヴルム、行方不明の炎竜達についてシノブに訊ねる。

創世暦1001年 2月14日 シノブの誕生日。炎竜達が捕らえられたと判明。

創世暦1001年 2月15日 零時過ぎ、炎竜救出作戦と砦制圧作戦を同時に実施。


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