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その51 エピローグ

 二話同時に更新しました。


 一つ前の「その50」をお読みでない方は、そちらからお願いします。


 こうして俺はエーディトを妻に迎え、新たな生活が始まった。でも新婚旅行もないし、双方とも多少の休暇をいただいたのみで職場に戻る。

 交通機関が未発達だから、仕事以外の旅行者は少ない。快適な旅をしようと思ったら大金が必要、私用旅行なんて大貴族か隠居した富裕層の贅沢というのが一般的な認識だ。

 第一、俺たちが結婚したのは創世暦1001年12月27日。数日で新年だから各種の行事が目白押しである。


 もっとも新生活を満喫できるだけで充分に幸せだ。

 アマノ王国は平和そのもの、俺の日常は雪かきの指揮くらい。大きな式典があれば警備に駆り出される程度だ。

 新年の行事、二月半ばのシノブ様の誕生日、三月上旬には英姫(えいき)ミュリエル様の誕生日。とはいえ主導は王都本部だから、割り当てられた仕事をこなすだけである。

 むしろ王宮侍女のエーディトの方が忙しかったんじゃないかな?


 国やエウレア地方全体に目を転じても、事件というべきことは見当たらない。

 俺たちの結婚式と同じ日にカンビーニ王国の王太子シルヴェリオ殿下に第二子が誕生したり、明けて二月の上旬に同国のアルストーネ公爵家に第三子が生まれたり。国内も三月上旬に侯爵家や伯爵家に出産が続いたし、同月半ばにはアマノ同盟への加盟国が増えるなど祝事が続く。


 東欧から中央アジアに相当するアスレア地方の国々、そして遥か東のヤマト王国。これらが新規に加盟したんだ。

 元からの加盟国……エウレア地方の全国家とアフレア大陸の北端にあるウピンデ国を含めると、驚くなかれ十八カ国である。


 シノブ様は一月に入ると別の地方に出かけたらしい。俺は東門大隊だから詳しくないが、王宮勤めのエーディトが教えてくれた。

 まずオーストラリアに相当するアウスト大陸、続いてインドに当たるイーディア地方。そして少し後にはスワンナム地方とカン地方……つまり東南アジアに東アジアだね。

 もっとも転移を使っての極秘行で、エーディトたち一般の侍女が知ったのは少し後だった。これらの国々からの訪問者が『白陽宮』に訪れるようになったのは三月以降、それまでは閣僚や一部の側近しか知らなかったようだ。


「陛下も大変だ……それに幹部の方々も」


 四月半ば、夕食を終えた俺はリビングで寛ぐ。

 新たな公邸にも既に馴染んだ。隣には愛妻エーディト、まさに新婚といった風情の初々しい若奥様。テーブルの上にはウィスキーの水割り、そして彼女お手製の(さかな)。ここ三ヶ月半ほどの日常風景だ。


「そうですね。情報局のソニア様はカン地方局の局長まで兼務なさるし、護衛騎士のフランチェーラ様もスワンナム地方の地方局に赴任なさったし……」


 俺が呆れ混じりといった表情だからか、エーディトは大袈裟に頷いた。

 シノブ様は神の血族だから別だが、周囲が倒れるのでは。そう俺は案じたが、幸いにして予想は外れた。

 国や同盟の幹部クラスになると、もはや常識は通用しないらしい。武官なら伝説級の達人ばかり、文官ですら体調不良など聞いたこともない。

 たぶん神々が相当強い加護を授けたのだろう。何しろシノブ様の盟友や側近だから、神々が特別に目をかけるのも当然だ。


「まあ、俺たちが気にすることじゃないさ」


「私は普通の侍女ですが、貴方は……」


 俺が軽く流すと、エーディトは困ったような笑みを浮かべる。

 どうもエーディトは俺を過大評価しているらしい。先日までニュテスさまの使徒だったし、今も能力的には変わらないから間違いとも言いかねるが。

 ただし下手に反論すると、逆に怪しまれるかもしれない。そこで俺は、こういうとき照れ笑いで誤魔化すことにしている。

 しかしこのときは、それで終わらなかった。


「実は、陛下から内密な話がと……」


 エーディトは声を潜める。ここは俺たちの住まい、今は二人しかいないのに。

 どうも面倒事らしいと察し、俺は姿勢を正す。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 翌日の夜、俺は王宮の一室に赴いた。

 場所は『白陽宮』の大宮殿、しかも軍議に使う『紅玉の間』である。それに案内してくれたミリィ様は、透明化の魔道具を使って俺を隠す。

 もっとも伏せるべき件ではあった。何しろ新たな地方への潜入任務だから。


 行き先はアフレア大陸の北東部、地球ならエジプトだ。今のところアマノ同盟との交流はないし、それどころか知る限りでは訪れた者もいないという。


「実は、アルバン王国から南に向かう航路を開発する予定なんだ」


「先月下旬の歴訪で、アルバン王国も前向きになりましたし~」


 シノブ様の説明をミリィ様が補足する。

 『紅玉の間』にいるのは他に俺とアミィ様だけ。しかし俺は聞き手だし、アミィ様も控えているのみだ。


 アルバン王国とはアスレア地方の南部海岸に面した国、地球なら中東のアラビア海沿いだ。ただし、この星にはアラビア半島に当たる陸地が存在しないし、アフレア大陸との間も幅広く1000km以上の大洋が広がっている。

 この大洋には半年ほど前まで邪神が潜んでいたが、シノブ様が邪神を倒して平和な海に戻った。更に朱潜鳳フォルス様とラコス様から向こうの情報を仕入れ、ミリィ様が調査を始めたという。


「カン地方やスワンナム地方も問題ないですし~、個人的にも気になる場所ですし~」


「少々不安ですが、彼女が最適なのは確かですから……」


 やる気満々といったミリィ様に対し、アミィ様は心配も顕わといった様子だ。

 ミリィ様は自身の趣味を優先させ、度々地球の事柄を持ち出しては同僚の皆様から注意されるそうだ。大抵の人は気付かないだろうし意味不明な冗談と受け取る人も多いが、俺は元地球人だから聞けば察する。


 ただ今回の件に関しては、地球に詳しい者が良いのは確かだ。

 どうも向こうの状況は、古代エジプトに酷似しているらしい。巨大な四角錐の建造物、独特の技法の絵画や彫刻、独特な埋葬法、非常に強力な王権……このように重なる点が多い。

 この星の常として言葉や文字は日本語だからヒエログリフに悩まされることはないが、それでもエウレア地方の人間には理解しがたい文化や社会体制のようだ。


「同じアフレア大陸でも、ウピンデ国や周辺とは全く違う。行き来がないから当然だけど」


「最初はオアシス伝いに旅できると思っていましたが、砂漠と海の双方とも無理でした」


「あれほど強力な魔獣の領域は、ちょっと記憶にないですね~。あれも『神秘の秘伝説』と関係しているのでしょうか~?」


 シノブ様、アミィ様、ミリィ様の言葉通り、ウピンデ国からの東進は不可能だった。そこでアルバン王国からの南航路を開発することになったが、あまりに独自の文化だから事前に潜入調査が必要と判断した。

 そこでミリィ様が、()()()()()()()()()として俺を推薦したそうだ。


 もっとも今の俺は、別のことに引っかかっていた。それはミリィ様の最後の言葉だ。

 向こうには独特の呪術や伝説があるらしい。具体的には、魂が複数の要素で構成されていると信じているそうだ。

 おそらく古代エジプトのバーやカーに該当するのだろうが、体を抜け出して独自に動くなど憑依術のようでもある。それが転生前に好きだった話に似ているんだよ。


「分かりました。御指名は光栄ですし、興味も湧いてきました。ぜひとも私にお任せください」


「そう言ってくれると思いましたよ~! 一緒に調べましょ~!」


 俺の言葉に大喜びしたのはミリィ様だ。今までの縁もあるし、かなり面倒な場所らしいから元使徒の俺をメンバーに加えたかったのだろう。


 こうして俺は王都守護隊から軍情報局に移籍することになった。

 実際はミリィ様の手駒だが、各地を巡るのも楽しそうだし文句はない。建国前の軍管区時代を含めたら約一年を王都守護隊で過ごしたが、少し退屈していたのだろうか。

 ともかく新たな冒険の始まりだ。極秘任務だから当分は明かせないが、いずれ話す機会も来るだろう。

 そのときは、またよろしくな!


 お読みいただき、ありがとうございます。


 アマノ王国建国後、その王都アマノシュタットでの光景です。「その50」の後、創世暦1002年1月から4月にかけてです。


 これにて完結です。

 「その49」から一年、大変お待たせしてしまい、申し訳ありません。

 本編との時系列的な兼ね合いもあり間を空けてしまいましたが、もう少し上手く出来たのではと反省しきりです。


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