表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/51

その4 竜退治!?

 出勤すると詰め所に見慣れない魔道具が置かれていた。そして俺ジャン・ピエールに気付いた部下……狼の獣人の兵士イグレット、通称イギーが魔道具の正体を教えてくれた。


「あ、隊長。これ、昨日隊長と入れ違いにミュレ長官が……」


 イギーの言うミュレ長官とは、魔道具子爵とか呼ばれているミュレ子爵マルタン様さ。もっとも俺からすれば、昔なじみの面倒見の良い先輩ってだけだが。


「……ああ、昨日酒場に来たのはこれのせいか」


 手書きの取扱説明書が置いてあったので読むと、個人携行用の通信機だそうで。小型化して個人の魔力で扱えるようにした代わりに通信範囲が狭くなってしまったらしい。

 それでも背負える程度に収めたんだから、大したもんだよ。


「門の近辺ならこれでカバーできるだろうけど……仕事が増えたな」


 まだ朝勤との交代まで時間があるし……と隊長室の自分の席に向かう。

 ミュレ先輩にはベルレアン伯爵領時代から世話になったし、試験くらいは手伝うさ。短期間で帝国を打倒できたのは、あの人の作った魔道具の力もあってのことだ。

 もちろん、こうやって俺がアマノシュタットの守護隊で隊長をやっているのも。そんなことを考えたせいか、俺はベルレアン伯爵領時代のことを思い浮かべていた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 去年の九月の終わりごろ、ベルレアン北街道をドワーフ馬(長毛で足が短い馬、首が長めのカバみたいな外見の生き物)が疾走してきた。

 乗っていたドワーフのおじさん……後でイヴァール様って知るんだけど……がセリュジエールに入るのを、俺は見送った。そして二時間ほどすると、今度は訓練場に高い岩の柱が……またシノブ様か?

 北門から見えるんだ、かなり高いぞ……などと思っていたら、あっという間に伯爵家の尖塔よりも高くなった。ってことは、50m以上あるのかよ!


 そして柱が伸びなくなったと思うと、今度は途中が真っ赤になって……焼き切れて落ちた。……後日聞いたら『レーザー』だって!

 ちなみにミュレ先輩は、これでシノブ様に弟子入りしようと決めたらしい。当時ミュレ先輩は既に従士、しかも参謀の一人だから、シノブ様に近づく機会はあったんだ。


 だけど、転生前の記憶で地球のことを知っている俺からするとなぁ……。

 シノブ様って名前からして日本人だと思っていた。で、レーザーを知っているから現代人、少なくとも戦後だな。向こうでの知識があるからレーザーをイメージできるんだろうけど、ミュレ先輩だと無理があるんじゃないかな。

 それに岩の柱を焼き切る……か。もの凄い魔力が必要だよなぁ……シャレにならん。原理を知っていても俺じゃ魔力操作が細かすぎて再現できません……残念だ。

 だけど懐中電灯くらいに指向性を持たせることはできたから、便利は便利になった。それにフラッシュみたいな使い方もできたし。


 それで二日ほどしたら、あわただしくシノブ様たちが北に馬を飛ばしていった。

 一緒にビューレル内務次官……シメオン様もいたみたいだけど、冷徹ってわりに最前線に向かうのは結構熱血なんじゃないかな?

 直後に聞いた話では、シノブ様たちは竜退治に向かったらしいと……帰ってきたら竜殺し、つまりドラゴンスレイヤーですか!?


 三週間ほどしてシノブ様たちが帰ってきたけど……竜を倒したんじゃなくて説得して友達になったって? ……予想外です、竜って結構理性的だってこと?

 このころから、シノブ様は領軍本部にも顔を出すようになった。ベルレアン伯爵家の魔術指南役に就任したんだけど、これって箔を付けるための策だよな……ご領主様、つまりシャルロット様のお父上コルネーユ様の後押しでの。


 当然、多くの人が色んなことを思ったらしい。

 大半は『竜の友』となったシノブ様を領内に留めるのは当然、と大歓迎。一部は嫉妬を隠しつつ……俺からすると絶対無理だと思うんだけど、貴族くずれの内政官や軍人には、あわよくば伯爵家に婿入りを、って人もいるのさ。

 そしてミュレ先輩は大喜び。早速シノブ様に弟子入りして魔術を学んでいたよ。


 そんなアレコレを聞きつつ北門で働いていたら、戻って二週間ほどでシノブ様たち、シャルロット様との婚約の件で王都メリエに向かうそうで。……本当に忙しい人たちだな。

 しかし『竜の友』の功績を考えると、あっさり婚約が決まりそう。あの人が主君ねぇ……年明けて王都から戻ってきたら本格的に接触してみようかな?


 なんて思っていたらベーリンゲン帝国の侵攻!?

 確か十二月に入って一週間くらいだったな。なぜか北門大隊長が俺を呼び出した。


 ……小隊長、報告します! 増援の後発隊に加われと大隊長から命じられました。本当なら歩兵は巡回守護隊の選抜メンバーが主体らしいのですが、北部大隊では『アマノ式伝達法』の習得者が少ないそうです。それで定数に足りないから同じ北繋がりで、ということらしいです(見栄を張るのも大変ということですね)。


 小隊長は「頑張れよ。お前は頭もいいし、武術も我流だが見所がある。だから出世できるさ」と言ってくれた。たぶん(なぐさ)め半分だろうけど。

 そりゃ、前世のおかげですんなり『伝達法』も覚えられたし、『魔力操作法』で前より色々できるようになったから別にいいけど。……ってのは小隊長には言えないな。


 ……生きて帰りたいなぁ。


 お読みいただき、ありがとうございます。


 前半はアマノ王国建国後、その王都アマノシュタットでの光景です。「その2」の続きなので、創世暦1001年7月以降のことです。


 後半は創世暦1000年9月末から12月頭です。ジャン・ピエールさんはセリュジエールの北門勤務、そしてシノブはベルレアン伯爵家の居候、シャルロットの婚約者となるため王都メリエに、そしてガルック平原の戦いに出陣という時期です。


 以下に大まかな流れを示します。


創世暦1000年 9月29日 イヴァールがセリュジエールに来る。

創世暦1000年10月 1日 シノブ達、ヴォーリ連合国へと出発。

創世暦1000年10月21日 シノブ達、ヴォーリ連合国からセリュジエールに戻る。

創世暦1000年11月 5日 シノブ達、王都メリエに向かう。

創世暦1000年12月 5日 ベーリンゲン帝国の侵攻、王都メリエに連絡が入る。

創世暦1000年12月 6日 シノブ達、セリュジエールへの帰還を開始。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ