なんか木に転生したんだけど
約8600文字です。
ある日、俺は死んだ。
アキバにオフ会に行った帰り道に突然死んだのだ。
心臓麻痺だった。
多分超ドストライクな幼女が三次元に降臨したのだろう。俺ならそれぐらいあり得る。
で、気がついたら俺は森の中にいた。
そして、何故か動けなかった。
何故だろうと訝り、あたりを眼球の動きだけで伺ってみたところ、全く知らない土地だ。
周囲には大きな木が何本も生えている。中々深い森のようだ。
俺は、ふと下を見るとそこにも木があった。どうやら俺は磔にされているらしい。
と、
……そんな事を考えていた時期が僕にもありました。
暇だったので周囲を数時間に渡って観察していてやっと分かったのだが、なんと、俺は……森の中の一本の木だったのだ。
は……?え……木?
ちょっとゴメン……訳がわからない。
俺は丸一日の思考停止と丸一日の熟考、そして丸一日の絶望の果てに完全に理解した。
俺は木に転生したらしい。
大事な事なのでもう一度言うが、木に転生したらしい。
全くもって訳がわからない。
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まず自分のプロフィールを発表しておこう。
あ、木としての俺のプロフィールな?
大体高さは2mもないくらいだ。
生まれたての木としてはデカイな……そこは御都合主義かな。
ちなみに種類はイチイだった。
これは昔、あるアニメに出てくるキャラクターのアララギという名前を検索したら出てきたので偶々特徴を覚えていたのだ。
そして周りは大木ばかりなのだが、都合良く俺の真上にだけ障害物が何もない。
俺の生えてる場所にだけ木漏れ日が差し込んでいるのだ。
俺が効率的に成長できる環境が謎に整っている。御都合主義だな。
しかし、イチイは日陰でも十分に生育が可能な植物だ。どうやら神様はそこら辺分かっていなかったらしい。
そして不思議な事に視覚がある。
周囲の様子が普通に見えるのだ。まるで眼球を動かしている気分だ。眼球無いけど。
そう言えば、樹木ってどんな気分なんだろうな……?他の樹木も目が見えてるのだろうか?
木になった今でも樹木の気持ちはイマイチ分からなかった。
コレは俺が人間としての前世を持っているため、ちゃんと木になりきれていないのが原因だと思う。
ってか木になりきれていないって何?
まるで漫画の劇中の文化祭などによくある罰ゲーム配役みたいだな。
「じゃあ○○くんは『木の役』でいいよね〜?キャハハハ!」みたいな?
いや、じ、実体験じゃねえよ?そ、そんな事あるわけないだろ?
そしてもう1つ。これは当然なのだが、動けない。
めっちゃしっかり地面に根を張っている。というか、枝すら動かせない。
風でさわさわ揺れる程度だ。
まぁ、動きたいという欲求が無いわけではないが、別にどうって事ないな。俺、木だし。
不思議な事に俺は自分が『人間』というより『木』って感じがしているのだ。
水と日光があればもう他はいいかな。あ、でも虫に食われるのは嫌。
あ、やっぱり前言撤回。ロリと仲良くしたいし、パソコン欲しいなぁ……。
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娯楽物が無いことに目を瞑れば、ここはいい場所だった。
ちょうど俺の目の前は少し開けた場所になっており、近くにある岩は動物達の憩いの場となっている。
俺の幹や枝にはリスなどの小動物が寄ってきて、それを至近距離から眺めることができるのであまり退屈はしない。
しかし、どう考えても地球上の生物じゃないだろっていう植物や生き物が沢山いるのだ。
あれの怖さは異常。
なんかネズミみたいなやつが大口開けてカエルを丸呑みにしたのを見た時には本気でビックリした。
ちなみにその後、モグラのような生き物が穴の中にそのネズミを引き入れ、数分後骨だけが穴からカランと出てきたのは別の話。
そして、話は変わるが、
ここ……どこなの?
俺はこれが疑問だった。
カエルを丸呑みにするネズミ(体長10cmぐらいで、ありえないくらい口がデカイ)や、そのネズミを食い殺すモグラ(この前見た時ダツみたいに鋭い歯が並んでいた)なんてどの国にいるんだ?
多分地球上にいないだろ。
もしかして:異世界
グーグル先生に聞くとこんなタグが出てきそうだ。
出てくるわけ無いか。
まぁ、どうでもいいや。俺、木だし。
この場所がどこかなんていう情報は樹木にとってはあまり重要じゃない。動けないしな。
俺はこの場所で枯れるまで動物や植物達と楽しく暮らすんだ!
会話できないけど。
後、動物達よ。たまに俺の幹をかじったり引っ掻いたりするのやめてくれない?別に痛くないけどさぁ。
虫達は俺から汁を吸ったりするし、動物達は枝を折ったり葉をちぎったり、もうなんでもする(ちなみにイチイの葉と種は有毒であるとされている)。
しかし、不思議と痛くないのだ。
寧ろ俺はそういう行為全般を許容できた。これも助け合いだよな。
多分俺の体にいる良くない虫とかを食ってくれてるんだよ、こいつらは。多分な。
しかし、人が通りかからないな……。会ってみたい。
この世界……もしかして人がいないのか?
まぁ、どうでもいいか。俺、木だし。
俺は自分が木になるという異常な事態に直面していながらも結構ポジティブだった。
だって気にしても仕方がないもんな。俺、木だし。
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そんな俺の樹木ライフが始まって早一ヶ月。俺は既にこの暮らしに慣れていた。
まず朝になると数日に一度、俺の枝に付いてる葉をむしりに来るリスを眺める。俺はこのリスにムッシーと名付けた。葉をむしるからだ。
昼になると俺の目の前で遊ぶネズミ達。俺はこいつらをジェリーと名付けた。某頭の良いネズミに似てる気がしたからだ。
そして夕方になると俺の隣の木の幹を引っ掻きに来る熊。俺はこいつにファングと名付けた。爪でひっかくからだ。
真夜中になると俺の根っこのあたりを掘り返しに来るイノシシ。俺はこいつにツッチーと名付けた。土を掘るからだ。
ちなみに動物達の名前は名付けているだけで、呼んだことはない。声出ないし。
俺は毎日こいつらをひたすら眺めて過ごす。意外と暇は感じない。木だからかな?
あと、俺の体は意外と強靭にできてるらしく、枝を折られても、葉っぱをちぎられても、足元を掘り起こされても結構大丈夫なのだ。
まだ若いからか、すぐに生えてくる。
でも、俺って本当にイチイにしては頑丈に出来ている方だと思う。
確かに、イチイは日陰や寒さに強く、日差しが当たらない場所でも十分な生育が可能なそこそこの耐久性を持つ植物だ。
そしてもう1つの特徴として、良くしなる。イチイは素で丈夫な植物だ。
しかし、俺はそれに輪をかけて丈夫だろう。
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と、そんなある日、突然森の奥から悲鳴のような声が聞こえた。
何だ?
俺は視覚を背後に移す。
俺は動けないが、不思議な事に視野は360度なのだ。便利だ。気持ち悪いけど。
すると、後ろから息を切らして可愛い幼女が走ってきた。
顔の側面からは長い耳が顔を出しており、それに掛かるように短めのブロンドが揺れている。
金髪ロリエルフhshs‼︎
やはり異世界だったか!あんな生き物がいるなんておかしいと思ったんだ!
一応コスプレという線もあったが、こんな森の中で変な二人組の男に追われている時点で現実味は薄い。
真性の変態ロリコン紳士(自称)である俺はそれはそれは興奮した。
この一ヶ月基本的にボーッとしていた俺の感情が一気に噴出した。
今までどうでもよかった事なのに、突然欲求が芽生えた。
触れたい。話したい。仲良くなりたい。
しかし、動けない。動きたい。
ああ、もどかしい!
エルフのロリは肩で息をしながら俺の隣を素通りし、岩陰に座り込んだ。
そこは俺の友達である(と勝手に思っている)動物達の憩いの場だった。
ああ可愛い。可愛い……!可愛いッ!エルフ可愛いよエルフ。エルフっ娘くんかくんか!
俺がそんな事を考えていると、さらに俺の後ろから2人の男がやってきた。
何だこいつら……?俺の天使に何かする気か?
もし何かしたらぶっ飛ばすぞ。
早くも天使認定である。しかし、それも無理からぬことだと自分でも思う。
だってめっちゃ可愛いんだよ。あの子。超絶プリティなんだよ!
『・・・・・・!・・・・!』
男達はなにやら訳のわからない言語を口走りながら下卑た笑みを浮かべ、ロリエルフへとジリジリと近づく。
なんか分からんが、絶対あれは友達じゃ無い。ならず者だ。
このクズ野郎共!俺の天使に触るな!
俺は心の中で叫び続けた。しかし、声が出ない。
ああ、何で俺は木なんだ⁉︎
もうちょっと、あるだろ他に!勇者とか!木って何だよ⁉︎適当か!
その時、ロリエルフが高々と両手を上げて叫んだ。
「森の木々達よ!私を助けて!」
おいおいなんか電波なこと言って現実逃避し始めたぞ……。
確かに可愛いけど今はダメだろそれは……。
すると、不思議な事に俺の両隣の大木がズズズズ……!と鈍い音を立てながら動き始めた。
バキバキと音を立てながら枝が有り得ないくらい大きく揺れる。
う、嘘だろ……?
まさか、魔法か⁉︎魔法なのか⁉︎
この世界は魔法が使える異世界だったのか⁉︎
じ、じゃあ……もしかして俺も⁉︎
しかし、俺はいくら頑張っても動けない。
俺の体はウンともスンとも言わない。
何でだよ‼︎
手があったら手首に思いっ切りスナップを効かせてツッコミたいところだぜ……。
そうして俺が頑張っている間に、俺の両隣の樹木はならず者を太い枝でぶっ叩こうとする。
しかし、そのならず者は結構強いらしく、二本の大木は苦戦を強いられているらしい。
「お願い!皆!」
ロリエルフはさらに叫び、天へと伸ばしたその手に光が宿る。
すると、他の樹木も呼応するように少しずつ枝がわさわさと動き始める。
しかし、俺は動けない。
何で動けないんだよ⁉︎
俺は自問自答した。
俺が小さいからか?否。
俺の想いが弱いからか?否!
俺が人間だったからか?否ッ!
それは断じて否だッ!
俺は誰よりもロリを愛している!ロリを助けるためなら何でもする!
ロリの安寧のためならば命すら惜しく無い!
俺だって動きたい!ロリを助けたい!
そして、ロリとイチャイチャしたい!
ロリに「ありがとう、お兄ちゃん♡」って言われたい!
うおおおおおおおおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎
すると、俺の想いの丈が通じたのか、それとも周囲の樹木が俺にドン引きしたのかは分からんが、俺へと力がガンガン集まってくるのを感じた。
多分後者だと思うが、この際だ、ご近所さん達の評判を気にしている場合じゃない。
ズズズズ……!
俺は今……動き出すぜ……!ロリを助けるためになぁッ!
俺の両隣の動く大木は俺が動き出した途端にいつもの普通の大木に戻っていた。
いや、両隣だけではない。すでに全ての木々がまるで普段通りかの様に沈黙していた。
ふっ……仕事は終わりってか?
よし、後は俺に任せな!キッチリ助けてくるぜ!
俺は地面に埋まっている自分の根っこを引っこ抜く。まるで人間の足のように根っこが変形している。
硬い地面を踏みしめるこの感触……。実に久し振りだ。
しかし、不思議と鈍っている感じはしない。
俺は今、木として生まれながら、人型の動ける体を手に入れた。
多分これ今限定なんだろうけどな!
でもそんなのどうでも良い。今動ける力があれば、その後どうなるかなんて些細な問題だ。そうだろ?
なんだか自分の足で立っている所為かも知れないが、視点が高く感じる。
昔馬に乗った時みたいだ。
「う、嘘⁉︎私は皆に魔力を上げたはずなのに……何で1人なの……?」
ごめんねロリっ娘。皆、俺に魔力をくれたよ。
寧ろ半強制的に奪ったまである。
「う、嘘でしょ⁉︎」
この可愛い金髪ロリエルフ、どうやら俺の声が聞こえるらしい。
大丈夫だ。俺が君を守るから。
優しい笑顔(の、つもり)で俺はそう念じて、ならず者達へと向き直った。
体の中心のあたりからどんどん力が湧いてくる。
不思議と負ける気がしない。
『・・・・・!・・・・・!』
ならず者達が何やらおかしな言語を口走りながら突っ込んできたので、俺は少し太くなった両腕へと変形した自分の枝をしならせて、ならず者の腹部をアッパーカットで思い切りぶっ叩いた。
ホームラン。
敵の持っていた剣がバキッと砕け、バチコーン‼︎みたいな音と共に1人が森の奥の方へとすっ飛んでいく。
もう1人の方は飛んでいった相方を呆然と見送った後、恐れ慄いたように俺を見上げる。
そして俺の無慈悲なアームハンマー。
ドゴッ‼︎
そいつは地面にめり込んでお寝んねした。
勝った。
勝ったぜ!
俺はロリを守りきったッ!
俺は手先の枝を器用に動かしてピースサインをした。
動けるって素晴らしい。
こいつら、大したことなかったな……。フッ。
ならず者は邪魔なので俺が動けるうちにポイだ。目を覚ました時に面倒だし、縛っておきたいなぁ。
ふぅ……疲れた。あ、そうだ!ロリは無事か⁉︎怪我とかしてない⁉︎
「おかげさまで無事です。ありがとうこざいました」
ロリエルフはジト目で俺にお礼を言った。
どうやら俺の発言は相当キモかったらしい。気持ちはわかるが。
いやぁ、礼を言われるようなことはしてないさ……。ハハハ……。
ロリを助けるのは紳士の義務だからね!
「私はロリではありません。エルフのサナです」
そっかぁ……サナって言うのか……。ふへへ……。
「身の危険を感じますっ!」
と、俺からザザッと少し離れるサナ。
ちょ、待って!俺は紳士だから!君が感じてるような危険には晒さないよ⁉︎
お兄さんはちょっと君と仲良くしたいだけなんだ!
「その言動が信用できません!今回のことは助かったので許しますが、気持ち悪いですよ!もうっ……早く木に戻って下さい」
サナはプンスカ怒りながら頬を膨らませる。
はぁい……ごめんなさい。確かにちょっとデリカシー無かったかな……。
見た目がドストライク過ぎだったからテンション上がってたんだよ……。
「木にそんなこと言われても嬉しくないですね」
サナは顔を赤くしながら言った。
怒ってるのかな……。
はいはい、ごめんねってば……。で、どうやって木に戻るの?
「あれ……,時間経過で戻るはずなんですが……」
あれ?何だか嫌な予感がするんだけど……?
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暇なので俺が木に戻るまでサナと当たり障りのない会話をした。
そういえばサナは何で襲われてたんだ?
「私はもともと奴隷でして……逃げ出してきたのです。さっきの男2人は奴隷商人です」
奴隷なんかもあるのか……。サナも大変だな。
ってか、異世界って絶対あるよな……そういうコチコチの身分制度。
まぁ、俺にはあんまり関係無いか。木だし。
ところで、何で俺の心読めるの?
「私たちエルフは森の精霊です。植物や動物と意思の疎通が可能なのです」
え、周りの木って喋れたの?もしかして俺ってハブられてたの?
「いえ、貴方は正確には木ではありませんから。あなたは木魔物です」
何だそれ。
「まぁ、見た目が木に似てる魔物の一種ですね。木魔物には種類があって、『自我が無くて動けない』、『自我が無くて動ける』、『自我があって動けない』、『自我があって動ける』、この4タイプの木魔物がいます。貴方は3つ目の自我があって動けないタイプですね」
俺はハブられてたんじゃなくて声が聞こえなかったのか……。
でも木魔物って木じゃないの?
「木魔物は植物でも動物でもありません。半植半動物です。植物と動物が会話できないように、木魔物と植物は会話出来ません。勿論動物と会話するのも不可能です。貴方は現在私としか会話が出来ないと思って下さい」
成る程な……。サナは物知りだな。小さいのに。
世界で俺と話せるのが君だけって運命を感じないかい?「お兄ちゃん♡」って呼んでくれても良いんだよ?
「どんなもんです。それと、小っちゃいは余計です。これでも気にしてるんですよ?あと、気持ち悪いです」
ロリが無い胸をえっへんと張る動作がたまらなく愛おしい。
自分の幼児体型を気にしてるロリもたまらなく可愛いよな。
死ぬまで、いや、枯れるまで眺めていたい。
「また邪なことを考えています!どうしてあなたは木なのにそんなに煩悩まみれなのですか!」
まぁ、色々ありましてなぁ……。
「ところでいつになったら木に戻るのです?」
俺に聞かれても困りますな。
戻るどころかどんどん力が溢れてくるんだけど。
「ふぇ?」
サナは驚いたようにそういうと顎に手を当てて俺の身体をジロジロ見た後、何やらブツブツと呟き始めた。
「まさか……。いや、でも……あり得る……」
どうかしたのか……?サナ。
「これは私の推測ですが、貴方は既に今までの貴方では無い可能性があります。私は大量の木を一時的に木魔物に変える魔法を使いました。その魔法の魔力をあなたが一身に取り込んだというのなら、その……非常に言いにくいことなのですが……。多分貴方は一生そのままです」
マジで?
「はい……多分。……本当に申し訳ないことを……」
やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
「ふぇ……?」
俺の叫びに困惑した様子のサナ。しかし、俺はそんなサナを無視して快哉を叫ぶ。
俺、一生このままなの⁉︎マジで⁉︎やったやった!嬉しい!
コレでロリと仲良く出来る!
「あ、あの……もう、元の生活には戻れないんですよ?それどころか完全に魔物ですよ?それでも……いいと言うのですか?」
え、良いけど。
「しかし、誰も好き好んで魔物には近づきませんよ?それでも……良いと言うのですか?」
それはヤダ。
「私は貴方を一人ぼっちにしてしまったのですよ?」
サナは罪悪感一杯な感じで俺にそう言ってくる。
じゃあ……サナが一緒に居てくれないかな?
「ふぇっ⁉︎」
サナは驚いたように俺を見上げた。
サナの身長は140cm程度だろう。対して俺の身長は動けるようになった時に根っこの分大きくなって2m以上ある。
サナは大きな瞳を見開いて俺の顔を見つめた。
あれ……。もしかして今の……プロポーズ⁉︎俺ってば勢い余ってプロポーズしちゃった⁉︎
いやぁ、照れくさいなぁ……。
返事を……聞いても良いかな?(イケボ)
「でも、そのような事で良いのですか……?私は貴方の人生を私の勝手な都合で変えてしまったのですよ?」
そんなの気にしてないさ!それに、俺は1人じゃ寂しいし。
サナは1人じゃ危なっかしいしね!俺、さっき戦って思ったけどさ、強くない?
「あ、あんなに魔力を皆から取ったら当たり前です!調子に乗らないで下さい!もうっ……仕方の無い木ですね……」
そう言ってサナは「ほうっ……」と息を吐いていった。
「仕方が無いから一緒に居てあげます。私としては不本意なんですからねっ!」
俺の顔にピッ!と指を指して言うサナ。非常にプリティ。
あれ?そう言えば結婚してくれるの?
「す、する訳無いじゃないですか!……な、なんでそんな事を軽々しく言えるんですか……?そ、そういう事は本当に好きになった人にしか言ってはいけないのですよっ!」
本当に好きになったんだけども。
「な、な、な……も、もう知りません!」
サナは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
あれ、怒らせちゃったのかな……。
ご、ごめんね?
「全く、本当に変態さんですね……。もう良いです。それじゃあ、しっかり私の事を守ってくださいね?」
それは任しといて!俺が枯れるまで命を懸けて君を守るさ!
「そ、そこまでして頂かなくても……」
サナは苦笑いで言った。
そして、俺たちは歩き出した。2人で。
「まずは貴方の衣服を買わねば……。フード付きが望ましいですね……。人型をしてますから正体を隠しやすいのは不幸中の幸いでした……」
俺、サナの着せ替えしたいな……。可愛い服着て欲しい。
「そんなお金ありませんよ!この変態樹木!」
ロリからの罵倒ktkr!ありがとうございます!
でも、出来れば「お兄ちゃん♡」って呼んで欲しいな。
「呼ぶわけ無いでしょう!……ところで、お名前を聞いていませんでしたね。聞いても良いですか?」
名前か……。名前……。あれ?忘れた……。何だっけ……思い出せない……。
んー、思い出せないから何でも良いや。
「じゃあ『変態さん』で」
ごめんなさいそれは勘弁してください。
じゃあ……イチイの木だし……『ユー』でどうかな?
ちなみにイチイは英語で『ユー』というのだ。
安直なネーミングだけど、カッコ良いよね。
「変態さんにしては良い名前ですね……。では、ユーさん、これからよろしくお願いします」
そう言ってサナはペコリと可愛く頭を下げた。
可愛い。これをおかずにご飯三杯はいける。
ちなみにオカズにはしない。紳士だからな。
真のロリコンは幼女を害さない!ただお手伝いをするのだ!色々とな!
「また邪な事を考えています……!天誅です!」
サナがジャンプして俺の脳天をベシッと叩く。意外と運動神経良いな。
痛い痛い。悪かったよ。
「罰として肩車して下さい。疲れました」
サナがぷうと頰を膨らませてそう言った。
そのセリフが耳に入った瞬間。俺の体は勝手に動いていた。
お安い御用です!いくらでも肩車しますとも!
「え……やっぱり良いです……」
サナがちょっと引いていたが、無視して肩車した。
「ふわぁぁっ⁉︎ちょ、やめて下さい!冗談ですよ!恥ずかしいですからぁ!」
可愛過ぎる。プリティ過ぎる。キュート過ぎる。エクセレント過ぎる。ドストライク過ぎる。パーフェクト過ぎる。
やはり俺はロリコンだ。うん、ロリコンだ。ロリコンで何が悪い。
サナを肩車して歩きながら俺はそう思うのだった。
「ちょ、穏やかな顔してそんなこと考えないで下さいよ!」
あ、俺の心の声、サナに聞こえるんだった。忘れてた。
静かな森の中に俺たちの楽しそうな笑い声、そしてたまにサナの罵倒や呆れ声が響くのだった。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
主人公の性格は私の脳内の変態紳士をそのまま書いてみました。
主人公がイチイなのには特に理由はありません。強いて言うなら名前がカッコ良かったからです。