玉手箱
うちには、開かずのプラモデルの箱が置いてある。
それは、 MGトールギス。MGというのはマスターグレードの略で、とても精巧に出来ていますという意味なんだ。 でっかい箱を開けるとうじゃうじゃパーツが入ってる。
トールギスというのは、まあなんかトサカのついた白いの。ガンダムの敵みたいな奴。
最近のプラモデルは良くできている。昔は、みみっちい関節のついていないものに、一生懸命色を塗ってはがっかりしていたものだ。
トールギスにしたって、絶対こんなイケメンじゃなかった。テレビアニメ版のは四角くて、冷蔵庫みたいな容姿だったのである。
そのギャップも手伝って、私の中でトールギスの再評価が行われた。清潔感のある白いボディに、中世の騎士のようないでたちがかっこいいじゃないか。
だが、買ったはいいものの箱から出さず放置している。パーツは細かいし、組み立て時間も結構長くなる。そうして来週、再来週と延びていくのだった。
第一パッケージの見本通りに絶対作れないのが嫌だ。さすがバンダイのMG。色分けは完璧だ。それでもなんか、ねえ……、不器用だからスミ入れが限界なのだ。
昔は、時間を忘れて作れたのに、なんかさみしい。トールギスには玉手箱になってもらうしかないのだろうか。せめて私の棺にいれてもらうか。
時代を経て、トールギスは美しくなった気がする。それは、トールギス以外の事にも当てはまるのではないだろうか。かといって昔の家電みたいなトールギスが美しくないのとは違う気がする。
でもズルいよ、トールギスばっかり洗練されてさ。どうせ何とかってデザイナーに描いてもらったんだろ。
私も京アニ辺りで作画してもらいたい。芋っぽくなってもいいから。
なんか全てが徒労に思えてきた。トールギス作ろうかな。やめようかな。やっぱり来週にしよう。サザエさん観たいし。