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#05_ダグザの村人と彼が開花した新たな才能


ダグザの村。


人口は僅か五十人足らずの小さな村でワボル以外の商人は一人だけ。

村の何でも屋である村長が薬師も兼任して、雑貨を扱う商屋と鋳掛屋いかけや以外は全て農家。

鋳掛屋とは金物を修理する人だそうだ。


村に到着したのは、出発して二時間くらいだった。

魔物用の丸太で出来た門の前に五十代くらいの男が門番をしていた。

アベルが商人ギルドカードを見せて門を開けてもらうが、その際に自分が魔獣使いと説明するのに時間がかかった。

あまり広くない村だからなのか、村の周囲を丸太で囲んでいる。


セドルさんはワボルと護衛の人のゲノムカードを持って、この村の村長に会いに行った。

その間にアベルが魔石の粉末を直線状にひく。


魔石とは、魔物の体内にある石の事で、人間だと心臓に当たる箇所だ。

魔物の体は魔力で出来ているが、その体を動かす力が魔石の魔力。

つまり、魔物を殺せば魔石が奪えて、魔石が無くなると魔力が魔素に戻って、魔素を魔晶石で回収する。

魔力を得る為には一石二鳥な存在が魔物である………利点以上に死人が出るのが問題だが。

魔力以外にも体の一部が残る事があり、これをドロップアイテムと呼ぶ。


「アベルさん。一体、何を?」

「これかい? 移動魔術の準備だよ。探索者や冒険者なら移動魔法の『ゲート』で一瞬なんだけどね」


移動魔術のゲートは距離圧縮をした通路を広げて移動時間の一時間を十分にする魔術なんだとか。

利点なのは魔法はパーティメンバーだけだが、魔術は荷馬車ごと移動できる。


移動魔法のゲートは目の前に真っ黒な門――板が出現する。

移動先にも真っ黒な板が出現して、移動自体は一瞬だが安定するまで時間がかかる。


「誰も彼も探索者や冒険者になれば危険な世の中になりそうですね」


素直な感想をしたつもりだが、アベルに苦笑されてしまった。


「確かに危険そうな魔法、魔術と思われるが、町以上の規模になると移動魔法を阻害する霊術結界があってね。

 これによって指定箇所以外にゲートで移動する事は出来ないんだ。

 村だって家の中に霊符を一枚張ってしまえば進入されることは無い。

 移動魔法を極めた人は『テレポート』のスキルを持つらしいけど………この数百年、所持した人の報告はないね」


アベルは移動魔法、魔術は魔力の負担が大きいので魔力の弱い者は魔石に頼らないといけない、と続けた。

経済的にも負担が大きいので馬車の需要もなくなったりしないのか。

何十、何百といった魔物と戦いたくない人もいるのだろうなと思った。


「若旦那。少々よろしいでしょうか…」

「ああ、構わないよ」


村長に会っていたセドルが小太りした男と二十代後半の女性を伴って戻ってきた。

女の人は涙が止まらないのかハンカチらしき布で何度も拭っている。

アベルが小太り男と喋っていたが、口論に発達してしまった。


「彼が所有するのは正当な権利だ。貴方達は情に訴えて利益を掠め取ろうとするつもりかい!!」

「め、滅相も御座いません。ですが、何卒お願い致します。ワボルの荷は村に必要なのです」

「夫が亡くなって、さらに幼い娘を手放すことなど、私には…」

「………はぁ。セドル、ちょっと待ってもらって」

「はい。若旦那」


ワボルの名前が出た上に、夫ときたか。

鑑定で二人の情報を表示させると小太り男がマルボー、商人だと判った。

女性はアネット、25歳…エルシアを見た後だと、失礼だが普通の女性としか思えない。

しかし、インターネットで洋モノも視聴していた身としては充分な色気はあると思う。

不埒な事を考えていたらアベルが戻ってきた。


「ヒデキ、ちょっと相談がある。言葉がわからなくて疑問が多いだろうが聞いてほしい」

「あーっと、はい、どうぞ」

「…その前に質問があるが、あの女性をどうみる? 誤魔化す必要はない。私にはわかる」

「………エルシア、エミリアを見た後だと普通の女性としか。しかし、充分、色気はあると思います」


さすがは商人だ…よく見ているな。

鼻の下が伸びていたのだろうか……おかしいな、姉は表情が変わらないわねっと言っていたのだが。

あれは前の肉体か。


「なるほど、なるほど。…彼らの言い分はこうだ」


マルボーは、ワボルの仕入品が村の中で必要だが、払った金額が回収できないと資金繰りが出来ないと嘆いている。

アネットは、護衛をしていた稼ぎ頭の夫が亡くなって、今年度の領民税を支払えない。夫の遺品を返して欲しい。

そしてアベルは、自分には両方の品を所持する権利があるから甘えるなと怒鳴っていたようだ。

働いて稼いだわけではないが、かといって情に絆されたと思われるのもな…。


「では、マルボーさんの方は経費を除いた利益分を支払えば、荷はお渡しします」

「なるほど、アネットに関しては私に任せたまえ。悪いようにはしない!」


アベルが踵を返して、二人の元へと向かう。

なにやら貧弱そうな紙にメモっているのはなんだろうか。

こちらの言葉を伝えてくれたのか二人が頭を下げて礼をしてきた。

マルボーは感謝しているようだが、アネットは一瞬、硬い表情をしたが意を決したような表情をする。

何を伝えたのだろうかアベルは。


しばらくして…全ての話が纏まったのか、セドルさんが移動魔術のゲートを発動させていた。


「では、三日後にまた会おうヒデキ。今度はフーリアの町だ」

「わかりました。町に着いた時はよろしくお願いします」


フーリアの町にゲートの出口は一箇所しか存在しない。

魔獣使いである自分は、まず町にある門の守衛にチェックを受けてからでないと駄目らしい。

馬車の時速が約8km…それが五時間だから、徒歩だと十時間………野宿を覚悟した方がいいのだろうか。


マルボーに安く荷を譲ったことで、村に泊めてくれる事となった。

泊まる先はワボルの家で、現在、マルボーとマルボーの奥さんが家の中を整理しているところだ。

夕食と朝食は村長が用意してくれるとのこと…ありがたいことです。

マルボーからは利益分の銀貨八十枚を受けとった。

アベルやセドルさんが居らず、会話はどうしようと思ったら、村長を始め、少数の人間が共通語を喋れるそうだ。


アネットについて、どうなったのかは未だに分からない。

明日には結果が分かるだろうとアベルが謎の言葉を残していった。

詳細を聞こうとしたが、アネットの姿が見当たらず、確認することが出来なかった。

夕食まで二時間ほど時間がある…どうしようか。


「ヒデキ殿、お時間がありましたら、少々お願いがございます」

「あ、はい。なんでしょうか村長さん」


な、なんだろう…厄介な事じゃなければよいのだが。


「セドル殿にお聞きしたところ、大変腕の立つお方だと…」

「はぁ…。いえ、それほどのことは…。それでお願いとは何でしょうか」

「ここ最近、村の周囲の魔物が活発に動いていると相談されまして…。

 村の周囲を見てもらうだけで構いません。

 村の若い衆を共に付けます…お受けしていただけませんか」


ここにいても暇だし、シルファン達も退屈しているから、それでもいい。

しかし村の様子からして魔獣を怖がっているのは一目瞭然だ。


「周囲を散歩する程度でよければ、お受けしますが、村の方は俺の従魔を恐れている様子。

 今回は同行をご遠慮願います」

「わかりました、村の西には沢があって魔物達も水辺を求めることもあります。

 勝手な頼みとは思いますが、お気を付けください」


村長に詳しい話を聞いてから別れて、村の門へと向かう。

村の周囲には幾つかの魔物がレベル1~3の状態で生息している。


大きな一本の角が生えた兎、ホーンラビット…角、兎の肉、兎の毛皮などが稀に残る。

小柄で犬の頭部に似た人型犬、コボルト…コボルトナイフ、コボルトの牙などが稀に残る。

全身緑色でナイフを持つ小鬼、ゴブリン…ゴブリンナイフ、ゴブリンの牙などが稀に残る。


魔物のレベルが低いから、メインジョブも低レベルなやつをセットしておこう。

メインジョブを剣術士、狩人、魔獣使いの順でセット。

シルファンは暗殺者を、ティアンは狩人を、エイミーは魔弓士を先頭に追加。

門の守衛に挨拶をして、村の外へとやってきた。


「南は街道へ続く道だし、西の沢は最後でいいか…となれば東の森から行こう」


道の周囲には村の畑だろうか、村民の殆どが畑を耕している。

…あ、農人ジョブを持っている人がいる…確か農作業を行えばいいんだよな。

村人に農具を借りて、十分ほど木で出来た鍬を振るってみる…うん、記録通りジョブが出た。

農具を返して、森の中へと向かう。


農人…固有スキル『土壌改善』

農業を営む者に発現するジョブ。

特定スキルは備わっていない。


この土壌改善スキルは魔力を込めながら土を掘れば、魔力の溜まりやすい作物が出来る。

逆に霊力を込めながら土を掘れば、霊力の溜まりやすい作物が出来る。


出来上がった作物を食べれば、魔力や霊力が回復するので重宝したものだ………千年前はだけど。

一級品ともなれば、レベルの上がる食物も出来るから競争が激しいんだよな。


森の中に入るとシルファンが元気よく駆け出して行った…やはり狩猟種族の本能が疼くのか。

獣道もないのでエイミーに先行してもらおう…ティアンは飛ぶ気もないのか肩当てに留まってる。


おっと、ゴブリンが二体飛び出してきた。

魔物としては、力は弱いが集団で行動しているので注意が必要だ。


「キィー!」


エイミーが左を、自分が右を担当する。

慌てず、剣で首を撥ねて対処する………そういえば、初めて魔物を倒した!


魔物は魔力の塊であって、普通は簡単に倒すことは出来ない。

天然の魔装で魔力を纏っていると思えばいいだろう。


普通は何度も武器を当てて表面の魔力を削らなくてはならない。

なので魔物より強力な魔力で表面の魔力を排除するか、霊力で排除すれば簡単に倒す事が可能なのだ。

ゴブリンの倒れた後に小指の爪ぐらいの石が残っている…魔石だ。


「レベル1ならこんなものか…」


ゴブリン、コボルト、ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン、コボルト、コボルト、ホーンラビット…あ、兎の肉と毛皮だ!。

ゴブリンとコボルトの魔物からとれるナイフはエイミーに食べてもらった。

鋳掛屋があるので持ち込めば、何かしらのモノを得ることが出来るかもしれないが、気にしないでおこう。


一定量を食べたところでシルファン達が咥えて使用する剣や手足に付ける手甲鉤を作成してもらう。

何らかのジョブを得るかもしれない。


東から北へ、北から西へ…変わらぬ魔物を狩り続けて早、一時間半。

そろそろ沢の方へ行ってから帰ろうかとした時、女性の悲鳴が聞こえた。


「この声…アネットか!?」


悲鳴を聞いて駆けつけてみれば、素っ裸のアネットがいた。

ええぇぇえ!? 何してるのこの人! いや、水浴びか!! 体を綺麗にするのはいい事だ!!!

裸とはいえ胸は手で隠れているし、下は水で濡れた布で隠れている………ちぇ。


彼女の周囲には興奮状態のゴブリン達がいる………発情期か、こいつら!

ゴブリンは発情期を迎えると、種族年齢関係なく雌を求めて行動するので、やっかいな魔物である。


急いで魔装を纏って、ソニックを放つ。

ゴブリン包囲網に穴を作って、背中でアネット庇いながら襲い掛かるゴブリンの相手をする。

突如現れた雄が狙った雌を取り戻そうとしていると思ったのか、ゴブリン達はかなり興奮していた。

だからといって、こちらも一人ではないので苦戦するような事はない。


「…終わり!」


十数匹いたが、問題もなく片がついた。

あまりじっと見ないようにアネットの様子を確認したが、怪我はなさそう。

その代わりに泥や魔物の体液がかかっていて、なかなかのエロスを…げふんげふん。

言葉は通じないが、一応声を掛けておく。


「大丈夫ですか、今、浄化を行うので動かないでください」


返事は期待しない、事実、なんて答えればいいのか分からないようだし。

霊術を施して、村を指差した後に木の陰に隠れるようにしてアネットの行動を待つ。

しばらく待っていると、服を着終わったアネットが礼をして小走りで戻っていった。

身内でもないのに裸を見られて、恥ずかしかったのかもしれない。

最初の印象では少し汚れた格好だったが、浄化で小奇麗な状態にまでなっていた。


村まで戻ると、村長が守衛と一緒に出迎えてくれた。


「おお…。ヒデキ殿、ご無事でしたか。アネットから話は聞いております。

 村の者を救っていただき、ありがとうございました」

「…いえ。悲鳴が聞こえたので駆けつけたまでの事です」

「さすがでございますな。家内が夕食の準備をしております。しばしワボルの家にてお待ちください」


村に戻ってみると、ワボルの家は一通りの片づけが済んでいた。

故人の品は村全体の維持の為に使われるらしく、寝具と物書きに使っていた大きな机が残っている。

木のベッドに多少の綿が入ったマット、シーツは洗ったようだが水洗いだろう。

毛布は多少の厚みが残っている……全て浄化をしておこう。


「よし、新品には劣るだろうが、マシになったな」


外に向かってパタパタとマットを叩くと、汚れやら埃やらが落ちていく。

一通り、済んだところで村長に呼ばれた。

夕食はパン粥と燻製肉に菜っ葉………地球だと十六世紀くらいの農家の食事が、このレベルだろうか。


ちなみに村長宅へは自分一人で、シルファン達には兎の肉を食べるようにと置いておいた。

夕食が終わった頃には日が落ちそうな時間になっていたので、ワボルの家に向かう。


盗賊の持っていた魔導ランタンを調べると底に蓋があって、外すと小さい魔晶石を更に小さく加工した石がとれた。

石に魔力を注いでいく………今日だけで魔力や霊力はかなり消耗してしまった。

戦闘以外は魔獣使いの固有スキル『リンク』を精神力回復量に選択している。

魔力量、霊力量に問題はないが頼りきるのは、よくないだろう。


薄暗くなった部屋を机に置いたランタンが照らす。


ようやく一人になる時間が出来た。

兼ねてから懸念だったアイテムボックスの整理でもしよう。


鉄のナイフ(魔装済み)…ワボルの所持品、衣服は村長に渡した。

ショートソード(ノーマル)×22(自分の討伐盗賊12+アベル護衛達の討伐盗賊12)

ショートソード(魔装済み)

ショートソード(霊装済み)

ショートボウ(ノーマル)

ショートボウ(魔装済み)

バトルアックス(ノーマル)…盗賊達のボスらしき人、ゼガンの持ち物。

魔導ランタン…盗賊の所持品。


次はアベルの護衛達のモノだ。

アベルの護衛は奴隷らしく、武器を用意したのはアベルだった。

ロングソード×5、鉄の軽鎧一式×5、鉄の盾×2


地球ではショートソードが普通の剣、ロングソードは軽量化の為に先端にいくほど細いものだったはず。

こちらではジョブの能力補助があるせいか、違いは刃が長いだけのようだ。


次はアネットの旦那さん所持品だ。

疾風のレイピア…風の魔力付与がされたレイピア、鋼のショートソード、短剣、鋼の軽鎧。


食料多数、水筒多数、盗賊の衣服はマルボーに売った。

マルボーの店から、平民が着る中では上位の旅人用服とフード付きの外套を購入…売却金と同額で支出はゼロ。

今日一日で随分と集まったものだ。


最後は過去の自分の荷物を…。

霊式太刀、霊式小太刀が二本、霊式短刀、霊式槍、霊式薙刀。

霊晶石×20。


…うん、しょうがないよね。

魔人族との戦争勃発時のボックス内容だものね。

効果は知っているが、霊晶石も鑑定してみようかな。


霊晶石…利用者の霊力を蓄積できる晶石。

蓄積した霊力は利用者、近しい者ならば取り出して使用、吸収が可能。


魔力は融通が利くが、霊力は扱いが難しい…大陸が魔力主義になった要因の一つでもある。

稀に自然の中で霊子が蓄積した状態ならば誰でも利用が可能なのだが。


霊式の武器は地球の鍛冶屋が失笑するやり方で作られていた。

不純物を取り除いた玉鋼に、わざわざ不純物を混ぜているのだから仕方がないだろう。


使用者により近付けるために、霊力を含めた大量の血を注ぎ込むのだ。

最後に取り出した野太刀は他の武器とは異質な気配を放つ。


霊刀『荒鷹』………過去の自分が、最後に魔人族の男を打ち倒した刀。


霊式の太刀を作る工程に、調伏した霊獣の霊石を核にする形で鍛造したのが、この霊刀。

霊石とは魔石の霊力版と思えばいい。


凶暴な鷹型の霊獣だった為か、今なお霊圧が弱まることはない。

鯉口から外して、すこしだけ刃を出してみる。

霊力が見えない人でも見えそうなほどの霊晄が部屋を満たす………刃を戻した。

今の自分では使いこなすのは無理そうだ。


アイテムのチェックが終わったのでボックスの中に全ての荷物を戻した時に、ドアがノックされる。

女性の声が聞こえてきた…この声は聞き覚えがある。

護身用に剣を用意して、ゆっくりとドアを開くと、真剣な面持ちのアネットがいた。


「…あの、アベルさんからこれを…」

「手紙?」


向こうも言葉が通じないと分かっていても、声がでてしまう。

アベルからの手紙を強引に手渡すと、周囲を気にしてから家に入ってきた。

とりあえず、手紙を読めというのか?………文字…読めないだが。

翻訳指輪があるから脳内で理解できるので問題はないが、読めなかったらどうしたらよかったのか。


『やぁ、ヒデキ、これを読んでいるということはアネットはこの契約を了承したんだね。

 さて、色々疑問に思うこともある事だろうが受け入れて欲しい。

 彼女が夫の遺品を欲しがる事情は自分自身や娘を売らない為なんだ。

 稼ぎ頭がいなくなって税金が払えないというのは、どこの国でもある理由だよ。

 武器商人じゃない私でも、あのレイピアが1万セシル以上で売れるのは分かる。

 彼女よりも若い女性が娼館で体を売っても、何日もかかる値段だ。

 そこで今夜一晩、キミが満足するまで体を提供すれば遺品を引き渡す契約を行った。

 抱かずに遺品を渡せば、契約不履行で彼女は盗賊に落とされるから気をつけて欲しい。

 では、よき夜を祈っているよ。追記…彼女は夫以外との関係はないので性病は気にしなくていいよ』


………よし、一度殴ろう。


いやいやいや、待って欲しい。

あの時の娘を手放すって、金がないから奴隷商人に娘を売るのか。

つまり、今のアネットはお金稼ぎに風俗に勤める未亡人っという事か。

あれ? なんか罪悪感がなくなってきたぞ。

どうせ、既に奴隷を購入した身だ…今更だな。


そこから先のことは記憶にあるが、記憶にないことにしたい。

目が覚めたら、裸のアネットと裸の自分が抱き合っていた。



ラウンド1

若さ故に暴走したヒデキを大人の余裕で受け止めるアネット。

これも幼き子供の為、亡き夫の遺品を得る為。


ラウンド2

多少の落ち着きを得たヒデキが相手の弱点を探るためにジャブを連打。

時折、アネットのポイントにヒット。


ラウンド3

ポイントを発見したヒデキはストレートでラッシュをかける。

夫が旅に出ている間に持て余した体で必死に我慢するアネット。


ラウンド4

短期間の実践は彼に新たな才能を目覚めさせた、フェイントを交ぜて果敢に挑む。

女と母と妻の顔が浮かんでは消えてを繰り返すアネット。


ラウンド5

ヒデキの攻撃は全てが彼女の弱点を突くようになった。

完全に女の顔以外がなくなったアネットは攻撃に転じる。


ラウンド6~8

試合は完全に泥仕合…僅かの差でアネットがベッドという名のリングに沈み、ヒデキも力尽きた。

翌朝、ヒデキいなくなったベッドで目が覚めたアネットの手には、金貨五枚が握られていた。

机の上には戦士28歳の疾風のレイピア、鋼のショートソード、短剣、鋼の軽鎧が置かれていた。


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