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プロローグ

死んでしまった。


どのような死に方をしたのか覚えていないが、自分の状況は理解できる。

まず足がない、体が透けている。

似たような人が天使?に連行されていく。

女神?の傍に連れて行かれると、体が消滅して球状の光が残った。


チンピラみたいな人で騒がしかったが、あっさりと消滅してしまった…あれは魂だろうか。

そんなのが列を作ってベルトコンベアのように細い道を流れていく。


次々に行われている作業を部屋の隅に体育座りしながら見ていた。

ぼーっとしても仕方がない、顔を伏せて思考を加速させる。


まずは自分の名前だ……鳴神英輝…年齢は二十歳…うん、自分には過ぎた名前だ。

ひいいでて輝くなんて、大層な名前をつけた親を恨んだこともあった。

だが、そうなる努力をしてこなかったのも自分だ。


死亡した原因はなんだったのだろうか。

高校卒業と同時に社会人だと張り切ったが、全てに不採用。

晴れてニートとなってしまった。


だから、せめて生活面では親に苦労をかけまいと、料理洗濯掃除と家事手伝いを頑張った。

それから二年…就職は出来なったが、親が旅行に出かけるくらい家の事を任されるようになった。

最も新しい記憶では旅行に出かけているはずだ。


あっ………思い出した。火事だ。

きちんと元栓を締めていたのに火事が起きたんだ。

自分は煙草を吸わない。

火の元となる原因は皆無………導き出される結論は。


放火だ。

なんということだ他人の財産を、ひいては人の命を欲求を満たすために奪うとは。


「許すまじ! 断じて許せるものではない!!」


英輝が心の中で思っていた言葉が口から漏れてしまう。

しかし反応したのは一人だけだった。

何百といた霊体は英輝を除いて存在していなかった。


「う~ん。死んでしまった事を悔やむのは判るけど、キミで最後なんだ」


女神が声をかけてきた。

どうしよう………この二年間、両親と姉以外との会話は久しぶりだ。

なにしろレジの店員とすら会話を避けてきたのに。


なにしろこの女神。

神々しい白銀の長い髪に、透き通るような肌。

出るところは出て、引っ込むところは引っ込む。

決して自分が知り合いになるような容姿ではない。


しかし無視をするわけにはいかないだろう。

あきらかに向こうは格上の存在。

せめて自分がこれからどうなるのか確かめたい。

意を決して顔を上げる。


「あ、あの…「うわっ!? 目付き悪ぅーー!!」」


辛辣な言葉と共に殴られた。

反射的に殴るのはどうなのだろうか。

しかも自分の霊体?は完全に粉砕されてしまった。


確かに物心ついた時から、目付きのせいで他人には怯えられた事もある…。

大量殺人犯、ヤクザ、鉄砲玉、目を隠せばイケメン、他多数。

いきなり殴られるとは思っても見なかった。

こんな目付きの人間だからって、話し合えば友になってくれた奴らもいるのだ。


しかし、自分が粉砕させるのを確認することが出来るのは驚いた。

今、この意識があるのは魂の小さな欠片で、空中をくるくると回転している。

こちらを粉砕した事に気付いたのか、女神が頭をかかえていた。


「ひゃぁ~、ど、どうしよう!? 私、存在を司っているけど、初期化と再設定しか出来ないのに!!」


女神が床に散らばった魂や霊体をかき集めていく。

神々しい人が這いつくばっているのはすごくシュールな光景だ。


「こんなことがバレたら、またサポート役の天使達からドジっ子セシルなどと陰口が…」


この欠片には気付いていないのか、集めた霊体を初期化されて魂だけになった自分。

だが先ほど女神が言っていた通り、魂はバラバラの状態になっている。


「セシル様ー。アルガイム行きの魂の数が一つ足りないのですが…」


室外から声がする。

女神を様扱いしている事から、おそらく先程の天使なのだろう。


「う、うん! わかってる!! 寿命を終えることが出来なかった魂は未発達な世界に送るもんね!!」

「はい。…あのセシル様。なにを焦ってらっしゃるのでしょうか?」

「あ、焦ってませんよ! ええ!! 断じて焦ってません!!」


予期せず、意外なところから回答が飛び込んできた。

なんということだ、自分で命を絶ってないのに異世界…。

しかも地球よりも発達していない世界に送られるとは。


「やはり元に戻らない。仕方がありません…私の血を繋ぎに使いましょう」


物騒なことのたまう女神はどこからか、ナイフを取り出した。

ナイフを指先に押し当てて、ほんの少し傷を付けようとしたその時。


「セシル様…まさか…「ひゃーー!!」」


天使が扉を開けようとして、女神がそれを押しとどめた。

その際に、ナイフが勢いよく引かれ、大量の血が自分の魂に降り注いだ。

血を浴びた魂はほのかに光を放ち、球状の形に姿を変える。

焦った女神は碌に確認もせずに、自分の魂をがっしりと掴んだ。


「どっせいー!」


女神、女の人がその掛け声をするのはいががなものでしょうか。

神の力で放り投げられた自分の魂は他の魂が通っていった細い道に吸い込まれる。

そして欠片である自分自身も魂に引っ張られて、十秒くらい後から吸い込まれてしまった。


い、嫌だーーー!! 誰もが異世界に行きたいわけじゃないのにーーー!!


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