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#10_初クエストとエミリアの修行

冒険者の固有スキル『フィールド・ポジショニング』で現在地を確認してみた。

このスキルを例えるなら、頭の中に黒い板が浮かび、自分の行動した範囲だけ色がある…そんな感じだ。現在、フーリアの町から自分達が居る地点まで北東一キロ…これで地図全域が分かればGPS要らずだよ。


「使えそうなスキルだが、現時点では微妙だ…」

「冒険者の固有スキルですか、旦那様。あのスキルはレベルが上がると範囲が広がります。

 熟練度が上がると、自分より弱い魔物の位置までわかると云われていますね。

 潜伏スキルと勝負するとレベルと熟練度と本人の素質で見破れたり、見破れなかったりします」


エミリアと話していると、ホーンラビットがこちらに向かって放り投げられた。

賞金稼ぎの固有スキル『万死一生』を発動させて、飛んできた角兎を空中で切り落とす…致命傷だ。致命傷の筈だが、角兎の体は魔素に戻っていない…それどころか痛みに悶えながら生きていた。これが万死一生スキル…いかなる致命傷でも必ずHPを1残して生き延びさせるのだ。


「エミリア…頑張れ!」

「はい!…い、行きます!!」


腰の入った槍の一撃がホーンラビットの命を奪う。

戦闘未経験のエミリアには、まず相手の命を奪う事への忌避感排除を最初の試練とした。

しかし戦ったことのない彼女が何故、腰の入った一撃ができたのか…自分が『力』を使ったからだ。女神の力を使って彼女に槍術スキルを条件付きで与えている。


「すごいです、旦那様。

 槍を持った事もなかったのに…どう動いたらいいか、手に取るように分かります」

「あまり無茶な動きはしないような。身体は元のままなんだから、反動が酷くなるぞ。

 あと線から出ないようにな。すぐに消える訳じゃないけど、秘術の効果が切れる」

「はい、注意しますね」


現在、25m四方で線が描かれている中にエミリアがいる。

その中にいると槍術スキルが得た状態になれると嘯いて女神の力を使った。

もちろん最後には外すが、インチキをしているようで気が進まない。


最初はジョブの説明文も読めるし、全員が簡単に手にしているから問題なくいけると思った。

しかし説明に添った形で行動しても、エミリアにジョブが発現することはなかった。

自分達が簡単にジョブを得たのは、既に肉体が備わっていて当たり前の状態だったからだ。


ならばセシル神から懲罰である喪失者はどんな意味があるのだろうか…ふと考えてみる。

あれは初期化されて恐ろしいのはジョブじゃなく、レベルと熟練度が消える事が恐ろしいんだと気付いた。時間と経費は神に頼んでも帰ってこないからなー。


……

………回想入ります。


早朝から朝食を用意してもらい、探索・冒険者ギルドへと向かう。

クエストの受付は早くからやっており、魔物討伐依頼を受理してもらった。

内容はゴブリン、コボルトの討伐依頼…ギルド指定もこなす為にフーリアの北にある森へと突入した。この討伐依頼は新人の為だったり、町の治安の為にギルド自身が依頼をしているので何度でも受けられる。


「エミリア、防具の調子はどうだ?」

「はい、ちゃんと身体に合った状態ですので一体感があります」


冒険者用の旅人服の上に皮の装備一式を身に纏ったエミリアは、手足を動かして状態を確かめていた。腰には鉄のナイフと余っていた魔晶石が入った巾着袋がぶら下がっている。本当に胸部が目立たないようになっている…その代わりに太って見えるのは黙っていよう。


今日もエイミーに先行してもらう。

草木を踏み均してくれるし、周囲の枝葉を吸収してくれるので服が引っ掛かる事もない。

行軍の順番はエイミー、自分、エミリア、シルファンの順だ。

ティアンには上空にて魔物探索、および捕獲を頼んでいる…ホーンラビットが空から降ってきた。


「…(投下だよ~)」

「エミリア、少し下がって」

「は、はい!」


腰にあるショートソードを構えて、ホーンラビットを迎え撃つ。

何とか姿勢を立て直そうとする角兎を空中で切って地面に叩きつけた。

叩きつけられた音にエミリアが驚いているが気にしない…視線の先には痙攣している角兎の姿があった。上空を見たが既にティアンの姿はない…次の獲物を探しに行ったのか。


「短槍をこっちに…」

「………は、はい。畏まりました」


エミリアから短槍を受けとって、左前半身の構えから振りかぶってホーンラビットを叩く。

角兎が消える前に喉元を突く…エミリアの悲鳴が聞こえたが、これも無視する。

こっちが気付いたとしても、気にするのは彼女自身だから仕方がない…あ、兎の肉だ、幸先がいいぞ。

魔石と肉を回収して…よし、思ったとおり新ジョブが発現した。


槍術士…固有スキル『チャージ』

槍技で戦いに挑んだ者に発現するジョブ。

槍術、棒術など戦闘スキル系、盾術など防御スキル系が備わっている。


「後は払うもあるが、これが槍の基本だな。他にも右前半身になったりとやり方は色々だ」

「………」

「怖いか、エミリア?」

「い、いい…いえ…はい、すみません。覚悟はしたつもりでしたが…でも諦めたくありません」

「…分かった。しばらく歩くと森の中に開けた箇所があるらしい…そこで魔物を迎え撃とう」

「…(二回目~)」


ティアンから念が送られてきた…捕獲が早いな。

今度の相手はゴブリンだが、既に肩が抉り取られている…暴れる余裕も無いようだ。

ホーンラビットと同じように切り捨てて、止めはエミリアに任せよう。


「…覚悟を試させてもらうぞ。…やってみろ」

「………は、はい!………やあぁ!!」


先程教えたように左前半身でゴブリンを叩いた…完全に腰が引けていたが叩けた。

既にゴブリンの身体は消滅して魔石が落ちている…あんな攻撃でも死ぬんだ。

賞金稼ぎジョブが発現していてよかったと思えた瞬間だ。


さて、エミリアはちゃんとジョブが…出てない。

おかしいな、自分の方は一回で出たのに…次が来たので試しにエイミーに槍を使ってもらおう。

…きちんとジョブが出たな、槍術士じゃなくて魔力が成長しやすい魔槍士だけど。


「エミリア…次は試しに剣で攻撃してみてくれ」

「はい、わかりました」


結果は全て失敗に終わった。

コボルトを剣で切っても、ホーンラビットを何度か突いても、ゴブリンを籠手で殴っても駄目だった。なぜか自分はアッシュキャタピラーを籠手で殴った時に闘士のジョブが発現した。鉛色芋虫からは綿わた…繊維の束がドロップアイテムとして出た。


闘士…固有スキル『チャクラ』

体術で戦いに挑んだ者に発現するジョブ。

体術など戦闘スキル系、気孔術など支援スキル系が備わっている。


何が違うのだろうか…レベルか?

しかし低レベルの時に暗殺者とか色々なジョブを得ることが出来るのだろうか…。


レベルではなければ………肉体か!

この身体は10年以上鍛えられた身体だ…エミリアと違い、ジョブが発現しやすいのかもしれない。ならば素人同然のエミリアを連れ回すのは問題があるだろう…しかし本人はやる気に満ちてるし…。


「…仕方がない、使うか」

「? 何をですか、旦那様」

「…秘術だ。これから起こす事は絶対に内緒だ」

「は、はい」

「エイミー! 棒を作成してくれ」

「…(はい、どうぞ)」


現在、森の開けた場所にあった大岩の傍で自分達は休憩していた。

自分の傍にはエミリアと護衛役のエイミーのみだ…他二名は獲物を求めて森を蹂躪している。

棒の先端に魔装を施して、一辺が25mの四角形を描く。

そして魔晄が見えない人でも見えるように調整して、一気に放出する。


「わぁぁぁぁ…」

「エミリア…ちょっと短槍を持って枠の中に入ってくれ」

「は、はい! 少々お待ちください!!」


休憩時に使用していた水筒を地面に置いて、エミリアが慌ててやってきた。

四角形の中に入ったと同時にエミリアのスキルに槍術スキルをセットする。


「旦那様、秘術とは一体…」

「うん、まずは自分のゲノムカードを見てみようか」

「はぁ………え? な、なんで?」

「枠の外へ出てみようか」

「は、はい。わかりました…」


エミリアが枠の外に出てから数秒待って槍術スキルを外す。


「………だ、旦那様は一体どのような秘術をお持ちなのですか!?」

「ふっ…絶対に他言無用だ。秘術とは陣の中にいる者にスキルを一時的に発現させる術だ」

「す、すごいです!

 スキルは神が私達にお与えになる祝福です…それを人の手で可能とするなんて!!」


ううぅ…グザグサと心に無邪気と云う名のナイフが刺さるよ。

実際には神の力だから、人の手で出来るかは分からないよ。


「と、ともかく。槍術スキルを発現させた状態で戦ってみてくれ………ティアン!」

「…(追加注文承りー)」


………回想終了します

……


「…どうだ、エミリア?」

「…すごいです。ジョブの発現は才能なき人では何年も掛かるのに…獣戦士と獣槍士のジョブがあります」


薬師や防具商人のジョブが発現していた事から、固有スキルを使用できる事が発現条件の一つと考えた。そして肉体が発現条件の一つであるならば…逆説でスキルを持っていればジョブが発現するのではと…。本当に成功するとは思ってなかったが。


「犬人族の獣戦士なら敏捷が上がりやすい戦士ジョブだな」

「はい。しかし戦闘系ジョブの事はあまり詳しく分かりません。申し訳ありません」

「気にするな。自分の人生に関係ない情報は身につきにくいもんだ。

 次の相手は獣戦士でいってみようか」

「ですが、新しいジョブのを利用する為には、ギルドにある神像へ願わなくてはなりません」


おっと、失念していたな…しかし、これについては対策が打ってある。

ダグザの村からフーリアの町に移動している時に彫った物が役に立つ時が来たか。

彫ってる時に『腰はもっと細いわよ』とか『顔はそんなに丸くないわよ』など幻聴があったが気にしない。アイテムボックスから、とある木彫り像を取り出す。


「じゃーん! 存在を司るセシル神の木彫り像だ!!」

「………え?」

「これを使えば、あら不思議! 冒険者が一番前にあったのに戦士ジョブが付いてます!!」

「ええええ!?」


自分の冒険者カードをエミリアに見せて像の能力を確かめさせる。

無論、この像にそんな能力は存在しない…しないが、ジョブの選択ミスでエミリアが危険な状態になるのは困る。かといって神像がないのにジョブが変わるのはおかしい…そんな矛盾を取り除くアイテムとしてこの像を彫った。


「エミリアも試してみていいよ」

「は、はい。はぅぅぅ…旦那様の傍にいると驚きの連続です」

「どうだ? ジョブは変化した?」

「………いえ。私では駄目なようです」

「そうか。持ち主である俺以外は願うだけでは駄目かもしないな。声に出して願ってみてくれ」

「わかりました。

 獣槍士、獣戦士をメイン、冒険者をサブジョブに………ほ、本当になっています!?」

「うむうむ。これからはクエスト中でもジョブの変更が楽になるな。

 この場での事は全て内緒だからな、エミリア」

「畏まりました、旦那様」


…物凄いヤラセをやっている気分だ。

しかし、これで女神の力を使っても不自然な結果と思われなくて済む。


「…(ぶにぶにの魔物です)」

「はいよ!」


シルファンが走りながら引き摺る鉛色芋虫を、すれ違い時に突撃+瀕死状態のダブルスキルで攻撃を加えた。


「これが戦士の固有スキル『ラッシュ』になる。

 体重の乗った突撃を喰らわせて、レベルが上がると一撃の威力が上がる。

 熟練度が上がると二、三と連撃が出せるが、最後が何連撃になるかは分からない」

「姉さんは九連撃を見たことがあると言ってました」

「ほう。…それは凄いな」


エミリアに剣を持たせてアッシュキャタピラを倒してもらう。

茂みから音が聞こえたと思ったら、ゴブリンが飛び出してきた。


「魔物が!?」


おそらくティアンが連れてきた奴を追ってきたのだろう。

エミリアを襲おうと走っていた足が鈍くなり、最後には止まってしまう。

ゴブリンが止まった位置にはエイミーが大盾を構えながらスキルを使用していた。


「…(そこまで)」

「あれが騎士の固有スキル『威圧』だな。

 相手の行動を抑える上に、スキル使用者以外を狙おうとする動きを阻害できる。

 そして、これが…」


動きが鈍くなったゴブリン相手にショートソードで斬撃+瀕死状態のダブルスキルで攻撃を加えた。


「剣術士の固有スキル『スラッシュ』になる。

 初期だと通常より鋭い斬撃だけど、戦士と同じでレベルが上がれば威力も上がる。

 そして熟練度が上がれば、ほぼ同時に同じ斬撃を繰り出すことが出来る…エミリア止めを」

「はい!」


ゴブリンが息絶えたのを見届けていると、魔物の気配を感じた。

先程のゴブリンが来た方角にもう一体の姿が見えたが、引き返そうとしていた。


遅れてやってきたのか…すぐさま弓術士、狩人のジョブをセットしてアイテムボックスから弓矢を取り出す。自分自身では特に狙いを定めない…その為の狩人ジョブだ。逃げようとしたゴブリンの肩を射抜いて木に縫いつけた。魔物の悲鳴と矢が木に当たった音に気付いたのか、エミリアがこちらにやってきた。


「旦那様、今のは…」

「素早く矢を射ることが出来たのが、弓術士の固有スキル『速射』だな。

 レベルが上がれば次射も素早く行えるし、熟練度が上がれば連射みたいな事も可能になる。

 俺が碌に狙いも付けなかったのは狩人の固有スキル『狙撃』があったからだ。

 レベルが上がれば遠くから狙えるし、熟練度が上がれば精度の高い狙撃が可能となる。

 エミリア、弓術スキルが付いているから射るんだ」

「…は、はい」


武器を使う事や魔物への攻撃にもだいぶ慣れたエミリアだが、技術の必要な弓に恐れが見える。


「心配するな、弓術スキルがあれば弓を射るだけなら問題ない。

 手は皮のグローブが守ってくれるし、胸部は皮の鎧がある。

 力の熟練度が低いうちは長弓は無理だが、短弓ならいけるだろう」

「はい! わかりました!!」


覚悟が決まったエミリアが弓を引き、矢を放つ…腹部へ命中してゴブリンが絶命した。

獣弓士が発現したが、狩人は発現しなかった。

気配を消して狙ったわけじゃないから仕方がない。

後は闘士と刀術士のジョブを得たら終了でいいだろう…他は色々他者とのやり取りが必要だ。

弓をアイテムボックスに入れて、鉄の籠手を二つ取り出した。


「あと二回で一旦休憩しよう…大丈夫か?」

「…はい。だ、大丈夫です」

「きつい時はちゃんと報告してくれ。一つのミスが命取りになることもある」

「わかりました」


初めての事ばかりで余計な力を使ってしまっている。

息が若干乱れてきたようだが、気力は尽きていないか…。


「エイミー、太刀を二本作成できるか?」

「…(問題ありません)」

「助かる」


籠手を装備してメインジョブに闘士を追加完了。

エミリアも付け終わったようだ…体術スキルをセットしておこう。


初めて使うスキルだ…うまくいくだろうか。

女神の力による説明文には生物自身が持つ力――気力を使用するらしい。

創造神が用意した魔力、霊力よりも弱い力だが試してみよう…『チャクラ』スキル発動。


「これは…」


全身を黄色…いや黄色より白いクリーム色に近いオーラが身体を包んでいる。

なるほど、なるほど…魔力や霊力を使用できなければ慌てていたな、これは。


「これが闘士のチャクラなのですか? なにも見えないのに威圧感があります」

「そうらしい。これを掌に集めると…どうだ?」

「あっ!? 何もなかったのに光の玉が!!」

「やってみた感じでは、魔力より扱いにくく、霊力より扱いやすい感じだ」


どうしよう…この玉を木にぶつけてみようか。

扱いに困っていたらちょうどいい的が来てくれた。


「…(お待たせー)」

「ティアン、お疲れ様。これで休憩しててくれ」


放り出されたホーンラビットに気力弾で攻撃してみた。

思った以上の速さで角兎にヒット、爆発する…球速は豪腕投手より速いかもしれない。

何度も地面を撥ねて木にぶつかった…気力弾に接触した表面の毛が焦げ付いている。


「気力を失うと体が重いな。レベルや熟練度が関係するかもしれないが気をつけた方がいい」

「だ、大丈夫ですか、旦那様」

「相手はまだ動けるようだ。ちょっと待っていてくれ」


ヨロヨロと動く角兎に目を向けつつ、エミリアを遠ざける。

相手は最後の攻撃とばかりに全力でこちらに跳ね寄ってきた…おそらく角だな。

一瞬、力のこもった踏み込みを見て、足を使って体当たりの軌道から体をずらす。


「はぁ!!」


跳んできたホーンラビットのがら空きの体にストレートを打ち込んで魔力の壁を破壊する。

そのまま角兎の体に拳を捻りこんだ…地面に落ちたホーンラビットは痙攣をして逃げ出すことも出来ない。


「よし、今度こそ瀕死状態だな。エミリア、止めを」

「はい。やぁ!! …やりました旦那様!」


ホーンラビットの体が魔素に戻って、魔石と毛皮と…。


「…角?」

「旦那様、レアドロップアイテムですよ!」

「…これが百匹倒して一回出ればいい方だと云われるアイテムか」

「はい。

 熟練度の高い鍛冶師の人に頼めば、敏捷上昇する魔力が宿ったラビットナイフができます」

「低い鍛治師だと、どうなるんだ?」

「普通のラビットナイフができます。刀身が長いのに軽いのが特徴です」


鍛冶師か…気軽に頼めるなら知り合いに欲しいが職人は気難しいって言うからなー。

実際、自分の霊式武具を作った人なんて…そりゃあもう…。


「鍛治師はどういった人がなるんだろう」

「鉱石に見識があって鍛造をやっている人に発現がしやすいと云われています。

 また精霊種のドワーフ族やドヴェルグ族は発現初期から熟練度が高いとも云われています」

「そうか………あっ。精霊種で思い出した…」

「なんでしょうか?」


アベルがエルフの犯罪奴隷をセリ落とそうとしているんだった。

どうしよう…あの時はエミリアが戦うとは思ってもみなかった。

後になっても分かることだし、言うだけは言っておこう。


「可能性はかなり低いが、アベルが奴隷のセリに行ってて…。

 もしも落とせて、金額が買える範囲で、問題のないエルフの娘なら…奴隷が増えるかもしれない」

「…そうですか。

 エルフの方なら、きっと美人で弓や魔法の強い人なのでしょうね…姉さんや私も安心できます。

 旦那様にとって、きっと掛け替えのない奴隷となるでしょう」


笑顔で淡々と答えているよ…若干怖いのですが。

足を踏みしめ、毛が若干逆立ってる…そして尻尾がピンと立っていた。

物凄く警戒してらっしゃる…頭を撫でておこう。


「何も確定してないからどうなるかな…。今の俺に大事なのはエミリアが頑張ってくれてる事だし」


逆立っていた毛が垂れて、若干尻尾が揺れている…おお! 一瞬で警戒が解けた!!

よし、鉄は熱い内に打てというし…引かれるかもしれないが言っておこう。


「もし落とせなかったら、今度はドワーフかドヴェルグ族でも頼んでみようかな」

「…それもよう御座いますね、旦那様。

 ところで旦那様の出身地でもあるヤマトの太刀はどのように使ったらよろしいのでしょうか?」

「…そうだな。そろそろシルファンがこちらに来ているし、始めるか」


笑顔が可愛いのに声が怖い…そしてあっさりと刀を鞘から抜いていた。

出会ったばかりだから新しい奴隷が来たら立場が悪くなると思っているのだろうか。


「まぁ…どんな娘が来ようがエミリアの待遇が悪くなることはないよ」

「………あ、ありがとうございます、旦那様」


森を抜けたシルファンが甘噛みしていたホーンラビットを放り投げた。

刀を抜いて上段から一気に振り抜く…角兎は先程までの三倍の勢いで地面に叩きつけられた。


「…っ…よし動けるようになった。

 刀術士の固有スキル『一刀必殺』は文字通りの必ず殺すってスキルじゃない。

 全身全霊の力を瞬間的に使用して、通常よりも威力のある攻撃が可能となる。

 その代わり、熟練度低いと最悪三十秒は身動きが取れないから注意が必要なスキルだ。

 エミリアGo」

「やぁ!…剣術とは腕の振りや足運びに違いがあるのですね。初めて知りました」


刀術スキルに導かれ、刀を振ったエミリアは不思議そうに自分の手足を見ている。

時間的に昼まで三時間か…エミリアを商館の裏口に送らないといけないし、ここまでだな。


「今日はここまでにしよう。明日からは獣槍士を中心に自分の上げたいジョブを選択すればいい」

「はい。…買って頂いたのが旦那様でなければ、私が戦闘ジョブを得る事などなかったかもしれません。

 ありがとう御座います、旦那様」

「礼を聞くのは早いと思うが…どう致しまして。

 ダンジョンに出かけたり、魔物を最初から相手しても大丈夫と思えたら言ってくれ」


その後は大岩の傍で休憩することにした。

魔物を連れてきてもらったシルファンとティアンの労いをエミリアに任せて、戦利品を整理する。

エイミーに手伝ってもらい分類をしていて気付いたことがあった…。


「ゴブリンナイフとコボルトナイフ…。

 この二つを錬金術師の固有スキル『調合練成』で何か出来ないものか…試してみよう」


駄目元でいいと思いながらスキルを発動すると、見慣れぬナイフが出来上がった。

鑑定には…ウォーリアナイフ。

ゴブリンウォーリア、コボルトウォーリアの使用する魔力を帯びたナイフ。

それ以外は特筆すべき点はない。


「エイミー…ウォーリアナイフとゴブリンナイフ二本。食べるならどっちがいい?」

「…(ウォーリアナイフですね。多少マシな程度ですが)」

「なるほど、量より質か。じゃあ、ウォーリアナイフ一本を進呈するよ」


その後もゴブリンナイフ二本を調合してみたが、同じウォーリアナイフが出来上がった。

コボルトナイフでも同じだ…魔物が上位になった時に規格統一でもされたのだろうか。


※午前の成果

ギルド指定、ゴブリン討伐、コボルト討伐クエスト…完了。


※午前の戦利品

ホーンラビットの角×1

ウォーリアナイフ×4→3

ゴブリンの牙、爪×3

ゴブリンナイフ ×1

コボルトの牙、爪×2

コボルトナイフ ×1

兎の肉 ×7→5

兎の毛皮×12

綿×5

魔石 計53個…サイズ不揃い多数


ジョブ詳細

ヒデキ・ナルカミ 所持金 106万6930セシル(金貨104枚、銀貨267枚、銅貨230枚)

・人間 Lv15

 戦士   Lv17、闘士  Lv 2、

 剣術士  Lv14、槍術士 Lv 2、刀術士  Lv2、弓術士 Lv14、

 探索者  Lv 1、冒険者 Lv 2、

 盗賊   Lv16、暗殺者 Lv14、賞金稼ぎ Lv2、

 狩人   Lv14、農人  Lv14、獣使い  Lv1、

 魔獣使い Lv17、英雄  Lv 5


シルファン

・銀狼 Lv15

 獣戦士 Lv17、獣闘士 Lv14、獣剣士 Lv14、

 探索者 Lv 1、冒険者 Lv 2、

 暗殺者 Lv14、狩人  Lv 2


ティアン

・天竜 Lv15

 竜戦士 Lv17、竜闘士 Lv14、竜剣士 Lv14、

 探索者 Lv 1、冒険者 Lv 2、狩人  Lv14


エイミー

・魔鎧 Lv15

 魔戦士 Lv14、魔騎士 Lv17、魔剣士 Lv14、魔槍士 Lv 2、魔弓士 Lv14、

 探索者 Lv 1、冒険者 Lv 2


エミリア

・犬人 Lv3

 獣戦士 Lv2、獣闘士 Lv1、

 獣剣士 Lv1、獣槍士 Lv2、獣刀士 Lv1、獣弓士 Lv1、

 探索者 Lv1、冒険者 Lv1


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