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#08_フーリアの町で冒険準備中 その2

探さ…長いので冒険者ギルドでいいか。

カード鑑定を行った人は、ギルドにある裏口を通って外へ出るのが通例となっていた。

揉め事が起こらないようにする措置だそうだ。


「これから市に行って身支度をする。…エミリア、出番だ」

「はい! 頑張ります!!」

「日用品にエミリアの冒険者用を二着、私服を二着、武器と防具を見に行く。俺の方は適当に買うから」

「はい! がん…え? わ、私の分も買っていただけるのですか!?」

「必要なものがあったら必ず言うように…買う、買わないは、その時に決めるから」

「わかりました」


まずはリュックサックを三つ買って、一つをエミリアが背負う…残りは重くなった際の交換用だ。

エイミーが持とうとしたが、やる気になっているエミリアが譲らなかった。

アイテムボックスからの出し入れに便利だし、無駄にはならないだろう。


次に木の桶を購入した。

魔術で作った水を溜めるために使う。


この世界の魔術に、コモン魔術と呼ぶ術が存在する。

魔力を変化させて、光で照らすだけ、火を灯すだけ、水を作るだけ、風を起こすだけ、土を作るだけ。

ただ現象のみを起こす魔術だ。

消費魔力も少なく、多くの種族が使っているらしい。

次の目的地に向かうまでの話のネタとして使おう。


「エミリアも使えるのか?」

「いえ、私は…犬人族は魔力を扱い辛い種族ですので」

「そうなのか………ああ、霊力側の種族か」

「はい、そうです。姉さん…狼人族は魔力側の種族になります」


この世界の最初に二柱の創造神がいて、色々協力して創っていた。

大地に、海に、生物に、人間を…しかし協力していたのはそこまでだった。


それぞれが人間をベースに色々な種族を創ってしまったのだ。

自分達が創った種族に一柱の創造神が魔力、一柱の創造神が霊力を与えた。


人間は二柱が協力して創ったので両方の力を手に入れている。

しかし他種族は人間をベースにしているが独自に弄られているため、主に一方しか有効活用出来ない。


「けど、使えないわけじゃない」

「はい。人間族である旦那様ほどではありませんが、犬人族でも使える者はいます」

「どうやればいいか、わかるか?」

「詠唱略式は『ウォーター』です。詠唱は…我が身に宿りし、魔の力よ、清らかな水の恵みを授けよ…です。

 …やはり、私には魔力が感じられません。申し訳ありません」


エミリアの魔力の流れは多少なりとも活発な様子を見せていた。

全く使えない訳じゃなさそうだ。


「いや、体内の魔力は反応していた。もともと霊力側なのだから気にするな」

「本当ですか!? 魔力が反応したのなら、逆に霊力なら私も旦那様のように霊術を…」


エミリアのおかげで、魔力の流れは見ることは出来た。

いきなり無詠唱は無理でも…。


「『ウォーター』。…何とか出来たな」


魔術で作られた水が桶の中に溜まっていく…水は人差し指の先から出ていた。

まぁ…体内の魔力が水となって出ている訳だから当たり前なのだが。

魔力の消費量と水の量が等価交換だから、大量に必要な時はきつくないか…?


「やはり魔力は便利ですね。霊術の浄化も便利ですが…魔力は羨ましいです」

「霊力は扱いにくいからな…神話では魔力殺しのために創られたものらしいし…」


等価交換か…なんか錬金術を思い出してしまう。

錬金術は科学だ! とか…科学か…確か、水分子はH2Oで…。


「だ、旦那様!? 水が溢れてしまいそうです!!」

「おわぁ!?」


桶を見れば並々と水が入っていた。

おかしいな、魔力はそんなに減ってないのだが。


「桶の水が勝手に増しているように見えました。でも魔術は使ってなかったのでは?」

「ああ。ちょっと別のアプローチで…」


エミリアは俺の指を見て首を傾げている。

考えられるとすれば…魔力で大気中の水分を集めたとしか思えん。

浄化をした後に、アイテムボックスから水筒を幾つか出してエミリアに水を移してもらう。

まさかメインジョブに………やはりあった!


錬金術師…固有スキル『調合錬成』

世界の真理を探求する者に発現するジョブ。

道具鑑定など鑑定スキルが備わっている。


世界の真理か…H2O程度でなんだそれはと言いたい。

しかし魔力で水素と酸素を化学反応をさせた…こっちの世界だと調合か。

調合を行ったから、水が増えたのか…初めて地球の知識が役に立った気がする。

こんなところで魔術を使えば、騒がれると思ったが…注目はシルファン達が引き受けていた。

これからは気をつけよう。


次に購入したのは歯ブラシと歯磨き粉。

オーク…豚の魔物の堅くて粗い毛を使用した歯ブラシが人気が出ているのだとか。

歯磨き粉は塩だった…調合錬成でフッ素、ビタミンCも混ぜれないだろうか。

それで使える品が出来るかは分からないが…。


「ん…房楊枝?」


江戸時代の人が使っていたのと同じような品を見つけた。

時代劇のドラマで見たことがある。


「こちらは、先程の歯ブラシが出回るまで使用されていた物です。

 安いので私はこちらで…」

「いや、気にしなくていい。性能が同じならともかく…歯ブラシの方が磨きやすいのだろ?」

「…はい。ありがとうございます、旦那様」


他にも手ぬぐいを数枚、下着に靴下もそれっぽいのがあった。

エミリアが恥ずかしそうに赤い布と脱脂綿らしき物を持ってきた事もあった…女性は大変だ。

石鹸はあるが高いらしい…しかし、別の物を発見した。

豚の餌として売られていた米ぬかだ。


水稲、陸稲があるのかもしれない…米が食べられるのだろうか。

石鹸も作れるらしいし…炭酸水素ナトリウム(重曹)の量に米ぬかを10倍。

水は米ぬかの30倍だったかな。


「あ、あのぅ…旦那様」

「え、なに?」


まだ見ぬ、米と石鹸を求めて懸想していると、エミリアがおずおずと声を掛けてきた。

思わず、素で返してしまった。


「普通、奴隷は最下位の品質の物を使用しています。

 旦那様がお使いになるような品は、奴隷に扱わせる事はありません」

「そうか。ではエミリアにヤマトの格言を教えよう」

「はい」


実際にあるかどうかは知らないが。


「よそはよそ、ウチはウチ!」

「…はい?」

「…いい思いをする分には気にするな」

「…ありがとうございます。旦那様」


首を傾げるエミリアに若干スベった気もした。

したが…表情に柔らかい雰囲気が出たから、よしとしよう。


シルファン達は退屈そうだ。

魔獣にとって日常とは日向ぼっこしているか、生存競争で戦っているかのどちらか。

こういった町中では興味を引くものがないのかもしれない。


次に防具屋に行ってみると防具の他に冒険者用の衣服も置いてある。

形状は一般の服と変わらないが、こちらは防御力のある服だった。

魔物の素材で作ると防御力が宿るらしい、そして値段もかなり違う。

先程の買い物でも全部で二百七十セシルだったし…なるほど、確かに違うな。


「エミリアは物知りだな」

「いえ、本で読んだ知識程度です」


ダグザの村で購入した外套と旅人用の服も冒険者用だとか。

平民といっても冒険者の平民か…あれ?値段が合わなくないか。


「エミリア…あの時の盗賊達の服も同じなのだろうか」

「そうですね。戦う人が着るものは大半は防御力付きです」


…足元を見られたかと思ったら、防具商人のジョブをおっちゃんに服を褒められた。

どうも、この服は六千セシルくらいするらしい…外套は三千セシル。

最低ランクの布の服は百、次の皮の服は三百…この店の最高は四千セシルか。

売値が半額以下として二十四着あったし…妥当なのだろうか。

いや、田舎の村にあった物だ…きっと秘蔵の品だったのだろう…売れ残りともいうが。


「エミリア…上下一式、三千台で二着を選んでいい。外套も一着、買っておけ」

「え。あ、あの、その…」


手に持っていた服を落としそうになったので、地面に落ちる前に慌てて拾う。

何を見ていたのかと思ったら布の服だった。

元の場所に戻して、エミリアを防具商人に案内させる。


「さて…自分のも選ぶか」


色々見てみたが、着ている服と同じようなデザインの上下一式、二千セシルにした。

エミリアはまだ決めかねている状態だ。


重量的な問題もあるし、まずは皮の装備の一式でいいか…全部で男は千、女は千二百セシル。

ふと、単品の皮の鎧を見てみると八百セシル…詐欺だ。


「旦那様、お待たせしました」

「いや、防具を見ていた…ん? それでいいのか?」

「はい。充分すぎるくらいです」


確かに女性用ではあるが、自分が選んだ旅人服と似たようなデザインだ。

二着と外套を含めて六千セシル…まぁ最初から注文をつける必要もないか。


「店主…皮の装備で女性用とは、どういった内容なのか?」

「はい、こちらは胸部などを目立たないようしております。

 その為に材料が男性用よりも増しておりますので、値段に差が生じております」


そうなのか…しかしエミリアの胸を誤魔化す為には…むぅ。


「お連れの奴隷の方にも合うように、防具商人の固有スキル『防具整形』を使用いたします。

 購入時であれば、スキル使用料は頂きません」

「スキル使用料?」

「旦那様、後ろをご覧ください。薬師がスキル代行をしています」


エミリアの言葉で後ろにある露天へ目を向けると…簡素な敷き布の上に人が一人。

木の板には『薬草から傷薬への丸薬調合お受けします』とあった。

冒険者が薬草を渡し、薬師が固有スキルを使用し、アベルが使ったような丸薬が出来上がる。

なるほど…あれが薬師スキルの魔力の流れか。


「本来は各ギルドが管理して移動魔法以外の代行商売は禁止されています。

 ですが、こうした市の中なら代行商売は許されていますので、ああした人達がいます。

 あの人は…まだスキル熟練度が低いですね…タダ同然で受けているようです。

 本来は一回、銀貨一枚が基本です」

「なるほど。しかし移動魔法はいいのか…」

「人の移動が活発になれば、町や村に金銭を落とすこともありますので」


そして過疎化するところは一気に過疎化すると。


前にスキルの初期段階は赤ん坊の歩行器と例えたことがあったが、スキルにも熟練度はある。

しかしジョブの能力補正と違って熟練度がゲノムカードで確認できないのだ。

つまり使ってみるまで威力の判断が出来ないのが、スキルだ。


皮の盾、百セシルを追加して防具商人に精算を頼む。

エミリアに確認をとってみたが適正価格だし物もよい状態だという。

シルファンの鼻にもこちらを騙すつもりもないらしい。


「これほどの購入をして頂いたのです。勉強させていただいて…

 一万三百から九千セシルに致しましょう。如何でしょうか?」

「…わかった。銀貨90枚です」

「ありがとうございます。サービスでお客様の衣服も調整させて致しますよ。

 それぞれ、ご自分の装備品をお持ちください」


防具商人の固有スキルが発動した…おお、本当に袖や裾が調整されてる。

アベルの奴隷商人は複雑だったので読み取れなかったが、こっちは出来た。

奴隷商人は人を扱う分、上級ジョブなのだろうか。

防具は新しいリックサックに入れて、アイテムボックスに放り込む。


次に武器屋に行って、最後に服を買おう。

武器屋はすぐ傍にあったので、移動時間はほとんどない。

闘士が使う籠手類、短剣類、剣類、短槍類、短弓類は多いが、大剣や長槍などの大物は無いか。

大市になったら持ってくるのか、もっと大都市にいかないと無いのかもしれない。


「いらっしゃい。手前の商品は手にとって確認しても構わないよ」

「エミリア、手にしていい武器は全部確認してみてくれ、ちょっと消耗品を見てみる」

「わかりました」


とはいえ、武器はエイミーに頼めば問題はない。

武器の形状を見れば大概は作成できるので、エミリアの武器だけでいいか。

頼もしい我が従魔はエミリアの隣で一緒に武器を眺めて…物欲しそうな雰囲気を出していた。

あれー、昨日は結構な数のナイフを食べてた筈だが…一応、食うなよと魔力で念を送っておこう。


「………(ふるふる)」


お腹は減っていないと念が帰ってきた…本当だろうか。

そういえば、ショートショードが35本もあるんだった…定価は二千セシルか。

鑑定をすると結果は普通の鉄の剣だ…魔物の材料は使ってないのか。


「武器の買取はしていますか?」

「…ああ、大丈夫だ。買取は随時行っているよ」


おや? 店主の様子が………何かあるのか。

アイテムボックスから剣を一本だけ出して店主に見せる。


「そいじゃ、武器鑑定するから暫しお待ちを。…武器に刻まれし時の歩みよ、辿りし道を我が前に示せ…」

「………」


やはり詠唱はアニメかゲームだけにして欲しいな…彼らにとってはこれが当たり前なのだが。

これが鑑定スキルにあった武器鑑定か…全鑑定が思念のみでよかった。


「ショートソード…材質は鉄だな。手入れもされてるし、千セシルで買取るぞ」


使用されていた武器が半額で買取か。

先程の態度といい、気になるのでカマをかけてみるか。


「…そういえば、武器の需要はどうですか?」

「えっ!? まぁ魔物は活発化しているし、売れてるね。不謹慎だけどありがたい話だよ」

「知ってます?…この辺りで歪魔の出げ「に、兄さん…ちょっとこっちに」…はいはい」


店主に店の奥へと誘われる。

武器の需要が増す事態…ダンジョンがこの近くに出来た、もしくは出来そうな出来事が起きている。

商人ギルド、もしくは商人達の中で情報のやり取りがあったのだろう。


「…困るよ~。なんで兄さんが歪魔の情報を知ってるの!?」

「まぁ…色々ありまして…」

「…ふぅ。まだ確定情報じゃないけど…ここらにダンジョンの生成を始めたってネタがある」

「やっぱり。それで武器の買取を…」

「手付かずのダンジョンは危険だが、一攫千金のチャンスだからな。予備の武器を求める奴が多いんだ」

「…これ、幾らで買います?」

「むぅ………1100、いや1150!」

「1500」

「いやいや、そいつぁ、増しすぎだろ!? わかった、1300! 口止め込みだぜ…」

「わかりました。ではショートソード三十本を一本1300でお願いします」

「ちょっ!? …わかったよ、兄さんには負けたぜ」


全部で三万九千セシル…素人の交渉にしては30%アップは上出来だろう。

武器商人の店主と交渉している間に、エミリアは手に合う武器を選び終わっていた。


「お待たせしました。旦那様」

「ああ…。どんな武器にしたんだ?」

「こちらです」

「………鉄製にしていいぞ」

「…はい」


エミリアの手には青銅の短槍があった。

遠慮して安い装備を買ったのか…鉄の方が軽いのに。

しかし、この世界では鉄鉱石より銅鉱石の埋蔵量が多いのだろうか。

はたまた、製造コストのみが価格に反映されているのか。

エミリアが鉄の短槍を持ってやってきた。


…あ! お金といえば、社会貢献しようと考えたばかりじゃないか。

剣を大量に売ったことだし、こちらの店で武器を購入させてもらおう。


「店主さん。これに皮革製の鞘を付けて欲しい。同じやつを全部で三点。

 あと腰につける鉄のナイフを二点、鉄の籠手を二点。全部で幾らになりますか」

「はいよ、毎度あり!

 鉄の短槍は鞘が込みで二千二百、籠手は千、ナイフは百だ。

 武器商人の固有スキル『武器研磨』も購入時はサービスだぜ…全部で九千セシルだな」


こっちは値引きはないか…仕方がない。

武器商人の固有スキルも見れたし、よしとしよう。

銀貨を90枚渡して武器を受けとる…そのままアイテムボックスに放り込んだ。


最後は私服選びだ…しかし買い物は疲れる、インターネット販売が懐かしい。

どうやらエミリアは青いワンピースがお気に召したらしく、生地の状態などを確認している。

防具も真剣に選んでいたが、また別の意味で真剣だな。


「俺は…シャツとズボンでいいや」


一応はエミリアを見習って生地や縫製の状態を確かめて二着選んだ。

ふと、気になって周りにいる人達の足元をみるとブーツやサンダルのような形状の履物が多い。


「旦那様、決めました! このワンピースの二色にしたいと思います!!」

「わかった。よく似合うと思うぞ」

「ありがとうございます」

「エミリア、足はサンダルでいいか?」

「…奴隷は素足が基本とお聞きして「じゃ、サンダルで」…はい」


なかなかマニュアルの抜けないお嬢さんだ。

ここの店主である商人を呼んで精算をしておこう。


「全部で幾らになる?」

「毎度ありがとうございます。全て合わせまして、二千セシルになります」

「わかった」


銀貨20枚を出して、本日の買い物は終了…いや、最後に薬草を三つ買って終了だ。

出費は全部で二万三百、収入は三万九千…18700セシルの収入を得た。

早く収入を得る手段を考えよう…まともに稼ぐのが馬鹿らしくなる前に。


市から離れて、フーリア亭の中庭に来ていた。

もう少ししたら、夕食の時間らしいので今日買った品に浄化をかけなくてはならない。

木製の机に今日買った衣服や装備品を並べてもらう…そして浄化を実行。

浄化しても服にある魔物の素材が消えることはない…いくら霊力が使いにくくても対象ぐらいは選べる。


「…エミリア。霊術の浄化の詠唱を知っているか?」

「はい。…穢れを祓い、魔を祓え、万物全ての悪しきモノを祓わん…ですね。

 うぅ…霊力側の種族なのに、旦那様の足元にも及びません」

「詠唱にあまり霊力が乗っていないな。それでは言霊として成立しない…と思う」


エミリアの言ったように、浄化の光は手の平で淡く光っているだけだ。

体の中にある霊力があまり活性していないようだ。


「そんなことまで分かるのですか? さすがは旦那様です」

「魔法と対する場合は、相手の魔力の流れを感じ取れないとな。

 …っと、残った記憶にはそうある。その応用だ」


危ない、危ない…自分は喪失者であって、過去の記憶は殆ど無いのだった。

魔力の件といい、先程の霊力の件といい…エミリアは力を望む傾向のようだ。

ダグザの村での発見が役に立ちそうだが、本人の意思も聞いておこう。


「…エミリア。魔力や霊力が強くなりたいか?」

「はい! 頑張って修練を積みたいと思います!!」

「…何のために?」

「私達の生活の基盤を支えているのは魔力です。

 しかし魔力は中毒症状が起きてしまいますので、浄化が出来る霊力も必要です。

 どちらの力も持たない者は軽視されますし、旦那様のお役にも立ちません。

 私は旦那様のご厚意に報いたいのです」


予想以上に真面目な話になってしまったが、エミリアの厚意は嬉しく思う。

しかし…この話の後に下品な内容になるのが辛いな…。


「そうか。…ならば俺も覚悟を決めて、ある儀式の話をしよう。

 あ、別に内密にしなくてもいいぞ。暴露すると恥ずかしい目にあってしまうがな」

「はぁ…。わかりました。そんな面妖な儀式があるのですか…初耳です」

「うむ。その儀式の名は…相手の魔力を操ることが出来る儀式を性魔術。

 そして霊力を操ることが出来る儀式を房中術と呼ぶ」


ゲームや漫画で得た知識だがな、っと心の中で呟いておく。

しかし実際にアネットとの行為中に出来たので、この世界では出来るのだろう。

女神の力を使って確認すれば、スキルがあるのか確認できるが…あまり使いたくない。

魔装、霊装のように技術として確立しているかもしれない。


「せい魔術…聖魔術ですか?」

「うむ、性魔術だ………性魔術の性は性行為の性だからな」

「そ、そそそそ、それは今夜、お、御情けを頂けるのでしゅか…はぅ!?」


言葉のニュアンスの違いを理解したのかエミリアの顔が…顔どころか首まで赤くなった。

慌てて喋った為に舌を噛んでしまったか。

そんなエミリアの様子に思わず、少しだけ頬が緩んだ気がした。

鏡があれば、そこに映るのはこの世界で初めて笑みを浮かべる自分の顔が見れただろう。


※ヒデキ・ナルカミの今回の新ジョブ

薬師…固有スキル『丸薬調合』

丸薬に携わる者に発現するジョブ。

道具鑑定など鑑定スキルが備わっている。


商人…固有スキル『瞬算』

売買から己の利を求める者に発現するジョブ。

道具鑑定など鑑定スキルが備わっている。


武器商人…固有スキル『武器研磨』

武器売買から己の利を求める者に発現するジョブ。

武器鑑定など鑑定スキルが備わっている。


防具商人…固有スキル『防具整形』

防具売買から己の利を求める者に発現するジョブ。

防具鑑定など鑑定スキルが備わっている。


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