#07_フーリアの町で冒険準備中 その1
フーリアの町。
人口 三千人に及ぶ王国内では中級都市にあたる交易都市となる。
地球の中世時代では、万単位に届けば大都市扱いだから、大きい町なのだろう。
門から入っていく場所と、『ゲート』の出口であろう場所に守衛が各二名ほど立っていた。
ダグザの村は丸太で魔物を防いでいたが、こちらは煉瓦だろうか、城壁と呼べるものがあった。
大都市でもないのに門から角まで1km程の距離がありそうだ。
魔法や能力補正があるから、その恩恵による建築物かもしれない。
マルボーの口利きで守衛と揉めずに済んだ。
首にかけている木板の仮許可証が魔獣を連れて歩ける証なんだとか。
許可証は魔獣が暴れた時に対処できる人にしか配布されない。
シルファン達と共にいるためには冒険者になるしかなさそうだ。
正面には大通りとなる道が広がっている。
今日は小市ということで道の端に露天がいくつも並んでいた。
大市は馬車を通す道もないのだとか。
「では、まずはアルベルト商館へと参りましょう。
道から南が王国の騎士駐屯地、居住区や商人ギルド、雑貨屋、宿屋を含めた比較的安全な地区です。
逆に北側は探索・冒険者ギルド、酒場や娼館などがあって、盗賊の根城と云われているスラムがあります。
奥に行けば行くほど治安が悪くなっておりますので注意してください。
商館は北側にあります」
アルベルト奴隷商館は大通りから一本奥の道を進んでいると、すぐに見つかった。
建物を覆う強大な塀は奴隷を逃がさない為なのか…はたまた…。
「レオン会長にご連絡を。犯罪奴隷を連れて参りました」
「わかった。暫し、そのままでお待ちを」
「あ…すみません。アベルとの約束をしている者なのですが…」
「…なんだキミは? 人と話す時くらいフードを………なるほど貴方がアベル様の仰っていた」
おい、なんだ。
アベルから目付きが悪いから気をつけろとでも言われたか!
「銀狼種に魔鎧種でも驚きなのに天竜種までいるとは、有能な魔獣使いなのですね」
いかんな、勘繰ってしまった…猛省せねば。
守衛の首には首輪がかけられている…この人も奴隷なのか。
商館から屈強な男が二名出てきて、荷馬車から犯罪奴隷の青年を担いで戻っていく。
「では、ヒデキ殿。私は市で村の用を済まさねばなりません」
「道中ありがとうございました。マルボーさんもお気をつけて」
「はい。村での事は幾度の感謝をしてもしきれません。こちらこそありがとうございました」
マルボーが馬車を走らせて大通りへと戻っていく。
準備が出来たのか、商館の中へ案内された。
どうやらシルファン達も商館に入っていいようだ…入口前にいたら客が入ってこれないのだろう。
長い廊下を歩いて、頑丈そうな扉を開けた先にはシックな応接間があった
あまり詳しくはないが、センスのいい人の部屋だ…髭の生えたダンディな中年男が部屋にいる。
「お初に御目にかかります。私の名はレオン・アルベルト。当商会の会長をしております」
「…こちらこそ、初めまして。あなたはアベルの…」
「はい。先日は当家の者達が大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます」
もう誰かに感謝の言葉を貰うのは辟易しているので、勘弁してください。
レオンさんによると、あの馬車旅は有能な人材確保の為に各地を巡行していた奴隷商人初仕事だそうな。
複数の女性と契約を結んだが、護衛分の損傷が大きくて今は商館の中で仕事をさせているとか。
アベルが来るまで世間話となった。
「はっはっは。約束の期日通りだな、ヒデキ!」
「この馬鹿息子が! お客様であり、お前の命の恩人にむかって、その口の利き方はなんだ!!」
「そう怒鳴らないでくれ、親父。私とヒデキの仲はとてもフランクなものなんだ」
あれ? 何時から、そんな仲になったのだろう。
「全く。私は仕事に戻らねばならない。王都への案件が発生したのでな」
「………あ。そのことでアベルに聞きたいことが」
レオンが扉を開けようとしたところで、思い出したことがあった。
「おや? なにかな…もしや新しい奴隷が欲しいとかかい?」
「…まぁ、そうなんだけど。王都の収容所にエルフがいるって聞いたんだけど」
「確かにいるよ。…しかし何故、エルフを求めてるんだい?」
急に真剣な表情をしたアベルに、違和感があるが質問には答えよう。
「禁猟区で狩りをしていたって聞いて。
魔法でも弓でも構わない、遠距離攻撃できる人がいた方がいいと思ったんだ」
「…なるほど。確かに彼女は弓を得意としていた。キミが望む人材としては有益な人物だろう」
「お、おい、アベル…お前まさか」
「大丈夫だよ、親父。ヒデキなら受け入れられるはずだよ。ちょうど王都に行く用事も出来たんだろ?」
なんだ? そんなに問題のある人物なのか?
「キミは運がいいな、ヒデキ! ちょうど、今日! 王都の夕刻にて犯罪奴隷のセリが行われるのだよ!!」
「え? …あ、いや。問題が多い人なのか?」
「問題ない! 背はエミリアより高いし、顔も胸も可愛らしい女性だよ。教育ならば我が商会に任せたまえ!!」
「高いんじゃ…」
「それも問題ない! 何しろ買い手がつこうとしては、商談が失敗に終わっているからね!!」
いや…それって、いい奴隷とは言わないんじゃ…いい主人じゃないと暗喩してるのか?
レオンさんが頭を抱えている…なるほど、これは前からなのか。
胸も可愛らしいってなんだ…ちっぱいとか、72を指しているのか。
「さっそくエミリアを連れてこよう! 今日は忙しくなるぞ!!」
「あ、その前に。エミリアだけど、エルシアの教育が終わるまででいい。こっちで勉強させて欲しいんだ」
「ほう…。それは構わないが、いいのかい?」
「ああ。午前中に聞きたいこと聞いて、午後はこっちで勉強をさせたい」
「ふむふむ。ただし夕刻には迎えに来て欲しい。宿を提供するのは主人の義務だからね」
「わかった…っといいたいが、この町にある宿って、何処がいいのだろうか」
思案顔になったアベルが指を三本立てて、説明してくれた。
「まず宿屋の傾向が三点、冒険者向け、商人向け、安全快適を望む人向けになる。
君達なら冒険者向けに出向けば、誰一人寄ってこないが、女性がいれば絡んでくるだろう。
商人向けは、金庫付きもあるが壁が薄い部屋が多いので、お勧めできないね。
最後は町を代表する宿屋で町名が宿屋の名前になっている所だよ。
夕食朝食の有無で料金も変わってくるし、その辺りの采配はキミが頑張ってくれたまえ」
エミリアの安全、ひいては自分の安全の為にも町名が付いている宿――フーリア亭に向かおう。
お金があるうちに冒険者の収入がどういったものなのか見極めないと。
レオンとアベルが部屋の外に出て行って落ちつかない。
ダグザの村であれだけヤったおかげか下の方は落ちついている。
思考がオヤジっぽい…お金で女性を抱いた事で思考まで年をとってしまったのだろうか。
流れ流されて、こんなとこまで来てしまったが、これからの生き方は自分で考えなくてはならない。
しかも二人の奴隷女性を連れての生活だ。
魔獣であるシルファン達もトラブルを引き寄せてしまう原因となるかもしれない。
だとしても、手放して楽な方への道は選ぶことは出来ない。
ドアがノックされて、首輪を身に着けた少女…エミリアが入ってくる。
シャツにスカート、木の板にベルトをつけたようなサンダル…簡素な村娘と思われる衣装だ。
多少の泊まり旅行に使えそうなバッグを両手で持っている…彼女の所持品が入っているのだろうか。
こちらを確認した後に礼をして、挨拶をしてきた。
「お久しぶりです、ご主人様。再び、お会いできた事を嬉しく思います」
「三日ぶり。…エ、エミリア」
ちょっと、ドモってしまった。
最初に会った時は彼女がドモってたが、立場が逆転したな…女性の方が覚悟が決まった時、強い。
少しばかり表情が硬いが、次第に慣れるだろう。
「…アベルから話は聞いている?」
「はい。私には勿体無い御話ですが、本当によろしいのでしょうか…」
「気にしなくてもいい。勉学が好きなのだろう?」
「は、はい! ありがとうございます!!」
表情が綻んで喜びを表現している…あ、尻尾が揺れている。
なるほど…犬人族…犬か…狼は獲物を見つけた場合のボディーランゲージに使うんだっけか。
エミリアは、はっ!?っとして表情を取り繕った。
「失礼しました。ご主人様」
「ん~。何か、ご主人様ってありきたりだな。他にどんな呼び方をするように言われたの?」
「え~と…旦那様とお呼びすることもあると」
「よし!………今日からはそれでいこう」
「は、はい」
なんだろう…特に偉いわけじゃないのに、偉くなった気がするよ。
「せっかくだから自己紹介をしておこうか…ヒデキ・ナルカミだ。
奴隷を持つのは初めてで色々と奴隷商人の話と違う事があるかもしれない。
そうした時は指摘して欲しい」
「はい、畏まりました。旦那様」
次に、お座りしているシルファン達を紹介するか。
「銀色の毛並みの狼が、銀狼種のシルファン。
西の地域にあるような黒い鎧が、魔鎧種のエイミー。
その肩にいる黄金の鱗を持っているのが、天竜種のティアンだ。
全員、気のいい奴等だから怖がらなくても大丈夫だよ」
「は、はい。エミリアです。こちらこそよろしくお願いします…ふぇ!?」
シルファン達が魔力で念を送って挨拶をしたのだろう。
突然のことにエミリアがビックリしてこちらを見ていた。
「実際に言葉は話さないが、思念で伝えてくれるんだ。こちらの言葉も理解しているよ」
「高位の魔物は言語を理解すると本にありましたが…本当なんですね。
そんな魔獣をお連れになるなんて、旦那様はすごいです」
うぅ…なにやら目が輝いているのだが、自分が魔獣を手懐けたわけじゃないのだ。
褒められるのは過去の自分なのだ。
「じゃ、行こうか…。荷物はアイテムボックスがあるから、こちらに」
「そんな、旦那様のお手を煩わせるわけには!」
「気にしなくていいよ。どうせ荷物の重量は感じないから」
「ありがとうございます」
エミリアから荷物を受けとってアイテムボックスに収容する。
「行こうか。今日は小市らしいから色々買い揃えたい」
「わかりました」
応接室から出ると、アベルが廊下で待っていた…声を掛ければいいのに。
アベルに案内されたのは商館の裏口だった。
毎回、入口から来てもらっても問題があるから、裏口から来て欲しいらしい。
裏口から歩いていくと路地に出て左に行けば大通りのようだ。
路地に出たところでエミリアから声を掛けられた。
「…旦那様。お願いが御座います」
「ん?」
突然の申し出に何事かと思ったが、話の続きを促した。
なんとエミリアは探索者、冒険者の仕事に連れて行って欲しいと懇願してきたのだ。
理由を聞いても魔石拾いでも、荷物持ちでもすると言って聞かない。
今まで生きてきて種族ジョブしかないエミリアが、わざわざ魔物との対峙を望む理由は…。
「…自分を買い戻すのに有利になるから?」
「ッ!?」
口に出た内容にエミリアは反応を示した…ビンゴか。
「まあ…奴隷から解放されたいのは分かるけど。いきなり言われるとは…」
「ち、違います! お姉ちゃんが…こほん。
姉さんが旦那様は『ダンジョンの最上部にすら行けそうね』と言っていて。
きっと力が付いたら無茶な事をするかもしれないんです」
「…ふむ」
いやいやいや…何やら凄い実力者みたいな扱いを受けているのですが。
鍛え上げたのは過去の自分であって、それを勝手に使っているだけなのですが。
「…それで、私も自分に付加価値が付くように頑張ろうって。
旦那様に飽きられて、商館に戻された場合でも酷い扱いにならいようにって…」
「ちょっと待て。買われた奴隷って飽きられた商館に戻るの?」
「は、はい。奴隷から解放されるのは滅多にないそうです」
やっぱり大変なんだな、この世界は…アネットに無理矢理にでも金貨を渡しといてよかった。
自分自身がどうなるかなんて判らないのが、この世の中だ…ならば…。
「飽きる、飽きないってのは、まだ分からない。最上部にいけるかどうかもだ…それでもいいんだな」
「…それは…つまり」
「魔物と戦う覚悟は出来ているのか?」
「はい! ありがとうございます、旦那様!!」
「よし。まずは宿を探すとしよう」
「畏まりました」
エミリアが多少は硬さがとれた笑顔をするようになった。
人間、希望がある生き方をしないと元気ではいられないし、これはこれでよかったのだろう。
そしてフーリア亭はすぐに見つかった。
大通りから、看板が見えたので簡単だった。
むしろ問題は入った後に出迎えてくれた女性の方だろう。
恰幅がよい女性の受付の人が、こちらを見ている…奴隷連れは問題があるのか?
それとも魔獣がまずいのだろうか。
「…宿を取りたいのだが」
「はいよ。小市のおかげで、シングル、ツインは満員だよ。ダブルでいいね」
「…はい。一応、料金を聞いても…」
「ウチは全室、同じ料金だよ。
一泊でシングルなら200、ツインは400、ダブルは380セシルになるね。
お連れさんの魔獣達は大丈夫なんだろうね」
エミリアではなく、シルファン達を問題視していたのか。
ならば答えは決まっている。
「問題ない。自分から問題を起こしはしないさ」
「了解したよ。…東棟のダブル部屋の横に使ってない空室があるから、そこを使いな」
「どうも、助かります」
「食堂が隣接してるからね、夕食と朝食は付けるかい? 魔獣用もあるよ?
人用が80、魔獣用が40セシルになるね」
「全員分、お願いします」
うわぁ…なにか凄い勢いで貨幣が無くなりそうな予感が。
「お客さん、魔力に余裕はあるかい?」
「ええ、何の問題もないですよ。あと十日間の宿泊は可能ですか?」
「はいよ、毎度あり。魔力代理はいらないから…そうさね、一泊 660を600セシルでいいよ」
「…銅貨は何枚まで出していいですか?」
「百枚までにしとくれ」
一泊毎の支払いで、銀貨五枚と銅貨百枚をカウンターに並べる。
銅貨は十枚毎に十個の束だから、分かりやすいだろう。
目算した女性は、小間使いの少年を呼んで、数えさせる。
「すぐに部屋に入るかい?」
「いや、市で用意したい物があるから」
「そうかい。部屋には一通りの物が揃っているから日用品は心配しなくていいよ。
ある程度は、こちらでも仕入れてるから、足りなければ相談にのるよ。
この木札を持っていきな。戻ってきた時に、鍵と交換するよ」
「わかりました」
女将らしき人なんだろうか…これから女将と呼ぼう。
宿屋を出て、次は冒険者ギルドか…忙しいな。
時間はまだ昼前か…昼飯にした方がいいな。
「エミリア…昼食にするか?」
「私もよろしいのですか?」
「ああ、気にするな」
「ありがとうございます」
市の中にあった露天で、ソーセージらしき太い腸詰が3つ付いた串焼きを二本購入する。
一本、10セシルで合計、20セシル。
この体が千年前のモノであったので、味は美味に感じた。
エミリアは一つで満腹らしく、残りの二つはシルファンとティアンに食べてもらった。
少食なのか、または商館の朝食でお腹一杯の食事をしたのかもしれない…売約契約おめでとーっとか。
探索・冒険者ギルドは奴隷商館とは一区画隣にあった。
どうやら酒場も併設しているようで、陽気な男達の声も聞こえてくる。
始めに自分が入ると探るような視線を向けて、エミリアには胸に一直線な視線を向けていた。
席を立って近寄ろうとした者も居たが、次に入ってきたモノを見て動きが止まる。
誰一人として近寄ってこようとしないな…アベルの言った通りか。
若い女性の受付が居たので前にある席に座る…他の席は空いていて職員がいない。
「ダンジョン探索や冒険クエストをするためには、ここで登録が必要と聞いたのですが」
「は、ははい、合っています。ようこそ、探索・冒険者ギルドへ!」
受付の人は精一杯の挨拶をしている…悪いことをしてしまった。
ギルド内の説明から入り、ゲノムカードのチェックに、ギルドカードの発行、三千セシルの支払い…色々。
メインジョブを見てみると探索者と冒険者ジョブを手に入れていた…ここにいる全員が。
試しに鑑定してみたらビックリだよ。
探索者…固有スキル『ダンジョン・オートマッピング』
ダンジョンに挑む者に発現するジョブ。
パーティ編成、空間魔法、移動魔法など支援スキル系が備わっている。
冒険者…固有スキル『フィールド・ポジショニング』
冒険者依頼に挑む者に発現するジョブ。
パーティ編成、空間魔法、移動魔法など支援スキル系が備わっている。
ギルドのメンバーランクはジョブ熟練度のS~Iを採用した10ランク…最初はIランクから。
各ランク毎に一ヶ月の内に一回はギルドが用意したクエストをクリアしなくてはならない。
Cランクからはクエスト免除され、クエスト内容は町の状況によって変わる。
Iランクはホーンラビット10体を退治と、出来ればドロップアイテムの補充。
兎の肉と毛皮を買取カウンターに持ってきて売って欲しいようだ。
期間は一ヶ月、他の依頼のついでにやっておけばいいらしい。
ギルド施設には受付、買取カウンター、酒場の他に、幾つかの施設があるようだ。
各種アイテム販売所、魔石・貨幣換金所、ジョブチェンジ用の六柱の神像。
奥には報奨金査定もあって、ゲノムカードの鑑定もしてくれる。
盗賊のカードを見てもらおうかな。
「こちらのカードを鑑定してもらいたいのだが…」
「はい、承りました。奥の別室にてお待ちください」
自分達が奥に行くにつれて、酒場から騒がしい声が聞こえてきた。
「な、なんだ、ありゃ!?」
「俺が知るかよ! 冗談じゃねぇぞ、あんな化物ども!!」
「魔獣使いの大型ルーキー誕生かねぇ。フードをつけてて顔がわからんが…」
「くぅぁー、あんなのが美少女奴隷を連れてていいのかよ…」
「胸がでかかったなぁ~。俺も欲しいぜ」
話がエミリアに移ったのか、容姿の話ばかりだ。
恥ずかしがって、エミリアが俯いてしまった。
「気にするな、エミリア」
「は、はい。お心遣いありがとうございます」
ポンポンと頭を撫でてみた…あ、髪型が乱れる、と嫌がられるのか?
多少の尻尾の揺れを確認できたので、大丈夫だと思おう。
別室には大きな机と木の椅子がある。
エミリアに椅子を譲ろうとしたら、拒否されてしまった。
主を立たせるわけには、いかないのだろう。
十分ほどで、受付とは別のギルド職員の人が盆にお金を載せてやってきた。
「お待たせしました。討伐された盗賊の数、40名、賞金首は5名おりました」
「そんなにいたのか、賞金首」
「わぁ…。さすが旦那様ですね!」
「こちらの賞金は騎士団がかけております。お手数ですが、駐屯地まで向かってください」
ブライアン、ゼガン、他三名のゲノムカードが返される…あ、報奨金支払済みの印がされてる。
報奨金の設定はレベルに依存するらしい。
レベル10以下が銀貨 一枚×28名。
レベル20以下が銀貨 十枚×7名。
レベル30以下が銀貨五十枚×3名。
レベル40以下が金貨 一枚×1名。
レベル50以下が金貨 十枚×1名。
それ以上は騎士団が討伐隊を組んで向かうレベルだそうな。
合計金額 13万4800セシル+賞金首5名。
エミリアが金額の多さか、賞金首の多さか、盗賊の討伐数の多さに驚きの声をあげる。
「この件は内緒な」
「畏まりました」
ふと、気になってメインジョブを確認してみる…やはりあった。
賞金稼ぎ…固有スキル『万死一生』
賞金首を討伐する者に発現するジョブ。
剣術、投擲術など戦闘スキル系、潜伏など隠密スキル系が備わっている。
しかし賞金稼ぎジョブの固有スキルが…。
「…『万死一生』って」
「え?」
「おや、ご存知ではありませんか?
賞金首は基本は生死不問ですが、生かして連れてくれば賞金額が上がります。
賞金稼ぎは文字通り、金を稼ぐのが目的ですから、うってつけのスキルですよ。
懸賞金をかけた者は恨みを晴らせますし、経験値にもなりますからね。はっはっは」
嫌~な、ジョブだな。
その後も魔石二十六個の換金をお願いしたら、260セシルが追加された。
さすがに銀貨や銅貨の数が多いので両替を頼んで替えてもらおう。
賞金首もあると二度手間とも思ったが、賞金首は金貨で渡されるのが常だそうな。
ジョブ詳細
ヒデキ・ナルカミ 所持金 106万7032セシル(金貨104枚、銀貨268枚、銅貨232枚)
・人間Lv15、戦士Lv17、剣術士Lv14、刀術士 Lv 1、弓術士Lv14、狩人 Lv14、探索者Lv1、冒険者Lv1、
盗賊Lv16、農人Lv14、暗殺者Lv14、賞金稼ぎLv 1、獣使いLv 1、魔獣使いLv17、英雄Lv5
シルファン
・銀狼Lv15、獣戦士Lv17、獣剣士Lv14、獣闘士Lv14、探索者Lv1、冒険者Lv1、暗殺者Lv14
ティアン
・天竜Lv15、竜戦士Lv17、竜剣士Lv14、竜闘士Lv14、狩人Lv14、探索者Lv1、冒険者Lv1
エイミー
・魔鎧Lv15、魔戦士Lv14、魔剣士Lv14、魔騎士Lv17、魔弓士Lv14、探索者Lv1、冒険者Lv1
エミリア
・犬人Lv3、探索者Lv1、冒険者Lv1