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魔女が詠う絶対終末  作者: 此渓和
第五部:マボロシの夢
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序章 虚空へ伸ばす手


 やっと、出会えた。

 ずっと、探していた。


「もう、やめませんか?」


 僕は、声を振り絞る。

 どれだけ打ちのめされようと、手を伸ばす。

 僕はずっと、この日を待ち望んでいたから。


「ねぇ、僕と一緒に行きませんか?」


 君の答えなんてわかりきっているけれど、諦めきれない。

 ごふりと、血を吐いた。

 あぁ、なんてこの体は脆いのか。

 君が僕の血を、冷たい目で眺める。


 ――やっぱり、駄目だったのか。

 僕が描いた夢の日々と、君が描く夢の日々は全然違う。

 少しも重なり合うことはない。

 僕と君は反対方向に向かって歩いていた。

 それでも……


「そんなことをしても無駄ですよ」


 僕は君の夢に泥を塗る。

 君の想いをわかっておきながら。


「君の願いはかないません」


 僕の夢を叶いたくて君の夢を穢す。


 あぁ、なんて。

 嫌な人間だろうか。


 こんなになってしまったから、君は僕のことをそんな目で見るのだろうか。


「一緒に……」


 言葉は紡げなかった。

 全身に走る痛み。

 空中へと跳ね飛ばされ、後は落下していく。

 星ひとつ見えない空が悲しくて、僕は滅多に流さない涙をこぼした。


 ごめんね。


 僕は、それでも君を諦めない。


 自分の夢をかなえるため。

 君の夢がかなわないことを、思い知るため。


×××


「在須!!」


 エンドが俺の部屋に飛び込んできて、慌てて跳ね起きた。

 深夜三時過ぎ、床に着いていたが寝つきが悪く、ぼんやりケータイを眺めていた時だった。


「お前……声、抑えろ」


 混乱しながらも、両親を起こさないよう俺は小声でエンドをいさめる。


「早く……早く、来てくれ」


 だが、エンドはいつもの冷静さを完全に失っていた。

 日課のような夜の散歩に行っていたのは知っていたが、一体そこで……


「お前……その血」


 暗闇に目が慣れてきて、エンドの服に付いた《赤》に気づくと、さーっと頭から血の気が引いた。

 鈴璃の姿の彼女に、血が……。

 それだけで、俺にとってはあの思い出を想起させるのに十分だった。

 

「私じゃない」


 そう言われて、はっと我に返る。

 確かに、エンドがけがをしている様子は何もない。

 

「誰のだ?」


 やっと俺も事態の異様さに気づき、頭を働かせる。

 エンドも少しは頭が冷えてきたのか、落ち着いた様子で言った。


「在須……。唯生(いお)が、襲われた」

「……えっ!?」


 唯生。

 中学生くらいの、無口な少年。

 否理師だけが住む島に、一人・一般人として混じり込みながら、あの《道化》の助手をしている。

 それくらいの印象しか、俺の中にはない存在だった。


 そんな彼が、ここ《紙邱》で襲われた。

 エンドのベットに横たわる血まみれの少年は、虫の息の状態でふらふらと虚空へ手を伸ばしていた。


 あの文化祭の事件と、この出来事が交わっているとは、俺はまだ知らなかった。

 

 


 第五部スタートです。


 お気に入りの唯生君の登場です。

 がんばります。


 今回は、また挑戦みたいな感じでちょっと他の部とは違う感じになるかもです。

 どう変わるのかは未定ですが、少しでも技術を上げていきたいです。


 最近、亀の歩みですが(汗)、付き合っていただければ幸いです。


 これからよろしくお願いします。

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