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魔女が詠う絶対終末  作者: 此渓和
第三部:ゼンイの魔女
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一章 サシダス手と躊躇いのユラギ1

 受信箱を開くと、びっしりと同じ人物の名前が並んでいた。


『パパ』

 

 その一語だけで、私とその人物の関係性を全ての人が読み取れるだろう。

 新しく来ていたメールを開くと、文字がぎっしりと限界まで打ち込まれていた。しかも幼い子に読めるようにと、ひらがなが異常に多い。

 私の体の年齢である五年生にも読める。そういうものまでひらがなにされているので、正直非常に読みづらい。だが、私は丁寧に指でなぞるようなことまでして読み取っていく。

 これは私の義務だ。この体と立場を奪ってしまった私が当然しなければいけない役割だ。

 彼に望まれていることでもあるから。

 非常に長いメッセージを要約するとこうだ。


『鈴璃、元気にしているかい? パパは鈴璃とはなれていてさびしいけど、毎日おしごとがんばっています。新しい学校が始まるのもあと一週間だね。かわいい鈴璃はすぐにみんなの人気者になれるだろうね。不安になるひつようはぜんぜんないよ。またメールください』

 

 他にも自分の近況報告や、新しい学校での男子への対処法とかいろいろあったけどそこは割愛。

 返事をどうしたものかと、考えを巡らせる。

 ある程度文面が決まると、すぐさま打ち込み始める。この父親にとって質より量だ。多少文章が少ないだけですぐに心配して、電話へ向かってしまう。

 

 仕方ないけどな。

 

 異常ともいえるほどの、強すぎる愛情。

 この父親と過ごした五年間、あの人は私を溺愛し続けた。

 私だったから良かったものの、自我が確定する幼少期にあれほどまでにされたらどの子でも歪んでしまうのではないかというレベルだった。

 それほど、亡き妻の分もと愛情を注いでしまうほど、この娘がかわいいのだ。

 罪悪感がこみ上げる。

 娘が偽物になり変われているなんて、想像もしていないだろう。まず彼のような特殊な人間でない限りありえないのだから。

 騙している。誤魔化している。嘘ついている。

 本当は娘は死んでいる。その真実を地に埋め、代わりに私が地から這い出てきた。

 せめて、代わりにはならないと。

 この娘の父親の笑顔を曇らさないために。

 精一杯、演技を貫こう。


『パパ、鈴璃はとっても元気だよ。毎日、とっても楽しい。新しい学校に行くの、すごくわくわくして楽しみ。あのね、ニワトリさんを飼っているんだって。前に話したうたげお姉ちゃんが、その小学校だった人に聞いて教えてくれたんだ。お家もいつも楽しいよ。おばさんもおじさんも優しいし、こくとお兄ちゃんがたまに来て作ってくれるチャーハンすっごくおいしい。ありすお兄ちゃんは』

 

 そこで、手が止まった。

 続きを打とうとして、躊躇う。彼を思い出して頭を俯かせる。

 今、私は彼にどう接すればいいのかわからなくなっている。

 あの出来事で彼と私の間には深く大きな溝ができてしまったのを感じる。

 彼が負った傷に……何もできないでいる。

 毎晩、うなされているのを私は知っている。突然飛び起きて、トイレに駆け込んでいる辛そうな姿も何度も見ている。

 

 どうすればいいんだ?

 

 自分の胸をぎゅっと押さえる。

 私のものであって、私のものではないこの体。

 あの時、この体を選んだことに後悔はなかった。

 血に濡れた横断歩道。

 ただ震え泣いている少年。

 彼の涙が止まるならと思ったのだ。

 たくさんの人の命を奪おうとしているのに、あとわずかな時しか残されていないのに、いや、だからこそ――――彼に笑ってほしかったのだ。

 なのに、彼を救ったつもりがその心を傷つけていた。

 申し訳なさに無理やり遠ざけようとすると、彼はむしろ意地になってこちらに歩みこんできて――とうとうこの世界にまで踏み込ませてしまった。

 

 彼の決意は嬉しかった。

 泣きたくなるほどに、すがりつきたくなるほどに。

 

 でも、もう終わりなんだ。

 

 これは、変わりようがなく。彼の行為は全て無意味だ。

 それなのに自身を傷つけ、私を守ろうとし、事実私は何度も救われてしまった。彼がいなければ、私はあの時もこの時も窮地を逃れることはできなかった。

 これは違うのだ。間違っている。

 私が《魔女》になったのは、人々の幸せにするため。みんなの笑顔を見るため。

《絶対終末》の遂行だって、その目的に基づいて行うつもりだ。

 なのに、私は彼を不幸にしている。

 これはおかしいのだ。どうして、私は《否理師》になり普通を捨てたのか、《魔女》になり人であることをを捨てたのか、それが全て意味を失ってしまう。

 彼をこれ以上巻きこむわけにいかない。

 彼に普通の幸せを得てほしい。《終末》を防ぐ何てこと、どうせ無駄なのだから。

 でも、どうすればいいのか……。

 深い、深いため息を吐く。再度パソコンに文字を打ち込んでいく。


『ありすお兄ちゃんは、今度学校で文化祭があるんだって。鈴璃、そこに連れて行ってもらうの。ものすっごく、楽しみだなぁ』


三部はエンド視点で行きます!!


もう一人の主人公的なはずだったのに、最近の空気化のため……というのは後付けで、もともとこのつもりでしたw


このようなエンド視点の部は、これからちょこちょこあると思われます。


今までと、少し違う雰囲気になればいいなと、頑張ります!!

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