表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女が詠う絶対終末  作者: 此渓和
第二部:凍りつくカクゴ
37/134

三章 セカイと時間のテイタイ4

 深夜、人も虫も風も、何もかもが、不自然なほど静かに眠りについていた。

 魔女と神はその空間の中、静かに怪しく夜会を始める。


(あなた)でしょ? この街を作ったのは」


「そうだよ。(わたし)が作ったよお」

 

 魔女の尋問のごとき厳しい声に、神は笑って応えた。


()(がき)……だったかな? 当時無名だったその設計士のところに行って、いろいろ教えてあげたんだ。おかげで、こんな素敵な街を築くことができた」


「神が設計した箱庭の内部が美しくないはずがない。そこに満ちるエネルギーも他の地とは比べ物にならないだろう。デュケノアはそれに気づいて……」


「だよね。(わたし)のせいだとかは、さすがに気付いてないだろうけど。やっかいなことになっちゃたな~。まぁ、でも頑張って」

 

 ひらひらと手を振る神に、魔女はため息を吐くしかない。


「……彼が落ち込んでいたよ」


「ん? どうして」

 

 神は人の心に鈍感だ。魔女は呆れた目で神に言う。


「君に助けられたってね。私に今日のことを報告するとき、表には出さないよう努力していたが、悔しいと思っていることはばればれだった」


「気にすることないのに。ん~、やっぱり、いいな。好きだよ、そういうところ。大好き」

 

 嬉しそうに微笑む神は、愛の言葉を繰り返す。


「彼を助けないのか?」

 

 魔女の問いに、神は微妙な表情をする。


「助けても……いいけど、ちょっとまだかな。深漸くんにはまだ向き合ってもらいたいことがあるから」


「これ以上、彼に何を望む?」


 魔女は憂いていた。

 彼はどこにでもいる高校生だ。

 ただ他人とは違う非凡な才能を持っていたがために、魔女を通して理を知り、滅びを見てしまった。

 魔女は彼を哀れに思う。

 絶望しきったその心では、彼の心意気はあまりにも眩く、また痛々しかったから。


「彼は強いよ」

 

 神は言い放つ。魔女の心を見抜いて。


「彼はどんどん強くなる。だって、私が選んだ人なんだもん。だから――彼なら出来る。私は彼を愛してるから、それを知ってる」

 

 神は自信に満ち溢れた声で告げる。


「そう……かもね。(あなた)が言うならば」


「あれ? 何か投げやりだね。あまり信じてくれてない?」


 首を傾げる神の言葉に、魔女は何も返さなかった。

 そのまま背を向け、高く高く跳ぶ――

 箒を持たない魔女は、夜の闇を自分の足で駆ける。


「……あまり巻きこみたくない」


 魔女は誰にも届かない声で呟く。


「彼にも、笑っていてほしいから」

 

 それは、元《善意の魔女》の偽らざる本心だった。


                ×××


 デュケノアから逃げだした次の日の朝。

 

 学校は停滞してしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ